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外伝17話 太原『挽回』雪斎

 この外伝は8章 天文21年(1552年)の帰蝶が甲冑を新調した頃の話である。


【三河国/岡崎城 今川家】


 太原雪斎には秘する思いがあった。

 それは、悔やんでも悔やみきれない、痛恨の敗戦であった桶狭間。


 何故勝てなかった?

 何故読み間違えた?

 何故今川家が負けた?

 あの桶狭間の戦いとは何だったのか?


 己が育て鍛え上げた、乱世における最高傑作たる今川義元。

 それを補佐する己の智謀が合わされば、日ノ本に覇を唱える事も可能であると信じていた。


 それなのにも関わらず、思わぬ所で足を掬われてしまった。

 その不覚をとった相手は、急成長を見せる尾張の麒麟児にして、乱世における最高の『うつけ』たる織田信長。


 たった2年ほどで、驚くべき急成長を遂げる織田家と信長の手腕を決して侮った訳ではない。

 人となりを見ても、今川義元に匹敵する可能性を秘めてはいたのは、充分に理解できた。

 それならばこそ、明暗を分けるのは互角の主君ではなく、配下の差で決まると思っていた。


 であるならば、太原雪斎である己に匹敵する人物は、織田家に居ない。


 口に出すなら謙遜はしても、心の中で戦力計算をするのであれば、主君以外の最大実力者は、己である自負心と責任感がある。

 決して自惚れでも自分に甘い訳でもない、純然たる事実として冷徹に認識していた。


 故に勝つのは今川家である。


 事実、途中までは間違いなく勝っていた。

 細かい部分では予想外の事もあったが、それは戦の常として想定の範囲内であった。

 十中八、九勝つ―――ハズであった。


 しかし残りの一で負けた。


 雪斎にはその事が信じられず、その後は失態や不手際の連続であった。

 氏真の人質承諾などは、一歩間違えば、今川家が消し飛んでもおかしくない程の大失態であった。

 何とか事なきを得て、今は織田を内密に支援する事になった今川家。

 しかし現在、不思議な運命とでも言うべき縁で、桶狭間の戦いで今川家敗北の原因にして『残りの一』の元凶たる帰蝶が、己の目の前で暴れまわっている。


「彦五郎様!(今川氏真) 甘いですぞ! そんな突き入れで誰が倒れるとおもっているのか!?」


「はい! のう……不破殿!」


「次郎三郎様!(松平元康)腕が振れないならせめて動きなされ! 棒立ちが許されるのは、あの世に行く者だけですぞ!」


「ぐへぇッ! は、はいぃ~っ!」


 刀で戦う帰蝶に対して、氏真と元康は槍を振るっているのだが、帰蝶は刀の不利を物ともせず、全く相手を寄せ付けない怪物振りであった。

 その様子を切り株に座りながら眺める雪斎は、一つの悟りの境地に達したかの様な発見をしていた。


(強い! いくら若と次郎三郎がまだまだ未熟とは言え、二対一でまるで相手にならぬ! それに今は訓練であって実際の戦ではないにしても、それでも理解できてしまう。信長にも全幅の信頼を置けて確かな才を有する配下がいたのだな。……それが女で、しかも他国出身の姫であるのが全く理解できぬが)


 今は個人武芸の訓練で、戦略談義や軍事訓練をしている訳では無かったが、それでも見る人が見れば通じるものがあったのだろう。


 今、雪斎はようやく桶狭間の敗因が理解できた。


 主君に差が無い以上、負けた原因は家臣の差で、その責任は己にある。

 それを悟ったのであった。

 雪斎は次代を担うであろう、若者の活躍に嬉しくもあり、己の時代が終わりつつある現実に寂しさを感じ、なんとも複雑な思いを胸に抱くのであった。


(僧としての修業をやり直すべきかのう? 若い者を見ると心がかき乱されて仕方がない ワシもまだまだ未熟よな)


 3人の訓練を見守る雪斎は握る錫杖に思わず力を籠めつつ若者を応援するのであった。


 そんな世代交代を見守る日々が数日続いたところで、雪斎の下に急報がもたらされた。

 三河の安祥にある本證寺が、門徒に激を飛ばして蜂起したのである。

 刈谷城と岡崎城に挟まれた地域である安祥での武装蜂起は、少なからず衝撃を持って伝えられた。


 表向きには織田家と敵対している今川家では、当然『天下布武法度』は施行されていない。

 故に織田領内程に締め付けが徹底していない。

 また、雪斎自身が僧侶である為に政治と宗教を切り離す政策や『兵僧分離』は取られていない事が仇となった形である。


 特に織田領内から逃げてきた一向宗(浄土真宗)の僧侶は、伊勢長島の願証寺か三河安祥の本證寺に逃げるしかない。

 だが周囲のほとんどが、織田領になっている長島の願正寺には、逃げ込み難い現状も関係していた。


 雪斎は知る由もないが、信長の歴史改変のシワ寄せとも言うべきこの蜂起は、史実よりも約10年早い三河一向一揆の幕開となるのであった。


 この一向一揆は、通常の農民一揆とはかなり性質が違う。

 兵になる人間の元の職業には、それ程差があるわけではない。

 ただ、元の職業の比率に偏りが見受けられるだけである。


 農民一揆は農民主体であるが、没落した武士や、一揆を扇動する勢力が力を貸す場合もあるが、基本的には大多数が農民で構成される。


 一方、一向一揆と言うより宗教一揆は僧侶が主体となるが、構成員は農民は当然、武士も商人もあらゆる人間が幅広く参加する。

 参加条件は、その宗教を信仰する者だ。


 このシステムの恐ろしいのは、宗教が科学よりも絶対的な時代故に、主従の絆よりも優先されてしまうのである。


 どれだけ主君に忠誠を誓おうとも、信仰に対する忠誠は『別腹』とでも言うべき物で、徳川家康は史実の三河一向一揆で、多数の配下が一揆に参加して自分と戦った経緯がある。


 他にも危険な要素は多数あり、確かな財力で支えらえた一向一揆の兵力、一揆の無い平時は、武家に堂々と潜入できる間者になれてしまう。

 なにより『進めば極楽、退けば地獄』のスローガンによる妄信的な崇拝により、簡単に作り出せる最強の『死兵』の破壊力。

 史実の信長が、10年戦い続けるハメになる程の戦力を誇る。


 これに比べれば、単なる農民一揆など可愛いものである。

 武力で押しつぶすのも良し、年貢を融通して救済するも良し、悪代官を処罰するも良し、好きな様に解決策を講じられる。


 しかし宗教一揆はそうはいかない。


 譲歩するか、泣き寝入りするか、全国の信徒を敵に回す覚悟で壊滅させると言った、殺るか殺られるかの二者択一に近い選択は迫られる事になる。


 太原雪斎は、そんな難しい選択を緊急で迫られる事となった。

 義元にも急報を送ったが、駿府からでは到底間に合わないので、三河の現有戦力で対処するしかないのである。

 しかし太原雪斎は、今川家で数少ない独断専行を許された人物である。


(今この場で動けるのはワシしかいない! むしろ織田の親衛隊がこの場に居るのは僥倖か!? ……よし!)


 雪斎は戦う覚悟を固めると、訓練現場に向かうのであった。


「彦五郎様! お、隠密特殊部隊の者よ! 緊急案件である! 三河は安祥で一向一揆が勃発した! 大至急軍を編成せねばなりませぬ! 隠密部隊の者共もこのまま合流して対処にあたってもらいたい!」


 そう言うと、即座に軍議に入った。


「我ら今川軍は、隠密部隊100と緊急招集で集められた400が今すぐ動ける兵力です。対して一揆勢も我らの察知が早かったお陰で500前後の兵力との事。本来なら万全を期す兵力を揃えたい所ですが、時を掛ければ掛ける程に、家中より一揆に加わる人間が加速度的に増える恐れがあります。従って、可能な限り速やかに鎮圧しなければなりません。故にここは拙僧の指揮の下、全軍動いて貰いたい。それを不破殿もご了承願いたい」


「承知しました」


 本来、織田の兵を今川が従える事は出来ないが、緊急事態である事と、表向きには今川家の隠密部隊が傍観するのも、涼春(早川殿)の手前変な話である。

 それに帰蝶の実力を活用しない手はない。

 その辺の機微を雪斎から感じ取った帰蝶は、即座に了承したのであった。


 ただ、雪斎にはこの戦は難しい戦となる事が、容易に想像がついた。

 それは、1つの軍に絶対に討ち取られてはいけない、総大将級の人間が多すぎる、と言うか最重要人物しかいないのである。


 今川の次期当主である今川氏真、今川の宰相である太原雪斎、三河衆を束ねる松平元康、信長の正室の帰蝶と側室の吉乃、葵、茜、直子。

 例え鎮圧に成功しても、誰かが討ち取られたりしたら致命的な大損害に直結してしまう。


「雪斎様、1つ提案があるのですが」


「……何かな不破殿」


「雪斎様の懸念は()()()()()()()、それでも申し上げます。ここはやはり雪斎様が全ての指揮を取り、()()()()()()()動かすのが最良の選択と思います。我が殿にはその旨を伝える伝令を送りますのでご安心を」


 帰蝶は、雪斎が何に困っているのか即座に察して、助け舟を出した。

 誰が討ち取られても最悪な結果になりうる。

 しかし、それでも領主としての責任を考えれば、討ち取られようとも、解決しなければならないのが一揆なのである。


 それに帰蝶は、織田が今川に勝ったとは言え、雪斎が雪斎自身をどう評価していようとも、雪斎はこの乱世で5指に入るであろう傑物に違いない。

 それが、自分達に気を使って、智謀が制限されても困るのだ。


 そんな原因で劣勢を招いては、却って損害が増大してしまうかもしれない。


 ならば身分については忘れても貰った方が、良い結果になる可能性が高い事を帰蝶は理解していた。

 言外の意味と気遣いを察した雪斎は、覚悟を決めた。


「……(かたじけな)い!」


 礼を述べた雪斎は少々の瞑想の後、眼を見開き矢継ぎ早に指示を飛ばした。


「よし! 今この場に居る者だけで動ける最良の策と作戦を立てて指揮をとる! 隠密部隊の者は全員弓兵として25人ずつ4部隊で編制する! この部隊は徹底的に一揆勢を側面より攻撃するが、決して真正面から組み合ってはならぬ。彦五郎様、次郎三郎殿、拙僧の3部隊で鶴翼陣を敷き一揆勢を殲滅する! 合図を送ったら一斉に翼を閉じよ! 戦力は互角! ならば鍛えぬいた我らが負ける道理は無し! 欲望に(まみ)れた僧侶から三河を守るのじゃ!」


 こうして決まった編制は―――

 帰蝶、葵、茜、直子が弓兵遊撃隊として25人ずつ。

 雪斎(涼春、吉乃)150人、氏真、元康が125人ずつ。

 極めて小規模であるが、武将の質としては一揆軍とは比較にならない程の豪華な編制である。


「彦五郎様、次郎三郎殿、其方等は桶狭間以来の実戦である。しかし、今までの訓練と指導をよく思い出して見事指揮をしてみせよ。良いか。相手は死をも恐れぬ一揆軍であるが、肝心なのは初撃である。ここさえ凌げば良い。これを忘れずに臨め。ここで死んだり無様を晒す様であれば、今川家にも天下(織田家)に対しても役に立つ人材にはなれぬ。これは今川家宰相たる太原雪斎の言葉である。そう心得よ」


「はっ!」


(織田親衛隊の皆様、未熟な者共ですが、どうか補佐をよろしくお願いします)


(お任せを!)


 雪斎は今川家宰相ではなく、今度は個人として帰蝶に耳打ちをした。

 先程は覚悟を決めさせるべく厳しい言葉をかけたが、今川の家臣としての本音は、無様を晒すのは良くは無いが死ぬよりはマシである。


 それに、愛弟子をムザムザと死なせる訳にはいかない。


(フッ。ワシも修業が足りんわ。この戦が終わったら濃姫殿と稽古をしてみるか……)


 雪斎は誰にも見られない様に、軽く笑い出陣するのであった。

 こうして始まった一向一揆との闘い。


 雪斎の予測通り、一揆軍は最大の力を持って雪斎隊、氏真隊、元康隊に突撃してきた、と言うよりはこれが最大最強の攻撃にして、統率力や戦略に欠ける軍勢の定番とも言える攻撃。


 逆に言えばこれしか出来ないのであった。


 なぜこんな攻撃をしたのかと言えば、何せ相手は仏敵にして自分たちは仏の加護を得た正義の軍。

 また、仮に討ち死にしたとしても、その先には極楽が待っているのである。


 しかし『死兵』が最強の兵とは言え、無限の力を発揮できる訳でもない。

 死兵故に、瞬間最大威力は確かに見るべきものがあるが、それさえ凌いでしまえば後はどうとでも料理できる。


 しかも、今川軍は太原雪斎が率いるのである。


 一揆軍には、史実通り元康の家臣も少なからず参加していた。

 史実の元康なら、悩んだり情けによる手加減もあったかもしれないが、史実と違うのは、百戦錬磨の太原雪斎が指揮している事だ。

 故に手心を加える余地などない。


 一揆軍は今川軍を突き破れなかった現実に戸惑い、その先の戦略も作戦も無かった為に、簡単に進軍が止まり戦場のど真ん中で右往左往し始めた。

 一揆軍の中心たる僧侶が怒声を上げて、再突撃を指示するが、一旦勢いが止まってしまった集団が、再加速するのは至難の業である。

 しかも一揆兵の大多数は、今川の領地経営が安定したので、最近戦乱から離れ気味であった者達である。


 あたふたしている内に、前は敵、周囲は味方に阻まれて、どうにもならなくなってしまっていた。


 そこへ四方八方から矢が射かけられた。

 帰蝶達による攻撃である。


 一揆軍は正義の行使による狂乱の精神状態が、痛みと血によって呼び起こされた恐怖が興奮から目を覚ます結果となり、あっという間に瓦解し始めてしまった。


「合図をだせ!」


 雪斎は鐘を鳴らし、鶴翼陣の翼を担当する氏真と元康に突撃を命じた。

 それを援護すべく帰蝶達も矢を射かける。


 これで勝負ありであった。


 出陣前には懸念していた不安要素や、負けた場合の致命的損害も、考えていたのが恥ずかしくなるぐらいの圧勝劇であった。


 一方、涼春と吉乃は非戦闘員なので、雪斎の陣で大人しくしていた。

 だが、伝説ともいえる太原雪斎の指揮手腕ぶりに、同盟者としての今川家の力、婚姻先の今川家の力を改めて実感していた。


(父上! 桶狭間で引き分けたとは言え今川の盤石に揺ぎ無し頼もしさです! 彦五郎様の活躍を見る間もなく終わってしまいました!)


(信様! 今川のお坊さんは凄いです~。こんな鮮やかな戦は初めて見ました~! 桶狭間の勝利が信じられません~!)


 二人がこんな感想を思うのも無理はない。

 雪斎は戦の開始から終わりまで、ついに床几から立ち上がる事も無かった。

 味方に阻まれて、前方がよく見えない戦場の様子も、音と臭いと気配と言った視覚以外の感覚を駆使して最適のタイミングで指示を出していた。


 戦に疎い人間が見れば、天空から戦場を見下ろしているかの様な、まるで神仏の戦を見ている様な感覚に陥る程に、盤石な戦いぶりであった。

 それに終わってみれば理解できる、最初の軍編成の時点で勝利が決まって居たと錯覚しそうになる、太原雪斎が太原雪斎たる意義と存在感を、存分に発揮した完璧な戦運びであった。


(他愛もない。鎧袖一触とは正にこの事か。いや……そうか。ワシは何も間違ってもいないし衰えてもいない。ならば……やはり桶狭間の敗戦はワシが衰えたと言うより、織田がワシを上回ったのだな。乱世に合わせて新しい才能が台頭してきたと言う事か)


 それは、ある意味残酷な結論であった。

 己の失策なら挽回もできるが、何も間違っていないのに負けてしまうのであれば、それは才能の差しか無い。

 雪斎は、世代交代の波とでも言うべき、時代の流れを感じたのであった。


「さて各々方。これより本證寺に進軍し、最後の後始末を行う事とする。手向かうものは討ち取るが、逃げる者の追撃は不要である。ただし、本證寺の破戒僧共には、誰の治める土地で反乱を起こしたのか身をもって味わってもらう! 進軍開始!」


 雪斎は年を感じさせない動きで騎乗し、進軍するのであった。


(ワシにできる事は、まだまだ未熟で伸びしろのある彦五郎様と次郎三郎に筋道つける事。それが終わればお役御免じゃな……ん?)


 雪斎が目を向けた先には、涼春と氏真が居たのであるが、やけにハイテンションの氏真の話に涼春が困惑していた。


「涼春よ! あの隠密部隊の皆様……者共の的確な射撃を見たか?」


「鮮やかな一撃離脱と正確な援護射撃!」


「特に白甲冑の者の働きは素晴らしい!」


 まるで浮気を疑われ、聞いてもいない事をベラベラ喋る男の様に、氏真は熱く語っていた。

 涼春としては、太原雪斎の神懸かり的な采配を氏真と話そうとしていたのに、全く話ができる隙を挟む余地のない、熱狂的な氏真の語りであった。


(やっぱり彦五郎様には何故か女の気配がする……? ならば相手はあの白甲冑? って女の身であの強さはあり得ないし……)


(若! その話題は危険ですぞ! 濃姫様も困惑して……?)


 一方、帰蝶は帰蝶で、訓練や戦の時とは別人の様にボンヤリしていた。


《朝倉宗滴と戦った時も思ったけど……太原雪斎恐るべし! と言うか、私たち桶狭間でよく勝てたわね……!》


《そうですねー。史実と違い今川義元と太原雪斎が存在する、パーフェクト今川家を相手に手にした勝利でしたからねー。》


 テレパシーを知る由もない雪斎には、帰蝶が急に意味不明な程の隙と、緊張感の無さを晒しているようにしか見えなかった。

 他にも吉乃が、茜達に雪斎の指揮采配を熱く語っており、とても作戦中の道中とは思えない和やかな雰囲気を醸し出していた。


(戦を終えた直後で、何と豪胆と言うか無邪気と言うか……。まだまだ引退は出来んわ。しかし若いと言うのは無限の可能性を感じるな。正直羨ましいわ)


 雪斎の隣では、疲労困憊で馬上で寝てしまった元康が居た。


(……どこでも寝られるのも才能……か?)


 次代の成長を喜び、一抹の寂しさも感じつつ手綱を握って東へ向かうのであった。


 なお、余談であるが、史実では元康の家臣である本多正信、本多正重、渡辺守綱、蜂屋貞次、夏目吉信、内藤清長、加藤教明が三河一向一揆に加勢した。

 だが、今回は史実よりも約10年前倒しされた一揆であった事、何人かはまだ10代の未熟者であったりして、勝手な行動が出来なかった。

 他にも、雪斎の余りにも早い鎮圧行動により、一揆に参加するかどうか悩んでいる間に全てが終わってしまい、今回の騒乱では松平家を離脱する事は無くなった。


 信長の歴史改変は、信長本人の預かり知らぬ所で、しかし同時多発的に歴史改変を起こす狙い通りに、着実に変化が発生したのであった。

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