外伝24話 浅井『恐怖』政貞
ここは凄くいい。
衣食住に困らない。
それどころか報酬もでる。
労役と戦で肉体と命を賭ければ、この乱世で不自由無く生きられる。
ここは正に極楽だ―――
【2章 天文15年(1546年)】
吉法師(信長の幼名)の大将が俺達の様な穀潰しを集めて、親衛隊を作り上げた。
「活躍する機会に恵まれず、食うに困り、女も抱けず、感謝もされず、疎まれ、蔑まれ……運良く機会に恵まれねば日の目を見る事もない穀潰し共よ! その運を与えてやろう! ワシが機会を作る!」
眩しい餓鬼だった。
実力者である弾正忠家(織田信秀の家系)とは言え、次男の餓鬼が何とも魂に訴えかける言葉を吐きやがる。
活躍の場がなければ自ら動きゃいいってそりゃそうだ。
理屈は簡単だが、出来ないのが常識で困っていたのに、アッサリと道を示しやがった。
さすがは実力者の息子で指揮は申し分なく、盗賊野盗なんて楽勝で撃破できる。
まだ秘密の部隊らしくて他人に自慢は出来なかったが、かつて味わった事のない快感だった。
役に立てる事の実感は、今までの家での扱いを思えば天と地の差だ。
俺は今、猛烈にお釈迦様に感謝している!
しばらくは吉法師の大将率いるうつけ集団として世を忍びつつ活動していたが、大将が元服し織田三郎信長と名乗る事になった。
しかし何だ? 様子が変だ。
元服と引き換えに狂ったか? ただでさえうつけなのに。
急に動きがぎこちなくなり、この前自分で話していた事を忘れていたり、不安になる言動があったが、嫁を連れて来た頃にはいつもの大将に戻ったので良しとしよう……と思ってたら、何か急に強くなってやがる!
弱いよりは断然マシだけど、何が起こってんだ?
そうそう! 何が起こっていると言えば、嫁の濃姫様だ!
訓練でバカみたいに強い、クソ女が暴れていると聞いて、手合わせしたら一瞬で倒された。
何だあの……あの……寒気と吐き気を催す雰囲気は!
あれが殺気って奴なのか!?
化け物だ!
あれが三郎大将の嫁らしい。
大将も可哀想に……。
ありゃあ将来カカァ天下になるぞ。
まぁ……明日をも知れないこの時代と穀潰しだった身分を思えば、今の立場は最高だ!
尾張に産まれて本当に幸運だぜ!
お釈迦様ありがとう!
【3章 天文16年(1547年)】
何があったのか知らんが、斯波様が弾正忠様(信秀)を誅する為に立ち上がったらしい。
正気か?
この尾張で真に力を持つのは弾正忠家なのに、逆らってどうするってんだ? 勝ち目なんか無ぇだろう? 農民だってそんな事は理解しているってのに。
今回の俺たちは濃姫様に従って待機らしい。
んでもって三郎大将は農兵を率いて犬山城に行ったが、農兵なんか率いて大丈夫なのかねぇ?
ま、あの大将なら心配ねぇか!
「全軍聞きなさい! 我等は末森城の大殿をお助けする。全軍進め!」
ん? 三郎の大将を助けるんじゃなくて大殿を助けるのか?
どんな判断か判らねぇけど、濃姫様の判断なら間違いねぇか。
ともかくやっと出番だ!
誰が尾張の主役であるか思い知らせてやるぜ!
末森城の包囲を突破した後は籠城戦となったが、不思議と悲壮感は無かった。
親衛隊としても初めての、野盗相手ではない本格的戦であるのに、その初実戦に創設者の三郎大将が居ないのに。
むしろ、力を発揮する機会を今か今かと待ち構えているぐらいだ。
とうとうその機会が来た!
三郎の大将が援軍を率いて北からやってきた。
それに合わせて俺たちも突撃を開始する。
俺達は強かった。
今までの不遇な人生に別れを告げるが如く、斯波軍を散々に打ち破った。
穀潰しでも戦えるんだ! 見たかコノ野郎!
肝心の斯波様は弾正忠様が直に討ち取ったらしい。
これで尾張の歪な支配体制がまともになるってもんよ!
お釈迦様ありがとう!
戦が終わって、今川との人質交換がされる事になり、織田から竹千代、今川から勘十郎様と柴田様が交換される事になった。
それは良いんだが、戻ってくる柴田様が俺達の指揮官として配属される事になった。
俺達、穀潰しを冷遇してきた人が俺達を指揮できるのかねぇ?
戦で不覚をとったんだろう?
へぇ、濃姫様が身分を隠して腕試しをするらしい。
クックック! 驚く顔が見ものだぜ!
信じらんねぇ……。
初手合わせで濃姫様に勝ったぞ!?
その後も濃姫様と柴田様は手合わせし、とうとう濃姫様は奥の手の殺気をまき散らして戦うが、柴田様はその濃姫様を退けた!
柴田様は化け物か!
俺は普通の人生を歩んでいこう……。
尾張全域に弾正忠様の支配が行き渡り一息ついた所で、新しい命令が濃姫様から下った。
「これから、街道に設けられている寺院の関所を破壊しに行きます」
……え? 何て?
関所って? どこの? 寺院って言った?
「これからは弾正忠様が尾張の支配者である以上、寺院や他の勢力が政治に介入する事は許されません」
寺院……寺院って……そんな事したら天罰が……。
「不安になっている人もいる様ね。安心しなさい。関所に巣食う僧は神仏の名を騙る偽物よ。安心して破壊してしまいなさい」
そ、そうか。
どんな判断か判らねぇけど、濃姫様の判断なら間違いねぇかって、いや! 間違いだらけじゃないのか!?
「あ、あのこの件は三郎の大将は知っているんで?」
「もちろんよ! 何も問題ないわ! 殿直々の命令よ!」
俺は考える事を止めた。
何も問題ないのだ。
僧は偽物だ。
何も考えるな。
【4章 天文17年(1548年)】
何か伊勢に攻め込む事になった。
あれ? 兵糧って足りていたか? あ、刈田は禁止?
……要するに心許ないって事ね。
絶対に勝たないと飢えて死ぬって事ね。
逃げようかな……。
楽勝だった。
何でか判らんけど、敵の抵抗が驚くほど弱かった。
戦よりも、移動の方が疲れるくらいの侵攻速度で、次々と城を落としていった。
理由を聞けば『農繁期』だからだそうだ。
農繁期だと敵は弱くなるのか?
何で?
お釈迦様のお陰か?
良く判んねぇけど勝てるんなら文句は無ぇや。
北伊勢最大勢力の長野家を倒した所で、一旦侵攻は終わりとなり、長野城の改修を命じられた。
長野城の改修かぁ。
この冬はここに留まるとして、何か凄ぇ改修を施してんな。
この門なんか塞いでどうするんだ?
なるほどね……。
敵が可哀そうになった。
敵が突破できない門に突撃しては死んでいく。
濃姫様の挑発は味方であっても心に刺さる。
せめて敵の為に念仏でも唱えるか。
俺は織田家に生涯ついて行く事を改めて決めた。
【5章 天文18年(1549年)】
息を潜める北畠を他所に、治安維持を担当する事になった。
尾張では野盗の類は粗方狩りつくしたが、伊勢は当然と言えば当然だが手付かずだし、今まさに領主が入れ替わった直後だからな。
不安定な情勢を野盗が見逃すはずがねぇ。
暫く治安維持に勤しんだ所で命令が下った。
とうとう北畠に止めを刺すらしい。
さぁ! 武功を挙げる機会だ!
去年の長野城防衛で、北側では元農民が指揮官に抜擢されたって話だ。
負けちゃいらんねぇ!
……北畠はあっさり降伏しましたとさ。
抵抗しろよ!
お釈迦様、そりゃないぜ!
【6章 天文19年(1550年)】
北畠様が織田陣営に加わり織田家の支配が尾張、伊勢、志摩となった所で、今川家の尾張進攻が確実との報告があった。
もしも尾張一国で相手しなければならないなら、裸足で逃げ出さなければならん相手だがワシも足軽頭として参戦する身。
気合を入れて望まねばな。
足軽頭としての最初の任務は稲作の研究だった……。
えぇ……。
正確には殿と濃姫様、吉乃様の護衛だが、見事に肩透かしを食らった。
まぁ護衛も任務は任務。
何も無い事こそが成果の証。
失敗は出来ん。
なにやら殿達が騒がしい。
どうやら吉乃様の行動で驚いているらしい。
「ん? 何だこれ? 杭か?」
杭らしき物に縄が結び付けられ、足を引っ掛けられる?
どれ……おぉ!?
土を簡単に抉る事が出来るではないか!
ワシも黒鍬として砦や街道の普請に行く事があるが、これは便利じゃ!
吉乃様が開発したのか?
凄い発想じゃなぁ……と感心していたら春の嵐がやってきて農家に避難する事になった。
良く判らない話が続く中、吉乃様が素っ頓狂な声をあげ、急に慌ただしくなる。
「ちょちょちょちょっと無事な種籾持ってきてくれる!?」
濃姫様に命令されて、水に濡れていない種籾を捜してくる様に言われて持ってきた。
って、なにをッ!?
種籾を水桶にブッ込んだ!?
乱心か!?
おや?
沈む種籾と浮く種籾があるのう?
「吉乃ちゃん!! これは大発見よ!!!!」
良く解らんが、殿達は種籾を重さで仕分けたかったらしい。
ふーむ。
何の意味が有るか解らんが、凄い事なんだな???
そんな和やかな稲作研究が終わり、その年の収穫が終った頃、とうとう今川家が侵攻してきた。
ワシは殿の部隊に配属となった。
あれ? これって……本陣突撃でもしないと出番が無いか?
むしろ殿の本陣で出番がある時って敗北寸前じゃないか?
……どっちにしても功績は無さそうだ。
まぁ良い。
目立つ活躍は出来ぬとも任務を遂行するのみ!
うーむ。
この桶狭間山から見る限り一進一退……いや、押され気味か?
「……よし。北方に回り込み打って出る!」
え? そんな! ひぇぇぇぇ!
殿自ら今川本陣に突撃する事になった!
えらいこっちゃ!
オレ、いやワシが総大将の義元を討ち取ったら大金星じゃ!?
がんばるぞ!
……余計な心配でした。
ワシら如きが横槍を入れる隙や機会なんかありませんでした。
殺気があちこちで渦巻く戦場で、殿と義元の発する殺気は濃姫様の比じゃないわ! 近寄ったら巻き込まれて死ぬ! あんな化け物の相手は殿しかできぬわ!
ワシが出来る事は殿に横槍が入らない様、近づく敵を押し返すのが精一杯。
ワシの実力はこんなもんよ……。
決着は不意に訪れた。
濃姫様だ。
聞けば濃姫様の部隊は大迂回をして義元本陣を背後から急襲し決着を付けたらしい。
い、生き残った……。
ありがとうお釈迦様……。
【7章 天文20年(1551年)】
天下布武法度とかいう法が制定された。
うむうむ。
尾張を制するに相応しい法……って何じゃこの寺に対する尋常じゃない法は!?
関所破壊の時も思ったが殿は仏罰が怖くないのか!?
ワシ、寺院取り締まりの任、外してもらえないかな……。
何か猛烈に嫌な予感がするのう……。
予感的中。
濃姫様が今度は寺院を襲撃するとおっしゃった。
関所はまだ偽の僧と強弁できる。
でも寺院に偽の僧は苦しすぎませぬか!?
「安心しなさい! 奴らは仏の代弁者に値しない破戒僧! 正義は我らにある!」
ソウデスカ。
ワシは考える事を止めた!
何も問題ないのだ!
僧は破戒僧だ!
何も考えるな!
……どんなに贔屓目に見ても納得できない証拠品が山ほど出てきた。
目を背けたい光景だ。
確かに酷い噂は聞いてきたし、勝手な関所も奴らの快楽に使われてきたのかと思うと腹が立つ。
こんな奴らが仏法を守ってきたのか……。
濃姫様ののんびりとした、それでいて全く手を緩めない本当に嫌らしい追及が続くが、僧の申し開きが全く頭に入ってこない。
僧って……仏教って……神って……何なんだ?
それはそうと、最近やたらと濃姫様に目を付けられている奴がいるな。
妙に風格と気品があるのに泥まみれで濃姫様と立ち会っておる。
可哀想に……。
しかし、あれぐらい何かに没頭すれば悩まなくて済むのかな……。
【8章 天文21年(1552年)】
「茜、葵、直子の内誰かを嫁にどうだ?」
何言ってんだ、この殿は?
この3人の眼差しに気づいていないのか?
「殿、ワシらには勿体ない。相応しいのは大将だけです」
あえて冷たく突き放した。
苦渋に満ちた大将の顔が面白い事になっているが、この期に及んで馬鹿な事を言っているのだからお灸をすえてやる!
その甲斐あってか殿もようやく観念して3人を側室に迎えた。
よかったよかった。
濃姫様筆頭に他の4人もクセが強くて嫌……美人でお淑やか。
殿と一緒になる方が幸せだ。
それはそうと、那古野城の名が人地城に変わった。
それに伴い土地の名前も変わるらしい。
慣れるまで大変だな……。
後、去年は濃姫様が援軍を率いて出陣した近江に、今度は殿が行くらしい。
ワシも随伴する事になったが、去年は朝倉宗滴に散々手子摺ったらしい。
確かに噂は聞くけど、ジジイなんじゃろう?
まぁ尾ひれがついたんだろうな。
それよりもだ。
ワシがコレを持っていくという事は、ついに鉄砲を使うんだな?
寺院の堕落を忘れる為に鉄砲隊に志願し、無我夢中で仕組みを覚えて訓練を積んだ。
その時間だけが、仏法を忘れる事ができる唯一の時間だった。
雨森城で鉄砲初披露となった。
驚天動地の轟音が響く。
ワシは腰を抜かしてへたり込んだ。
鉄砲ってこんなうるさいのか!
暴れる心臓をなだめつつ、次弾発射の準備に取りかかり、また轟音が響くが耳が痛い!
しかし、この轟音に相応しい効果なのか、雨森城の兵はほとんど城門から突撃する事は適わず倒れていった。
凄い!
コレが新時代の武器、お釈迦様の鉄槌じゃ……って何だ?
南方の軍は何処の所属だ?
「あ、朝倉、宗滴じゃぁぁッ!!」
アレが……アレが朝倉宗滴!?
朝倉宗滴の強襲を受けて、織田、斎藤両軍が大混乱に陥った。
どこから現れたか理解が追い付かない。
何で味方の領地側から進軍してくるんだ!?
お陰で鉄砲の初披露は台無しになってしまった。
それを挽回する水門封鎖作戦は上手く行った。
水門を奪取しようとする敵をコレでもかと銃弾を浴びせた。
コレが新しい時代の武器、お釈迦様の鉄槌じゃ!
思い知ったか!
火矢を受けて暴発しまくったのは内緒だ。
決して我らに対する天罰とかではないぞ。
多分。
【9章 天文22年(1553年)】
京への上洛に随伴する事になった。
京かぁ。
さぞかし栄えた都なんじゃろうなぁ。
……行けども行けども焼け野原。
更には野盗が跋扈する無法地帯。
ここが京!?
これが!?
こんな所に天子様が!?
一方、三好の館や堺には圧倒された。
規模が違いすぎる!
改めてワシらは田舎者だと理解した。
それはそれとしてだ……。
現人神たる天子様の住まいが、ワシらの住まいと変わらない。
力が無いってのは罪なんだな……。
力が無いから、願証寺も殿にやりたい放題されるんだ。
その証拠にワシ達は願証寺を封鎖して、呑気に盆踊り仮装大会で食事つき!
ワシらも警備として駆り出されつつ、交代で盆踊りを楽しんだ。
願証寺は今や動くに動けず防備を固め、農作業よりも砦建設が優先らしい。
力が無いのも罪だが、馬鹿なのは大罪だな。
我慢せずとも降伏すれば皆幸福なのに。
お釈迦様見ておられますか?
ワシは正しい事をしていますぞ!
【10章 天文23年(1554年)】
願証寺を守る砦や寺は落とすが、民や兵への追撃は禁ずる?
そうよな。
幾ら憎くても無駄な殺生はならん。
殿も慈悲の心があるのだな。
……それは気のせいだった。
ワシらが相撲と食事で楽しんでいると報告が入った。
願証寺の砦を全て落とし兵糧攻めを仕掛けた結果、敵は内部崩壊を起こして自滅した……らしい。
漏れて来る噂では、人が人を喰らう阿鼻叫喚の地獄だった……らしい。
敵を追撃しない……兵糧攻め……!
あッ!!
そういう事か!!
あ、悪鬼の所業じゃ!!
どんな人生経験があったらそんな鬼畜の所業を思いつくのか!?
これから寺の内部に入るらしいが……恐らく想像を絶する……だろうな。
飢えた敵から恨みを買うのは覚悟せねばならんな。
それを確認する為に、殿に率いられ敷地に踏み入ったのだが……。
おげぇぇぇぇ!!
無理!
これは無理!
恨みを買うどころじゃないわ!
そんな程度の低い話じゃない!
腐った遺体の発する臭いが強烈なのは知っている!
この乱世、遺体なんて探せば幾らでも出てくる身近な存在!
でも!
この数の暴力には耐えられない!
しかも生きてる人も、遺体同然で動いてる!
こんな地獄の現場を、殿は何で平然と歩いているんだ!?
……殿こそが地獄の悪鬼だからか?
あぁ……だからあんなに戦も武芸も殺気も強いのか……。
今こそ理解した……。
願証寺攻略後、系列寺院の取り締まりに行く事になった。
内蔵助(佐々成政)を大将とした取り締まり部隊に無理を言って同行させてもらった。
どうしても確認したい事があったからじゃ。
「内蔵助、少し聞きたい事があるのじゃが?」
「新八郎か。な、何じゃ?」
ぜいぜいと息を切らし、声を枯らした内蔵助が返事をする。
「な、何をやっておるんじゃ?」
「ん? いや、どうせ楽な任務なのじゃから、せめて自己鍛錬でもしようかとな。殿や濃姫様みたいに殺気を自在に操れぬかとな」
見れば、又左衞門や彦五郎殿(今川氏真)も同様に息を切らしておる。
こいつら何馬鹿な事やっておるんじゃ……。
気合の雄叫びで殺気が出せるなら、ワシはこんなに悩んでおらぬ!
何という気楽な奴等じゃ!
「うん? どうした? 話があるんじゃないのか?」
ワシは呆れる気持ちを抑え込み質問をした。
「あ、あぁ。……お前怖くないのか? 今回の件もそうじゃが、今までの寺院に対する織田家の方針が」
「む……その件か。そりゃまぁ抵抗が無いかと言えば嘘になるが、姿が見えない神仏よりも、堕落したこ奴等が今まで放し飼いになっていた現実の方が怖いわ」
それはそうかもしれんが……。
「天罰や仏罰が怖いとは思わんか?」
「殿と濃姫の方が余程怖いわ」
確かに殿と濃姫様は怖い。
しかし……その怖い人達は、この後も怖い事を平然としていくのだろう。
仏の顔も三度まで。
いつが三度目になるか分らんが、殿やこ奴等と共に居てはいつ天罰に巻き込まれるか分らん。
……潮時か。
ワシに織田軍の兵は務まらん……。
衣食住が保証されても無理じゃ……。
それに……これ以上お釈迦様に敵対する事は出来ん……。
生活が楽でも仏罰を喰らったり地獄に落ちるのは勘弁じゃ……!
最初は良かった。
衣食住に困らない。
それどころか報酬もでる。
労役と戦で肉体と命を賭ければ、この乱世で不自由無く生きられる。
しかし織田家こそ乱世の地獄を作り上げる者!
ここは正に地獄じゃ―――
尾張に帰還してワシは意を決した。
よし。
この改良杭は情報として高く売れそうじゃ。
天下布武法度は……広く公表されておるから情報の価値としては薄いか。
専門兵士の仕組みや鉄砲の所持数は売れそうな情報じゃな。
他に何か無いか?
種籾の水没は……アレは意味が分からんかったしな……そうそう! 今回の件の顛末も高く売れる情報じゃろう。
信長は宗教の弾圧者で神仏に対する反逆者じゃ。
奴が天下を本当に制してしまっては日ノ本が地獄に変わってしまう。
しかし……では誰なら信長を倒せるか? 誰ならワシを高く買ってくれる?
三好は織田と手を組んで居るしな。
尼子は織田よりも三好を敵視しておるしな。
北条、長尾か、武田か……。
よし……。
東に脱出する!
こうして、史実では信長の母衣衆として活躍した浅井新八郎政貞は、尾張を脱出し東に落ち延びる事になった。
史実では1571年の比叡山焼き討ちが決定的な宗教勢力に対する攻撃開始だったのに対し、今は1554年で、しかもかなり初期から宗教に対し敵対しており、家臣の精神の成長が追い付いていない現状が招いた結果でもあった。
また、織田家からの逐電は、当然であるが浅井政貞だけでは無いし、今回の件で大量の逐電者が出た訳では無いが、かと言ってゼロではない。
今までにも逐電者はでており、政貞の様に宗教に対する罪悪感に屈した者も少なからず居たのである。
史実よりも格段に早い宗教に対する政策の成果は、良くも悪くも歴史を動かしていったのであった。
外伝の信長が稲作の改善をしていました。
その結果、小説家になろうでは最早お馴染みの備中鍬にはねくり備中もどき、種籾の塩水選もどきを開発しましたが、大多数の方にとっては何ら珍しくは無かった事でしょう。
私も書いていて心苦しかったです!
でも、それを解ってて表現したのは、信長の様に見る人が見れば発見に繋がる工夫はそこかしこに存在する事、今回のように技術を流出させる展開の為にどうしても必要でした。
やっとネタバレできました!
技術の漏洩先の発展をお楽しみに!
ついでにHJ小説大将一次選考突破できました。
去年は二次選考で討ち取られたので頑張って通過を目指します!




