13話「大人と淫蕩」
佳樹は膨大な記憶を取り戻した。
そしてそれらを余すところなく三人に語った。
一歳の頃から喋れたこと。
三歳のころは記憶という言葉に固執していたこと。
五歳の頃に親が離婚したこと。そして佳樹は母方について行ったこと。
そして、九歳の時に知ったもう一つの世界と母親の不可解な死。
「これで終わりです。他は無駄なことなので」
生徒二人はともかく御小西は納得した。そして、彼女もまた、何かを得たような顔だった。
そこから先のことが思い出せない。どんどん視界が白くなって…遂に眠ってしまった。
気づけば五時頃。
望月は佳樹を胸枕していた。
「あれっ、ここは?」
「PC部の部室だよ。佳樹ったらぐっすり行っちゃってるからさ。PC部に枕なんて置いてある訳ないでしょ? だから私が、胸枕」
「なんかすいません。迷惑掛けちゃったみたいで」
「む、それは私の胸じゃ安定しないという意味かな?」
十分大きいが、御小西に大分負けている胸を見る。
「い、いや安定しますよ! まさにメロンです」
佳樹は意味の分からない比喩で返した。
「そういえば千代崎はいないんですか?」
「彼女は帰ったよ。ーー明日覚えてろ、と伝言付きでね」
御小西も恐ろしいことをさらっと言った。さらに御小西が続ける。
「ああそうだ。佳樹君、夜の予定は空いているかい?」
望月は体を硬直させた。いかがわしい夜が訪れてしまうのではと考えたのだ。しかし彼の回答は望月の心を抉った。
「空いてますよ」
「うむ、いい返事だ。じゃあ、私の家に来たまえよ」
「「えっ」」
二人ともそれは予想してなかったようだ。
夜。御小西家。
御小西は家の鍵を開けると、そそくさと中に入っていった。それから「ご近所にばれるなよ、見つかったら変な目で見られるから」というアイコンタクトも送ってきた。しかし佳樹は無視した。
一人暮らしの一軒家。表札には本当に「御小西」と書かれていた。
(本気で御小西さんなんだな)
そして佳樹は歌を歌いながら中に入っていった。
「おい」
それが佳樹が部屋に入ってきてからの第一声であった。
部屋は散らかっていた。それだけでなく本棚にはコンビニでニートのおっちゃんがわざわざ人のいない夜男性店員がいることを確認して購入するような本がぎっしり詰まっていた。それにPSPの山。並べたところ、正規のPSPではないものが四十台あった。
詰まるところ、教師が生徒をあげる部屋ではないということだ。それに客がいるというのに御小西は既に酔っぱらっている。
「ああ、佳樹君か。私は今から風呂に入るからすぐに入ってきてくれ」
「は、はーい」
御小西の次、と思っていた佳樹がぼーっとしていると、御小西は不思議そうな顔をした。
「どうした、こないのか?」
「えっ」
「大人の夕張メロンを見せてやるさ」
どうやらこの方は教師ではないようだ。
と言うわけで風呂に入った。すると、佳樹の目の前でビッチなお姉様が、妄想していた。
「ぐっふふ佳樹君夜といえばこれだ!! 楽しませてくれよ私を」
どうやら佳樹がいかがわしい妄想の主役のようだ。佳樹は、この人は永遠の高校生だと思った。もちろん止めた。
「はははっ、まさか佳樹君が来ているとは……ううっぷ」
「先生?生きてますか?」
「気持ち悪い」
それも無理はない。お酒を飲んだ直後に風呂に入りあんな妄想をしていたら、本人だけではなく周りも気持ち悪がるだろう。佳樹は構わず浴槽に入った。すると、
「佳樹君。頼む。ここからだしてくれ」
と御小西が言った。これはかなりの重症のようだ。仕方なく助けることにした。
佳樹は、力が抜けて動かない御小西の体を抱き上げた。胸が、佳樹の陰部に当たる。ふにん。夢心地だった。
「先生、あなたのメロン、楽しませてもらいましたよ」
とだけ言って御小西を投げ飛ばした。
その後、素っ裸で仰向けになって喘ぎながら倒れ込む御小西を無視しながら、佳樹は風呂を楽しんだ。
その後、佳樹は寝室に召集され、御小西と対話をした。途中でHの話になったので寝た。
翌朝。
何か柔らかいものが頭の上に乗っかっていた。触ってみる。とても気持ちいい。
御小西のメロンだ。どうやら抱きついて寝たようだ。ああこれを望月先輩がしたら……
と、眠っている女から声が聞こえた。
「おいおい、あんまり望月のえっちいのは考えるなよ」
御小西はエスパーだった。