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四話 宣戦布告


「オネストです」


「入れ」


 アウルは今後の計画と機体の塗装の件について、中隊長のオネストを呼び出していた。


「機体の塗装変更を聞いてないが?」


「報告の義務はないはずです。まぁ、理由としてはアウル様は前線にて、活躍されるので他の部隊との識別を容易にするために塗装を変えました」


「確かに報告の義務はないな」


 アウルとオネストは幼い頃の付き合いであり、お互いに立場の違いはあるが信頼できる関係であった。


 そして、オネストはSR(セヘル・リッター)の前線指揮官としても優秀であり、部下からの信頼も厚い。


「SR部隊はオネスト、レーゲン、ブリッツ、中隊計百八十機が改修も終え、出撃可能であります」


「準備が良いな、流石だ。今回はお前たちを連れて行く」


「了解しました。後、他の中隊も塗装を変えておりました」


 オネスト中隊が白、レーゲン中隊が青、ブリッツ中隊が黄に塗装を変えていた。修理用のパーツを除くと三中隊に配備しているのが全てである為、通常の塗装の機体が無くなっていた。


「まじかよ」


「上官がある程度の裁量を認めてくださっているので」


 オネストは不敵な笑みを浮かべいた。確かにアウルはSR隊の隊長達に一定の裁量を認めていたがこういう形で利用されるとは思わなかった。


「部隊編成はこれだ、目を通してくれ。補給計画は出来てから渡す」


「隊員にも伝えます。では、自分はこれにて」


「待て」


 アウルはオネストを呼び止め、引き出しからプレゼントラッピングされた二つの箱を取り出した。


「明日、お前の誕生日だろ? 一日早いがプレゼントだ。後、後ろの棚から一本だけ持っていけ」


「ありがとう。まさか、覚えてるとな」


「当然だろ、友人の誕生日だからな」


 オネストは驚きながらも素直に礼を言い、酒棚から赤ワインを取り出した。


「この可愛いらしい方も俺のか?」


「いや、妹さんにだ。来月が誕生日とは覚えているんだが日にちが分からなかったからお前から渡してくれ」


「わかった。しかし、妹はお前に気があるんだからあまり期待させないでくれよ」


 オネストは自分の妹を思い浮かべながら苦笑していた。妹は他の人に比べて、顔立ちは良い方であるが流石にアマンダと張り合って勝てるとは思えなかった。


「まぁ、ありがとな」


「おう」


 オネストを見送るとアウルは残っていた書類の山を片付け始めた。それはミラが昼食を運んでくるまで続けられた。


「昼食をどうぞ、兄さま」


「ミラか、ありがとう」


 今日の昼食はカルボナーラであった。アウルの知識を元に再現されている料理はカルボナーラをはじめ、屋敷や役所の食堂で提供されていた。


「一つ、お願いがあります」


「珍しいな。言ってみろ」


「奴隷を一人、購入してもよろしいでしょうか?」


「うーん」


 奴隷を所有するは法律では禁止されていないがカラミタ領では犯罪奴隷以外は珍しかった。そして、カラミタ領では他の領地より税金が高かった。


「経済的にはミラも領政に参加していて、給料も貰っているしな。けど、犬や猫みたいに途中で飼えなくなったから他人にあげます、捨てますは出来んぞ。うちの領にもそういう輩が増えて問題になっている。」


「はい、問題ありません」


「じゃあ、商人を手配する」


 アウルはミラと商人の手配の約束をした。領政や産業の話をしていたら食事も終わり、ミラは皿を返しに食堂へ行った。


「さて、俺はこの書類の山を片付けないとな」


 アウルはまた、書類の山との戦闘を再開した。その間にもアルディートやフラルゴが訪ねてきたりして、山が無くなったのは夕方であった。


「ふぅ、やっと終わったぞ。風呂に入るか」


 こうして、アウルの一日が終わった。入浴中にアマンダの襲撃を受けたがそれ以外は問題はなかった。


 ――翌朝


「宣戦布告だと?」


「フォルス公国はヘルト王国が不当に占領しているフムス地方を解放するための戦争だと発表いたしました。王国もすぐに西辺境に軍を派遣、諸貴族にも兵を集めるように指示が出ております」


 事務処理と軍事訓練をこなす日々であったが、フォルス公国の宣戦布告によりその日常は崩れた。


「サージ様がお呼びになっております」


「分かった。すぐに向かう」


 情報官と入れ替わりでアルディートの部下が入っていた。サージが武官や文官に招集をかけていた。具体的な内容は知らされてないが今回のフォルス公国の動きに対するカラミタ領の方針について、話し合うのだろう。


「遅くなりました」


 会議室にアウルが着くとサージの両隣に文官筆頭のリンダと武官筆頭のアルディートが座っていた。そして、この会議室に集まった者達がカラミタ領を支える重臣である。


「皆を集めてたのは公国の侵攻への対処を協議するためだ。儂の意見は領地の最低限の防衛戦力残し、後は全戦力を派遣する」


「財政的にはある程度の余裕はありますが長期になると当然ながら財政悪化は免れないと予想されます」


「軍部もフシル一大隊、SR隊一分隊が補給などを考慮すると最大戦力と思われます」


 リンダとアルディートの意見が出た後はお互いの考えを共有していった。最終決定権は領主のサージが持っているため、意見が出そろうと全員がサージの決定を待った。


「派遣する戦力は軍部の意見を採用する。総大将はアウル、副将はアルディートだ。以上、解散」 


 解散が告げられると慌ただしく、出て行った。そして、会議室にはサージとアウル、リンダが残っていた。


「アウル、バカ息子みたいに私より先に逝くんじゃないよ」


「分かってるよ、祖母(ばあ)さん。必ず帰ってくる」


 リンダはアウルの祖母である。サージが商人だった時から支え続け、貴族になっても驕らずにサージの領政を助けていた。


 昔は軍拡に反対していたがテラス・キマでアウルの両親を亡くしてからは財政が許す限り、軍を拡張した。SRなどの研究が十分な資金が得れたものリンダのおかげである。


「じゃあ、俺も行くわ」


「お休み」


 アウルも部隊の最終調整をするべく、会議室を出た。アウルの自室にはすでにアルディートとオネストが待っていた。


「全軍、準備完了しています」


「出発は明日の朝にする。後、SRのHRAヘビー・リア・アームズ型は歩兵隊隊の支援に回す」


 二人は頷いた。しかし、オネストは事前の打ち合わせにはなかった、フシル隊支援の理由をアウルに問いかけた。


「フムス防衛戦の布陣について、ピグロ閣下から通達が来た。俺達、南辺境領軍は本陣の更に後ろだったよ。もし、西辺境伯が思うように事が進めば、俺達は無用だろうな。


 だが、モルトの情報によれば、公国軍は大量の銃を配備している。一方、対する西辺境領軍は精鋭たる騎馬隊による突撃を選択するだろう」


 公国軍は銃による面攻撃。そして、王国軍は騎馬隊による一点突破を狙うとアウルは予想していた。


「ここからは俺の予測であるが公国軍は王国軍先鋒を銃の射程内まで引き込み、足止め。そして、騎馬隊後方を伏兵で遮断し、騎兵隊殲滅後、全軍にて攻勢をかけると俺は考えている。


 そこで攻勢をかけてきた公国軍をフシル隊とSR隊の火力で進攻を止め、別動隊で敵本陣を強襲し、本陣の立て直し又は撤退を支援する」


「なるほど。だから、HRAのみ残すのですね」


「その通りだ」


 更に三人で計画を確認して、解散した。アウルは大将が寝坊などしたらアルディートの教育という名の拷問を受けるなと考えつつ、眠りについた。


 

亀更新ですがよろしくお願いします。


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