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ニセモノ王子(プリンス)  作者: 鍵の番人


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11/12

11.

 公園に移動して千和さんがベンチに座ると、俺は彼女の正面に立った。そこで、洗いざらい白状した。


 昴には簡潔に話せたのに、いざ千和さんに説明しようとすると難しかった。何度もつっかえてしまい、思うように話せない。


 しかし、そんな聞きづらい俺の話を、千和さんは口を挟まず、黙って聞いてくれた。俺が男であることや同い年であることには驚いた様子だったが、それ以外、これといった感情はうかがえなかった。


 怒るでもなく、泣くでもなく。

 何の反応もないことが、俺の恐れを増幅した。


「あの……本当に、ごめん……。でも、すぐに、ばれると思ってたんだ。……俺、姉貴と違ってカッコよくないし……。背も高くないし、成績とか普通だし……」


 コンタクトレンズが合わなくて、分厚い眼鏡が手放せない。人と目を合わせるのが苦手で伸ばした前髪は、陰気に見えると身内からも不評だ。


 自信がなくて臆病で。昴とは、外見にも中身にも天と地ほども差があった。


 しばらく口をつぐんでいた千和さんが、そこでようやく口を開いた。


「……そんなこと、ないと、思うけど……」

「……へ?」

「だって、人気、ありそうだし」

「――え、俺が? ……そんなわけないよ!」


 びっくりして顔を上げる。眼鏡をかけた目に、頬を膨らませた千和さんの顔が映った。


「俺なんか、地味で、平凡で。友達は数人いるけど、他はろくに話したこともないし……」

「嘘ばっかり。山上さん――えっと、北辰くんだっけ? ……モテるでしょ」

「は? まさか! 女子になんか、認識されてるかどうかすら怪しいよ!」


 普段はきっと、壁のシミか背景にしか思われていない。係りの仕事をやるときとかに、「あ、そういえばいたんだっけ」と一時的に存在が浮上するくらいだろう。

 だから、女子と話をするだけでも、めちゃくちゃ緊張するのだ。


 そういえば、昴の真似をしていたから今までは平気だったが……、改めて考えてみると、今、俺は、同い年のかわいい女子と話をしているわけで。


「い、一度もモテたことなんてないです……」

「? なんでいきなり敬語?」

「だ、だって……、同い年だから……」

「……同い年なら、タメ口でいいんじゃない?」


 そう言って、彼女はようやく破顔した。


「そっか……。じゃあ本当に、モテないんだ!」


 思い切り断言され、俺は絶妙にショックを受けた。


 言ったけど。確かにそう言ったけど。

 なんで俺がモテないとそんなに嬉しそうなんだ。


「人気、まったくないんだよね!?」


 しかも、彼女はもう一度念を押した。彼女の笑顔と発言が、ぐっさりと胸に突き刺さる。


 泣きそうな顔をした俺を見て、千和さんが慌てたように付け足した。


「あ、ご、ごめん! えっと、たぶん、北辰くんが思ってるのと違くて……」

「……違う……?」

「う、うん。……だって、北辰くん、優しいし、私のこと気遣ってくれるし……。いいところ、いっぱいあるよ。だから絶対、人気あるって思ってた」

「……え」

「男の子だって聞いてびっくりしたけど……、でも、もっと仲良くなりたいのは変わらなくて……」


 恥ずかしそうに指をからませている彼女を、言葉もなく見下ろす。


 怒ってないの? 俺が男なのはスルーでいいの?

 じゃあ、何が。最近、沈んでいる様子だったのはなんで。


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