閑話 セリィからの手紙
後日談3で、ノアが子供の頃盗み見た、ヴァニィの宝物。
セリィからの手紙の1通です。
※ 2/14,バレンタイン企画で投稿したものを移動しました。
親愛なるヴァニィへ
お手紙、拝見しました。
狩りで狐を見事仕留めたとのこと、驚きました。
私のお兄様は12歳で、もう学院に通っていますが、狩りになど行ったこともありませんし、馬にも乗れません。
ヴァニィはまだ11歳なのに、なんでもできるのですね。
私は、生きている狐など見たこともありませんので、お母様に尋ねてみましたところ、犬よりもずっと速く走るし、人の気配を感じるとすぐに姿を隠してしまうので、見付けることさえ難しいとのこと。
私は、軽く走っている犬でも、すぐに見失ってしまいます。
あれよりずっと速く走る狐なんて、想像もつきません。
きっと私では姿を見ることもできないのだろうと思います。
それを仕留めるなんて、ヴァニィは本当にすごいです。
あなたは、そうやってどんどん逞しく、頼もしくなっていくのですね。
今、私は、あなたの隣に立つに相応しい淑女になるために、社交術やダンスを学んでいます。
それと、領主の妻になるには必要かと思いまして、簿学と出納学を学び始めました。
まだまだ学び始めたばかりですから、あなたのような素晴らしい成果は挙がっていませんが、少しずつでもできることを増やしていきたいと思っています。
学院で再会する頃には、きっと素敵な淑女になっていることでしょう。
そうそう、先日、庭のバラが綺麗に咲いたので、ポプリにしてみました。
初めてでしたが、お母様には上手にできたと褒めていただけたので、この手紙と一緒にお送りします。
使ってくださると嬉しいです。
それでは、また。
お手紙、お待ちしております。
あなたの未来の妻 セルローズ・バラードより
これで、ラブレターのつもりじゃないってのが、セリィのすごいところです。
この手紙を書いたのは、本編2話の頃。
当時、セリィにとってヴァニィは、背伸びしたい盛りのやんちゃな弟分だったので、優しく褒めてあげてるつもりで書いています。
これを読んだヴァニィやノアがどう思ったかは、閑話「初恋の君」、後日談3「あなたの隣に立つために」を読んでいただけばお分かりいただけるかと。
まったく罪作りです。