白雪姫
雪のように真っ白な肌をしたお姫様、白雪姫がいらっしゃいました。
とても陽気な性格ですが、友達は小鳥たちだけです。陽キャなのに人間嫌いで引きこもりなのです。
白雪姫の美しい歌声に惹かれて、無断で庭に入ってきたどっかの国の王子には
「おまえ不法侵入やぞ、通報するで」と言って追い返しました。
白雪姫は城の庭で歌うか、あつまれどうぶつの森でオンラインゲーム仲間と通信して遊びました。白雪姫はゲームの中ではコミュ力パネェので、ニンテンドースイッチのフレンドはいっぱいです。
白雪姫は継母が嫌いです。
この人はいつもしかめっ面で白雪姫が気くわず、WiFiのコンセントを勝手に抜くという地味な嫌がらせをしてくるからです。
そしてお城の地下でスライムみたいな色の液体を混ぜてブツブツ言っているので、とても薄気味が悪い。
継母は白雪姫の美しさをねたんでいました。テレビ通販で買った「Googleいらず!なんでも答えてくれる魔法の鏡」に
「世界で一番美しいのは誰?」と、聞くと「白雪姫」と答えたからです。
くそ!
美容に毎月課金しても白雪姫の肌になれない!
継母は白雪姫殺してやる、と思いました。でもどうやって殺すのか……殺してどうやって死体処理するのか。
考えるものの行動に出るのが遅い継母は、とりあえずWiFiルーターを壊してやりました。
「何やってくれてんねん! あつ森の釣り大会やったのに! もーーあんたとはやっていかれへんわ! 家出てくわ!」
白雪姫は継母に怒鳴り、家を出て森をさまよいました。繋がるWiFiを探していると小さな家を見つけました。
森を歩き回って疲れていた白雪姫は、勝手に家に入りました。そしてスマホを見るとWiFiが繋がるではありませんか。
個人宅のWiFiなのにパスワードかけてなかったんですね。
白雪姫はゲームの続きをやって、昼寝しました。
家の持ち主である七人の小人たちが帰ってきました。
「うわあ。すごい美少女が寝てるよ!」
「不法侵入で寝るとかすごい神経やな」
「とりまポリス呼ぶ?」
「お腹空いたから飯作るやで」
「寝顔撮ってXに投稿しよ、帰ってきたら知らん女寝てるヤバい、と」
「おれは今からニトリで布団買ってくる。
他人が寝た布団とか嫌やねん」
「おまえら何してんねん! はよつまみ出すぞ!オラァこの不法侵入女!」
小人たちが騒いでいると、むくっと白雪姫は起きました。そして小人たちを見てにっこりしました。
「勝手に家に上がり込んで寝てしまってすみません! すっごく可愛いお家だったんで上がらせてもらいました、失礼しましたほんまにぃ、いやぁ、しかしええ木材つこてはるええ家ですね。あらぁまぁもうインテリアセンスも抜群! この小さいベッドよく見たらちょっとずつちゃうデザインしてはりますね、まるっこいの四角いの、あーらもう、可愛いそんでまたこれが寝心地ええのよ。このマット、これええやつですやん、やっぱりベッドはね、マットレスが大事なんよね。いやぁほんま、わかってはるわ」
「ほんでね、わたし困ってるのよぅ。継母に意地悪されてね、嫌で嫌でたまらんくて。そんでね、わたし家事、全部やりますさかいに住まわせてくれません? こう見えてわたし、料理もお掃除も得意なんです、なんでか知らんけど歌いたながらやってたらね、動物が来て手伝ってくれますねん。あ、そや。得意の歌、披露しますわ」
「わーたーしー♬.*゜ ここに~~~住みたい~~~♬.*゜」
白雪姫の圧倒的なしゃべくりと歌に圧された七人の小人は居候を許可しました。
七人の小人たちはハイホーハイホーと鉱山の仕事をして、疲れて帰ってきたら白雪姫がおいしいごはんを作ってくれているので、喜びました。
白雪姫はあつまれどうぶつの森を、リアル森の中でプレイする面白さに気づきました。
継母は趣味の毒草集めに森へ行くと白雪姫を見つけました。
お姫様が城から出て自力で生きていけるわけないやん、と思っていたのに肌ツヤッツヤでさらに美しくなっている!
継母は嫉妬に燃えて、そうだ!
毒で白雪姫を殺す、と計画しました。
肌がボロボロになってじわじわ腐って死ぬという毒々しい発想で毒リンゴを完成させた継母は、老女に化けて小人の家を訪ねました。
「おじょうさん、おじょうさん、りんごあげましょう。わたしはこの近くに引っ越してきたババアです、お近付きの印に」
継母はニヤニヤしながら白雪姫に言いました。
「おう、パイ焼くとこやったから、ちょうど、ええわ。おおきに。どうぞどうぞ、入っておくんなはれ、パイすぐ焼けますから食べていっておくんなはれ。デパ地下で買った紅茶いれますわな」
「それはどうもおおきに」
継母は家に入りました。
しめしめ、毒林檎と知らずパイにして食べて醜い姿になる白雪姫を見てやるぞ。
「はい、どうぞ。ほくほくのうちにどうぞ召し上がれ」
白雪姫はパイを一切れ、皿に盛って継母に出しました。そしてじっと継母を見ました。
「どうぞ、食べてください」
「いえいえいえ、お先にお嬢さんが」
「わたし、お腹いっぱいなんで、おばあさんどうぞ」
「いえいえいえいえ、そ、そしたら持って帰らしてもらいますわ。私もお腹いっぱいで」
継母はジップロックにパイをいれて言いました。
「おい、継母やろ。そんなしょぼい変装で騙されると思ったか、りんご変な匂いしたぞ、毒入ってるのすぐわかったわ。ヌメヌメしとったぞ、りんご。なんやねんあんた、なんでそこまでうちのこと気に食わんのや、家出てんからほっといてんか」
白雪姫に詰め寄られ、継母はわーん!と泣きだしました。
「だってぇ!むかしは私、美人美人ってチヤホヤされたのにぃ、あんた私を超える美人だからぁ!」
「なんや、嫉妬か! あんたかて歳の割にはキレイな方やろ! めっちゃ努力してんもんな! あんたどうせ怪しいバッタもんの変なもん買ってんやろ。悩んだ時、わからんことあったらchatGPT聞いてみ」
<chatGPTの答え>
「『世界で一番美しい人』というのは、見る人や文化、価値観によって大きく異なります。美しさは外見だけでなく、内面や魅力も含まれるものです。例えば、歴史的に有名な人物や現代のセレブリティ、あるいは自分にとって特別な存在と感じる人が「世界で一番美しい」と思うこともありますよね。
あなたにとって、美しさとはどんなものですか?」
これを読んで継母はハッとした。
「そうか、私はすでに美しかった!自分で自分に美しいと行ってあげること! セルフラブ!」
この体験を継母は「継子の美しさに嫉妬して殺しかけた私が見つけた究極の美」という本を出版しベストセラーに、また毒を作れるなら解毒剤も作れる!と多くの解毒剤を作り毒キノコを食べた人を救い感謝されました。嫉妬で生きていた人生を恥じて、ルッキズムで悩む女性たちへ自分の美を見つける講座も開き大変人気となりました。
継母はこうして、真に美しい人となったのです。
さて、白雪姫ですが。
腹の上にニンテンドースイッチをおいてDIYしたハンモックで寝ていると、通りかかった王子にキスされそうになりました。
「同意のないキスすんな! ボケ! 二度と近づくなよ!」
と、王子をビンタしたのでした。
白雪姫は継母から感謝されて、ベストセラーの著者の印税をわけてもらっています。そのお金を貯金しながら小人たちの世話をして、ゲームできる暮らしが一番好きなのでした。
これもまた、美しく生まれた人のひとつの生き方。
めでたし、めでたし。