0話 信長Take2
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【天正10年6月2日(西暦1582年6月21日) 山城国/本能寺】
(やる事はやった。何事も無ければそれで良し。今回は原因を予め排除してあるから問題は無いハズだ――)
男は自分に言い聞かせる様に瞑想しつつ考える。
――しかし
問題は無いはずなのに、どうしようも無い不安感が男の胸中に渦巻き、かつて見た光景を思い出し全身に脂汗がにじむ。
(いかん)
男は胸騒ぎを感じて起き上がった。
(いかん!)
どこかで兵が騒いでいるのに気が付いた。
(いかん!!)
こんな明け方に。
(いかん!!!)
前回の本能寺の時にも感じた猛烈な悪寒。
(いかん!!!!)
男がそう思った矢先に廊下から足音が響いて来た。
いかにも緊急事態を告げそうな足音である。
(やめろッ! そんな緊急事態を告げる様な足音はやめろッ! そのまま襖を開ける様な事はするなよ!? 今ならその無作法も許すからその先を言うんじゃ無い――乱丸!)
ずばぁん!
普段であれば絶対にそんな無作法はしない森乱丸が、主の願い空しく襖も砕けよとばかりに勢い良く開け放った。
(クソッ! 駄目か――)
「上様! 一大事……」
「また光秀か!?」
乱丸が凶報を言い切る前に男は叫んだ。
「光秀……明智様? え、また???」
乱丸は『上様』と呼び敬う男の意味不明な言動に、就寝を遮ってまで持って来た凶報を告げる事が出来ず狼狽した。
(あ、明智様? 明智様は今頃は中国地方の毛利軍と構えているのは上様も御承知のハズ。しかも今はその明智様への後詰の為に本能寺で準備をなさって……。そもそも『また光秀か!?』って何だ――?)
乱丸の顔からは、そんな混乱の情報がありありと読み取る事が出来て、男は咳ばらいをしつつ口を開いた。
「あー……今のはワシの早合点じゃ! 気にするな! してこれは誰の謀反、企てか? 城介(織田信忠)か?」
男は光秀では無い事に安堵しつつ、では一体誰なのか問い質した。
可能性があるなら近くにいる息子の信忠か羽柴秀吉だが――
「五三桐! 羽柴の謀叛にございます!」
(今度は秀吉か!?)
「クッ! ならば是非も無し。応戦する!」
表に出た男は、弓を射て槍を振るいながらも考えた。
(しかし……それにしてもだ!)
「乱丸! そのまま聞け!」
乱丸は無念の余り涙を流している。
「某は最後までお供します!」
「ん? あぁ、いやその忠節はありがたいが、最後に聞いておきたい事がある!」
「はッ!」
乱丸は、主君の最後の言葉を聞き逃すまいと力強い返事をした。
(この忠臣ならばワシの疑問に答えてくれるだろう)
意を決して男は尋ねた。
「ワシって……そんなに嫌われておるの……?」
「……嫌わ……へ?」
乱丸は、つい間抜けな声を出してしまった。
大失態モノの受け答えである。
こうして本能寺は炎上し、信長は5年ぶり2回目の人生を終えた――
≪序章 信長Take2 完≫