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第一話

五分大祭に投稿させていただいた公務員戦隊キャリアンジャーをもとに手を加えて連載化しました。


別の作品になっていますが基本的なスタンスは変えていません。

 悪の組織フロンガースの環境破壊活動に対し人知れず日夜戦う部隊がある。


 それが環境省地球環境局環境保全部、通称環境保護戦隊エコブレイカーである!


第一話 地球の環境は俺たちが守る! 給料のために!

 1

「という組織があるんだが、花咲君、明日からそこのリーダーね」

「は? 課長。何の話ですか?」

 環境省と厚生労働省が入居する霞ヶ関合同庁舎5号館の最上階には袴っ娘好き御用達の馬車道がある。

 ランチにここへと課長に誘われたのは良いが、彼の口から飛び出した言葉は花咲にとって寝耳に水だった。

「いや、僕が悪かった。一から話をしないといけなかったね。環境破壊活動を行っているフロンガースという組織については知っているかね?」

 話について行けず、せっかくのハンバーグランチも味が分からない。いや、それ以上に編み上げブーツの袴っ娘のかわいらしさが味わえない。

「ええ、何でも怪人とかを作り出してあちこちで環境破壊活動しているとか……。許せません!」

「うむ、君のその正義感を僕は買っている。だからこそエコブレイカーのリーダーに強く推薦したんだ」

「その、エコブレイカーというのが分からないのですが……」

「フロンガースの怪人達と戦い、彼等の破壊活動を防止する組織だ。所属こそ環境省ではあるが、各省庁から出向者を集めて、縦割り行政の壁を打ち破ったプロジェクトだ」

「そんな組織に私が……リーダーで……?」

「テレビの戦隊物を真似て、5人で組織される。そう、リーダーの君はレッドだ!」

 二人とも食事の手はすっかり止まっていたが、何も叫びながら指を差さなくても良い、と花咲は思ったがそれ以上に言わずにはいられないことが一つあった。

「どうしてですか? 花咲みどり、という名前なのに! 環境省なのに! 女なのに! レッドに選ばれるんですか? ここまで条件が揃っていたら普通はグリーンでしょう?」

「花咲君。エコブレイカーは環境省の組織だよ。環境省の職員がリーダーにならなくてどうする! 大丈夫だ、各省庁から選ばれた海千山千のくせも……ゴホン! エリート達を束ねられるのは君しかいない!」

「今、曲者って言った! 本当は各省庁の厄介者ばかりを集めたお荷物組織なんでしょう!」

「あ、お姉さん。お勘定ー」

「ちょっと、課長! 聞いているんですか?」


 花咲みどり(24歳)環境省職員:レッド(リーダー)


 2

「ふ……この僕もついに霞ヶ関に務めることになったか……警察庁ではなく、環境省に出向というのが気になるが、構わない。僕の出世の足がかりにさせて貰おう」

 スーツ姿の男が合同庁舎5号館を見上げる。そばの日比谷公園から吹いてくる緑の風が肌に心地良い。

「環境省に出向? もしかしてお前も環境保全部の一員かいの!?」

 後ろからやたらと張りのある大きな声をかけられてゆっくりと振り向く。

「ああ、その通りだが……お前も、という言葉から察するからに君もそうなのかね?」

 そこには長身でかつ筋肉質の男が着慣れていない新品のスーツ姿で立っていた。

「いや~仲間がおって助かったわいや! この辺は疎いけんのう!」

「田舎者か……」

「あ? 何か言うた?」

「いや何も。それよりも君も環境保全部なら一緒に行くとしよう目的地は一緒なのだからね。僕の名は丹羽正彦。神奈川県警からの出向だ、君は?」

「ワシのう~今野海丸って言うんで。オヤジが海保好きじゃけん、イメージキャラクターの名前を付けるわ、ホンマに海上保安庁に就職させるわ……散々なんで。丹羽……ピーポ君じゃったかいのう?」

 丹羽は眉毛をぴくりと釣り上げて、メガネを抑えながら答えた。

「うみまる君……。君が自分の所属している組織のイメージキャラクターと同じ名前だからと、他人までそうさせるのはいかなものかね。それにピーポ君は警視庁。僕は神奈川県警。別物だ。良いか僕の名前は丹羽正彦だ。覚えておきたまえ」

「同じ警察やないか!ほいじゃぁ、マサピポ」

「くっつけるな!」

 今野海丸(26歳)海上保安庁より出向:ブルー(潜水担当)

 丹羽正彦(25歳)神奈川県警より出向:グリーン(法規担当)……あだ名はマサピポ(決定)


 3

「うん、ここの食堂のカレーはうまい。やはり金曜日はカレーを食べるに限るね」

 図体のでかい男がお腹をポンポンたたきながら部屋に入ってきた。

「あなたが、村上六十四むさしさん?」

 花咲が開口一番尋ねると、村上は満足げに頷いた。

「村上さん。昼食は結構ですが時間は守っていただかなければ困ります。いいですか? 私たちはこれから……」 お小言モードの花咲を横目に今野と丹羽がひそひそ話を始める。

「自衛隊は金曜日にカレーってホンマなんじゃのう」

「というか彼はイエロー……まさか、カレー好きというお約束をやってくることの方が僕は驚きだ」

 その会話にもう一人加わってきた。

「あら、でもレッドが女性というのはお約束から外れているんじゃないかしら」

「それが納得いかないんだ。リーダーはレッドは……そう、僕がふさわしい」

「じょじゃけど恵実よしざねさんのピンク姿は結構似合っとるのう」

 今野は恵実のヘルメットからマフラー、果てはミニスカ、ブーツと順番に視線を下してつぶやいた。

「やだ、海丸君ったら。めぐみって呼んで♪」

「あ、めぐみちゃん、ソックスからすね毛が飛び出てるよ」

 花咲から逃れるように村上が割り込んできた。

「やだ! 剃り残しなんて恥ずかしい!」

 突然丹羽は頭を抱えてうなだれた。

「もっと違うところを恥ずかしく思うべきだろ……オカマめ……」

「正彦君♪オカマじゃなくて、女・装・癖♪別物だから一緒にしないでね」

 そういってめぐ……恵実は丹羽に向かって投げキッスをした。


 村上六十四(28歳)海上自衛隊より出向:イエロー(狙撃担当)……カレー好き

 小峠恵実(32歳)東京消防庁より出向:ピンク(ヘリパイロット)……女装癖、妻子持ち


 4

「これで5人揃ったわね。今日は地球環境局長からの辞令交付があるため5号館に集まって頂きましたが、明日から活動の拠点は立川広域防災基地の一角に移りま……」

「ちょっとお待ちを!」

 突然扉が開き、白衣姿の女性がつかつかと入ってくる。突然の出来事に隊員たちにざわめきが広がりつつあるのを彼女は手で制して静けさを取り戻した。

「環境保護のために戦うなら、科学技術は不可欠! 文科省より出向してきたホワイトこと白石理智子さとこを忘れて頂いては困ります!」

 白石はピースサインを横にして額に当てるようなポーズを決めたが、部屋に沈黙が充満した。

「えーっと、というわけで、私達をサポートしてくれる白石さんです。ホワイトではありません」

「いいえ、ホワイトと言ったらホワイトです! 私、憧れていました! 戦隊の隊員になれることを! 今日はとてもステキな日です!」


 白石理智子:27歳:文部科学省より出向:自称ホワイト(装備・試験担当)


 ここに各省庁選りすぐりの曲者たちが集った。戦えエコブレイカー! 愛と友情と正義と地球環境とええっとなんだっけ? 何かそんな感じのもののために!

 次回予告!「早くもレッドとグリーンが? 交わされる視線に秘められた熱い想い!」


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