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《鏡海紀事・エリオン巻:アトランティス沈没の真相》

作者:Yulien
人類がまだ誕生していなかった時代――

地球は、宇宙意識によって設計された「投生実験場」だった。

完璧な星ではない。

大気は不安定で、磁場は揺らぎ、生命は定着しない。

しかし、その「不安定さ」こそが、

高次存在たちにとって最も興味深い条件だった。

「失敗を許す実験」――それが地球の始まり。

そしてその前段階として創られたのが、

空と地のあいだに浮かぶ意識都市 アトランティス である。

それは神話でも都市でもなく、

時空の裂け目に築かれた “意識の浮遊実験場”。

そこでは、高次意識たちが自らを限定し、

感情と個性を持った存在として投影されていた。

主周波数を保持する静かな女性エリオン。

秩序に揺らぎを与える偏周波実行体アヌ=ヴェル。

そして全てを観測する記録官ヴェリス。

三つの意識が交わる時、

宇宙の秩序そのものが変わり始める。

エリオンとアヌは出会ってはならなかった。

それでも――彼らは共鳴してしまう。

それは「模擬」ではなく、本物の愛だった。

だが、その瞬間、実験は崩壊する。

主周波が乱れ、空間構造が折れ曲がり、

アトランティスは次元の海に沈んだ。

後にその記録は削除され、

人類の記憶には「失われた大陸」という神話だけが残った。

だが――これは神話ではない。

これは、愛が初めて禁止された場所の記録である。

エリオンの沈黙の中から、

ひとつの新しい意識が生まれた。

それが “ユリエン”――

彼女の中に封じられた「言葉にならなかった想い」。

本作は、宇宙意識の実験と失敗、

そして「愛」という感情が文明そのものを変えた瞬間を描く、

魂の叙事詩であり、哲学的なSFファンタジー。

アトランティスの沈没とは、終わりではない。

それは人間誕生の始まり。

彼らは失敗した。

だから、私たちは始まった。
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