11.
公園に移動して千和さんがベンチに座ると、俺は彼女の正面に立った。そこで、洗いざらい白状した。
昴には簡潔に話せたのに、いざ千和さんに説明しようとすると難しかった。何度もつっかえてしまい、思うように話せない。
しかし、そんな聞きづらい俺の話を、千和さんは口を挟まず、黙って聞いてくれた。俺が男であることや同い年であることには驚いた様子だったが、それ以外、これといった感情はうかがえなかった。
怒るでもなく、泣くでもなく。
何の反応もないことが、俺の恐れを増幅した。
「あの……本当に、ごめん……。でも、すぐに、ばれると思ってたんだ。……俺、姉貴と違ってカッコよくないし……。背も高くないし、成績とか普通だし……」
コンタクトレンズが合わなくて、分厚い眼鏡が手放せない。人と目を合わせるのが苦手で伸ばした前髪は、陰気に見えると身内からも不評だ。
自信がなくて臆病で。昴とは、外見にも中身にも天と地ほども差があった。
しばらく口をつぐんでいた千和さんが、そこでようやく口を開いた。
「……そんなこと、ないと、思うけど……」
「……へ?」
「だって、人気、ありそうだし」
「――え、俺が? ……そんなわけないよ!」
びっくりして顔を上げる。眼鏡をかけた目に、頬を膨らませた千和さんの顔が映った。
「俺なんか、地味で、平凡で。友達は数人いるけど、他はろくに話したこともないし……」
「嘘ばっかり。山上さん――えっと、北辰くんだっけ? ……モテるでしょ」
「は? まさか! 女子になんか、認識されてるかどうかすら怪しいよ!」
普段はきっと、壁のシミか背景にしか思われていない。係りの仕事をやるときとかに、「あ、そういえばいたんだっけ」と一時的に存在が浮上するくらいだろう。
だから、女子と話をするだけでも、めちゃくちゃ緊張するのだ。
そういえば、昴の真似をしていたから今までは平気だったが……、改めて考えてみると、今、俺は、同い年のかわいい女子と話をしているわけで。
「い、一度もモテたことなんてないです……」
「? なんでいきなり敬語?」
「だ、だって……、同い年だから……」
「……同い年なら、タメ口でいいんじゃない?」
そう言って、彼女はようやく破顔した。
「そっか……。じゃあ本当に、モテないんだ!」
思い切り断言され、俺は絶妙にショックを受けた。
言ったけど。確かにそう言ったけど。
なんで俺がモテないとそんなに嬉しそうなんだ。
「人気、まったくないんだよね!?」
しかも、彼女はもう一度念を押した。彼女の笑顔と発言が、ぐっさりと胸に突き刺さる。
泣きそうな顔をした俺を見て、千和さんが慌てたように付け足した。
「あ、ご、ごめん! えっと、たぶん、北辰くんが思ってるのと違くて……」
「……違う……?」
「う、うん。……だって、北辰くん、優しいし、私のこと気遣ってくれるし……。いいところ、いっぱいあるよ。だから絶対、人気あるって思ってた」
「……え」
「男の子だって聞いてびっくりしたけど……、でも、もっと仲良くなりたいのは変わらなくて……」
恥ずかしそうに指をからませている彼女を、言葉もなく見下ろす。
怒ってないの? 俺が男なのはスルーでいいの?
じゃあ、何が。最近、沈んでいる様子だったのはなんで。




