五話
《異世界生活二年目》
二歳のオレこんにちは。一歳のオレさようなら。どうもフィルことフィリップです。
この世界に来てから、二年が経ちました。この世界はいいですね。
四季もあって
春は過ごしやすく、日向にいるのが気持ちいいです。
夏はムシムシしていないさっぱりとした暑さで、海に入りたくなります。
秋は近くの木々が紅葉に染まり、心が落ち着きます。
冬は雪が降り積もり、足が埋もれますがさらさらとしていてとても気持ちがいいです。
日本も四季が鮮やかでしたがこの世界のほうが過ごしやすいです。
ここ二年間でわかったことをまとめてみようと思う。
■■『髪色と瞳の色』■■
これはオレと両親についてだ。
母さんは茶髪の茶色い瞳
父さんは金髪の茶色い瞳
息子のオレは碧髪で金色の瞳
明らかにオレだけ仲間はずれ。
異世界だから、鮮やかな色の髪の毛を持つのは珍しくないらしいが茶髪と金髪から碧色が生まれるとも思えない……。
目の色もまったくよ。
■■『魔法と魔術』■■
父さんの書斎を漁っていたときに見つけた本について。
本の名は。
『冒険者の基本』
一般的なモンスターの名前、特徴。応急処置の方法。野宿の心得。ギルド登録などなど。本当にこれを読んだら冒険者になれるって感じの本だ。
その本の中に興味を引くことが書いてあった。
『魔法と魔術はまったく違う』
ということだ。
魔法……体内のマナを使用して発動させる。
魔術……体外のマナを使用して発動させる。
そして。
魔法を使う者のことを『魔導師』
魔術を使う者のことを『魔術師』
ということだ。
実際のところ、よくわからないが…本にはそう書いてあった。
そして、能力についてもうひとつ。
『恩恵』についてだ。
恩恵というのは、血筋によって生まれたときから死ぬときまでどんな状況下であろうとも使うことのできる能力だ。
つまり、魔法や魔術の使うことのできないところでも恩恵によって授かった能力なら使うことができるというわけだ。
この世界には何千もの種が存在している。
たとえば……獣人種、魔人族、魚人族などなど。
どうして、すべてに『人』という漢字が使われているかというと、それはサウロ神話が関係してくるらしい。詳しい話は神話の本を見つけた時にでも……。
そして、種族の異なる同士が交わり生まれた子のことをハーフと呼び、親の片方の恩恵を受け継ぐとされているらしい。
ーー
「お!今日も勉強か!」
書斎で魔法のことを学んでいると元気のいい父親が入ってきた。
「ねえ、お父さん ボク お父さん なる」
こっちの言葉をカタコトで話すとそれはそれは嬉しそうに。
「おお!そうか?!俺になるか!でも、子供を作るのは早すぎるぞ?え、ちょ、だってお父さんになりたいんだよな?」
オレとしては、父さんのように魔法が使えるようになりたいって言いたかったんだけど。
この男は下ネタにしか走れないのかな?
とりあえず泣いておこう。
お父さんにからかわれた可愛そうな子供が泣いていると母さんが書斎にはいってきて父さんの頭に一発。
「あなたまたフィルに変なこと吹き込んだでしょ?!」
え?ダメなのか?と言い出しそうな顔で座っていた。
それから、お母様によるお父様のためのお説教タイムが始まった……そのうちに魔法が使えるようになったのはまた、別の話。
いや、いまがその話か。
どうしてあなたは変なことしか教えないのよ!と怒られている父親を脇目に、さっきまで読んでいた本に目を戻した。
この本は去年の同じくらいの時期に光を放った『オーゼンの魔導書』だ。
父さんが捨てようとしてるところを見つけて、お願いしたら手元に戻ってきた。
なんで捨てようとしたの?とカタコトの言葉で訪ねたると、どうやら父さんと母さんには白紙の本に見えてるらしく捨てようとしたとのこと。
しかし、オレにはしっかりと文字が刻まれてる本に見える。
きっとこれが、魔導書の効果なのだろう。
使用者にしか見ることの出来ない本。
内容によってはすごいチートアイテムだ。
秘密の交換ノートだって出来るかもしれないからね……。