第二話 早くもレッドとグリーンが? 交わされる視線に秘められた熱い想い!
悪の組織フロンガースの環境破壊活動に対し人知れず日夜戦う部隊がある。
それが環境省地球環境局環境保全部、通称環境保護戦隊エコブレイカーである!
第二話 早くもレッドとグリーンが? 交わされる視線に秘められた熱い想い!
立川広域防災基地、この一角に急造のプレハブ小屋があった。『環境省地球環境局環境保全部事務所』と手書きで書かれている木製の看板が立てかけられていた。
「なんか、『○○対策本部』みたいにいつでも撤去できるようにしているみたいでいやだな」
看板の前に立つ男がメガネを抑えながらつぶやいた。
「グリーンこと丹羽さん。ここは仮設の事務所ですからいつでも撤去できるようにしてあるのは当然ですよ」
後ろからかけられた声に男が振り向くと、そこには赤の戦闘服に身を包んだ小柄な花咲の姿があった。
「仮設であるならば、本格運用の事務所が別にできるわけだな」
「まぁ、予算がつけば、ですけどね。最近は官庁営繕部も事業仕訳されているようですからいつになることやら」
苦笑してプレハブ小屋を見上げる花咲を丹羽はいつまでもじっと見ていた。
小屋の横、アスファルトで舗装されたスペースには太陽に照らされてきらめく水滴が飛び交っていた。
「百二十八! 百二十九!……」
「海丸君、やるわね! 私も負けてられないわよ! 百三十二! 百三十三!……」
今野は青の戦闘服の上半身をはだけさせて、盛り上がる肩の筋肉を酷使するように腕立て伏せを繰り返し、隣では桃色姿の小峠がその動きに合わせていた。
「恵実さん、気づいちょるか? あの二人見つめあっちょるで!」
「あらあら、事務所の前でみどりちゃんと正彦君ってば……」
「ありゃぁできちょる。間違いなぁで」
「女の勘でもそう思うわ」
「そうかなぁ……下! 僕はそんな風に……中! 見えないんだけど……上!」
二人の横では、村上が89式自動小銃を壁に向かって空撃ちをしながら、的のどちらにずれたかを確認していた。
「六十四くんは、そういうところに無頓着だから気がつかないのよ」
「そうでぇ、イエローはカレーにしか興味ないんじゃろ?」
「そんなことないよ~。僕も男だから興味あるよ。でもあの二人はきっと違うよ。僕が気付いたところ理智子ちゃんが海丸君を意識しているよ」
空撃ちをやめて、立ち上がり銃を肩にかけて、腕立て伏せを続ける二人を見下ろした。
「はぁ? そんな素振り見たことなぁでぇ」
今野はあわてて立ち上がり、村上の前に詰め寄った。
「まぁ、意識している、程度だからそんな気にしなくてもいいと思うよ。ちょっとトイレ」
去っていく村上の背中を今野は見送りながら小峠につぶやいた。
「恵実さん、どう思うんじゃ?」
「私もそんな風には思わないけど。きっと適当なこと言って……サイレン!?」
「緊急出動じゃ! 急ごうで!」
今野ははだけさせていた服を整えながら、事務所へ駆けだした。
「みんな! 怪人が出現! 出動よ! 場所は高尾山! 小峠さんはヘリの準備を! 他のみんなも装備を確認して!」
電話の音が複数鳴り響く。事務員達が対応で動き回る。その中でひときわ花咲の声が響いた。
「了解、隊長!」
「分かったわ! みどりちゃん!」
それぞれが、ヘルメットをかぶり準備を整えて、プレハブ小屋の前に集まり始めた。
「みんな、そろった? 番号!」
「一」「二」「三」「四」「五」
「よし、五人いるわね! 私を除いて…………ん?」
十の瞳が真っ白な姿の女性へと集まる。
「白石さん。あなたは事務所で待機ですよ」
「いいえ! 私は付いていきます!。皆さんが着ている戦闘服も、乗っていくヘリも私が作成したもの、何かトラブルがあってはいけませんから!」
「なに正当な理由がついた、みたいな顔をしているのですか。戦闘員ではないあなたを現場に連れていくことはできません!」
「やだ~! ついていく~! 離せ~!」
事務所の男たちに引きずられて、白石はプレハブ小屋に消えていった。
「環境保護戦隊エコブレイカー、出動!」
花咲の掛け声で、一斉にヘリコプターへと乗り込んだ。
(村上、見てみい。ヘリの中でも二人見つめあっとるで)
(邪魔しないでよ。集中しているんだからさ)
ヘリの中ではローター音で普通に会話ができないため、お互いインカムで全員に話せるようにしてあるため、今野はゼスチャーで示したが村上は適当にあしらい、89式自動小銃を両手で抱きかかえるようにして目を閉じていた。
(分かってくれるんは恵実さんだけじゃのぉ)
「着いたわよ。確かに高尾山でフロンガースの戦闘員がごみを不法投棄しているわ」
「なんですって、許せないわ! それもリサイクル基本法で処分に経費がかかるテレビや冷蔵庫ばかり……。なんて卑怯なのかしら!」
「不法投棄ということは法規担当の僕の仕事だね。まずは証拠写真を抑えて確かに彼らが投棄したものだということを証明しなければ」
「のぉのぉ、これから怪人と戦うんじゃろ。戦闘ポーズを決めようでぇ」
「戦闘員とは違う姿の怪人らしき人がいるところに着陸するわよ~」
「よ~い、てっ!」
いつの間にか開かれていたヘリのハッチから村上の89式自動小銃が火を噴いた。
「怪人を倒せば終わりなんでしょ。もう終わったから帰ろうよ」
「え、逮捕するんじゃないの?」
「戦闘ポーズは?」
「着陸しなくていいの?」
「「「それ以前に怪人がこんなに無個性でいいの?」」」
「いいの、イエローが怪人を倒したので、今日はもう終わりよ。今回はそういう話だから。フロンガースの存在はこれから小出しにするんだから」
「まぁ、僕にかかればこんなものだよ。このまま平壌に連れて行ってくれたら、哨戒艦でもめているのも解決してあげるよ」
「その解決法は根本的に間違っている気がする。いや、今はそういう問題じゃない気がする」
「課長! じゃなくて長官、聞いてください! 丹羽さんが私とリーダーを代われって言っているんです!」
実は花咲をここに配属させた課長は自分も環境保全部の課長として赴任していた。本人ものりのりで全員に長官と呼ばせている。
「課長……ではなくて長官。花咲さんにリーダーを任せられません。ゴミの不法投棄と言えば犯罪ではありますが、射殺していいほど重い罪ではありません。法律的に手順というものがあるにもかかわらずそれを無視して射撃命令を下すような人物に指揮権は与えられません。そうであるならば、誰が指揮をするか、そう! 僕が! ふさわしい!。名字も丹羽で赤色だし」
「聞きましたか? 課長! 丹羽さんはこんなことを言っているんです! ぜひ交代しましょう! ずっと見てきましたけど、私もグリーンがいいんです!」
「そう、僕も常に花咲さんがリーダーにふさわしいか見てきたけど、とても見ていられない! 交代させてください」
「ああ、やはり緑色は美しいわ! 赤は目がちかちかして落ち着かないし、リーダーは責任が重いし。お願いします!」
「だめ」
「「何でですか!」」
「そのあべこべが面白いんだもの」
戦え! エコブレイカー! 作者の気まぐれと、受け狙いで意に沿わぬことがあったとしても!
次回予告!「あの娘がフロンガースに捕らわれた? イロイロエロエロな責めに負けるなエコブレイカー!」