八話:私→彼
「じゃあ、端っこの方の空いてる席あるでしょ?そこ座って。」
先生の言葉に小さく頷いてから、私は空いている席の方へ向かった。
隣の席は見事な事に内村クンだった。
何の根拠も無いけど、私は内村クンは昨日のあの人だ。と決め付けていた。
いや、絶対だ。
先生が少し話した後、ホームルームが終わり、休憩時間になった。
内村クンがすぐに話しかけてくると思って待っていたけど、ずっと考え込む様な表情で窓の方を見ていて、私はじれったくてしょうがなかった。
くいくい。と内村クンの制服を引っ張った。それに気付いて内村クンが振り返った。
「・・・・・昨日はありがとう。」
あんまり何も考えずに振り向かせたから、一言しか言葉が出なかった。
「えーーっと・・、なんて呼んだらいい?」
その場を濁すように聞いてきた。正直、こっちも少し助かった。
「・・・・ユタカ。」
いきなり下の名前は嫌かなぁとは少し思ったけど、内村クンは小さく頷いた。
「じゃあさ、豊。昨日の約束、覚えてるよな?」
「うん」
「だったらこれで約束、守れそうだな。」
「・・なんで?」
「そりゃぁ同じクラスだったら、ほぼ毎日会えるんだから。一日ずつ、表情作っていこう。
無理なら一ヶ月でもいい。ぜってーに約束は守るからな。」
そう言った後、少し恥ずかしそうにした内村クンの表情がかわいらしかった。
その言葉がすごく嬉しかった。
そういう自分も、すごく恥ずかしくって、頬が火照っていた。
「・・・・ありがとう、心次郎クン。」
思わず下の名前で言ってしまった。照れくさそうに目線をそらした心次郎クンは、カッコよかった。
火照った顔が直らないけど、表情は変えられなかった。
でも、心二郎クンの心は、温もりを取り戻していたと思う。
ロミオとジュリエットはオレンジ色の糸で結ばれています。
こんにちは。神の息(溜め息)です。
読んでくれてありがとよ。感想を頼むゼ・・・。




