三話
《異世界生活一年目》
オレはこの異世界に来てから一年がたった。
つまり、一才になった。
最近では語学を理解し、会話と読み書きが自力で出来るようになっていた。
基本、この世界の言葉は『ウルカ語』が使われているらしい。
もちろん、地方によった方言的なものや、大陸が違うと使う言葉違うなどもあるらしいが、この周りではウルカ語が標準語だ。
どうやって覚えたかについて話そう。
会話はともかく、読み書きについてだ。
前に家の中を見て回ったときに言ったとおり、この家には書斎がある。
そこにある本を見て自力で学んだ。
まさに、杉田玄白の如く。
本を一通り目を通し、よく出てくる単語をリストアップしておく。
そして、オリヴァに聞くのだ。
おそらく彼女は博識だ。
母さんや父さんに聞いてもわからないことはオリヴァに聞けばわかる。
だったら、はじめからオリヴァに聞けばいいじゃないか。と思うだろうがそんなことしたら、父さんと母さんがかわいそうだ。
まずは、父さんと母さんに聞いてからオリヴァに聞くようにしている。
オリヴァにわからないことを教えてもらいながら、一才まででこの世界についてわかったことをまとめようと思う。
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・世界は六つの大陸から構成されている。
・他族種同士が交わることもあるということ。
・神々が物理的に存在し、世界を覇せているということ。
・種族は数え切れないということ。
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大体、こんな感じの世界だ。
他族種同士が交わることがあるということは、神とも交わって生まれた者もいるのかもしれない。
前世では、神と人間が交わって生まれた英雄などもいたからこの世界にもいるのだろう。
ーー
最近、オレにも日課ができた。
それは父さんの漁を母さんと一緒に見ることだ。
朝早くにいか……ないで、お昼近くになってから、三人で浜辺に向かう。
父さん曰く、朝早くにいくより昼間から海に出たほうが短時間で多く捕れるらしい。
今日も仲良く三人で浜辺に行く。
オレと母さんは砂浜に座り、父さんは裸足になり沖の方に向かう。
そう、父さんはなぜか沈まないのだ。
最近は立てるようになったから、父さんの真似をして歩いてみようと思ったが全くだめだった。
そんな思いから、本当はオレにいいところを見せたくて何か仕組んでるんじゃないかと思って、父さんの歩く後をついていったがアクリル板のア文字もなかった。
きっと、魔法の一種か何かだ。
父さんは漁が一通り終わると母さんとキスをして、どこかに魚を届けにいってしまう。
母さんは心配そうにしていたが、どこに届けているのかを父さんに詳しく聞かなかったからオレも気になっていたが聞かなかった。
ーー
おっと……寝てしまったようだ。
まだ、一才の赤ん坊の体は昼寝が必要だ。
辺りが暗くなり始めるのと同時に父さんは帰ってくる。
夜にオレと母さんとオリヴァの三人だけになることは絶対になかった。
「みんな!夕食よ!」
母さんの一声でみんなが食卓につく。
残念ながらオレにおっぱい堪能タイムはない。
まだ、一才で語学と算術が完璧なお子様がげっぷをさせてもらうために抱っこなんてさせてもらえない。
だから、オレも席に着く。
今夜のご飯は、バタフライフィッシュとケラケラリーフの炒め物とスローリーチキンの丸焼きにすこし固めのパンだ。
バタフライフィッシュは今が旬だからかケラケラリーフとの炒め物は最近よく出る。
肉厚で臭みのないバタフライフィッシュと噛めば噛むほどシャキシャキするケラケラリーフ、この二つの相性は抜群だ。
スローリーチキンの丸焼きは一見、大胆な山賊料理に聞こえるが味は一級品だ。
皮がパリッパリのスローリーチキンを口に入る大きさにカットし、少し固いパンに乗っけて食べる。仕上げに酸味のするレモンのような果実の汁をかけたもんなら、頬がとろけるおいしさになる。
父さんとオレでスローリーチキンの取り合いになりながら楽しい夕食は終わった。
ここからは、自習タイムだ。
最近はオリヴァに教えてもらうことも少なくなった。
書いてある字は読めるし、意味も大体はわかる。わからなかったら、違う本で調べればいい。
一才のオレにはたくさんの時間があるからね。
いつもどおり書斎に入ると、少し変な違和感を感じた。
机の上にいつもない本が置いてあった。変な違和感の元はこれだとすぐわかった。
何かすごくひきつけられるような感じが本からした。
『オーゼンの魔導書』と書かれた本は四つ端を金色の金具で補強されており、表紙や背表紙には碧い鱗の付いた革で加工されていた。
大きさ的にはハリー・ホ○ッターの一冊分くらい。
今までの本と違うところは、見た目、そして紙ではなく羊皮紙が使われているということだ。
紙に文字を写すのは魔法道具でできるらしいが羊皮紙は魔法で直接書き込むしか文字を残すことはできないらしい。
これは、是が非でも読んでおきたいですな。