14話「最期の戦闘」
佳樹は、望月たちと一緒に、御小西の家に来ていた。
「さあみんな、こっちだ」
御小西が案内したのは、家の裏の奥にある、PCルームだった。
普通のPCが並べられているが、そこの真ん中に唯一、でっかいPCがあった。
「それを使ってくれ。今日は絶対にmustを殺す。絶対に」
「分かりました。絶対に殺しますよ」
佳樹の目は殺戮の色に輝いていた。
その頃、とあるラボにて。
「ケケッ! 最強の駒だったmustももう終わりか」
「ははっ、そのようです。もう既に彼は戦意を喪い目から感情が消えています」
「まあいいさ。捨て駒君に言っておいてくれよ。『チェックメイトと詰み、どっちだろうね? 残念ながら君にとってどちらも敗北という共通点にしかならない』ってね」
「ははっ」
「それではmustにダイレクトマッチを…」
とそこで、『Direct matching arrived!』という表示が出た。相手は…
mustだ。と同時にチャットがやってきた。
「やあやあ。信用ならないかもしれないが僕のポイントは零に近い。ということでだなぁ…君と本気で戦い勝ったらもう一度悪のゲーマーを始めるよ。でも負けたら死ぬ。潔くね」
佳樹もチャットで返した。
「おう。僕も君を殺しに来たんだよ。殺したいよ、早く」
「じゃあ始めようか」
そのチャットと共に対戦は始まった。
初手はcross kill。少しづつ相手の体力を減らしていく。するとmustのアバターのGun battlerが銃弾を放った。
少しダメージを受け、その場で揺らぐ。その隙を見逃さずmustは必殺技のBright gunを使った。
佳樹のアバターはかなりのダメージを受け、ゲージが満タンになっていた。そして、
「今回はこうする! GROWUPだ!」
そして佳樹のアバターは成長した。
刃渡りが日本刀のように長い包丁のみを持っている。これの一撃をくらうとたちまちぶったぎられる。
「うおおおおおお! cross kill!!!」
そうしてmustのアバターは死んだ。
すると、物凄い現象が起こる。一位のランキングや、一位のユーザーデータがすべて消去されている。
対戦終了のチャットでmustは語った。
「僕は死んだ。みんなありがとう。それと、佳樹、君のお母さんを僕が殺したんだってね、すまなかった。おお、もう下半身から光り始めてる。ありがとう、そしてさような」
そこでチャットは止まった。たぶん、手が消える前に急いで送信ボタンを押したのだろう。
佳樹は表に出て、太陽を見た。分かるわけもないのに、その太陽に無垢な頃のmustが見えたような気がした。