七夕
七夕の日、短冊におねがいごとを書くのはやめにしましょう。
それは、大人のすることではありません。7の数字の日は、あなたが必ず達成したいと思う抱負を書きなさい。
彦星と織姫が引き離されたのは、仕事をしないからではありません。
彦星と織姫は、どちらも職場の幹部でした。まずは会社に提案しました。
私たち夫婦は三年の育児休暇が欲しいです。
双子が生まれたので一年では育児休暇足りません。
不許可です。
まずもって、彦星は休む必要がありません。子育てはお金が沢山いります、働け。
彦星は家族を養うため、牛と鷹の能力をあげます。人間の上半身、下半身は胃袋が四つある丈夫な牛の体、鷹の翼と鷹の目をあげます。
彦星はキメラにされました。
鷹の羽で飛び渡り、人間のコミュ力で取引先の良い人材を誘い出し、牛の胃袋にいれてさらってこい。
会社には貢献しない者には給料やらん。
出張は嫌だ子供の成長がみたい?
それはおくさんの織姫の仕事、彦星は働きなさい。
こうして、彦星は各地を飛び回る人さらいの鷹になりました。
織姫、おまえは産むから仕方ない。
一年、育児休暇をやる。
しかし、おまえはこれ以上出世できない。仕事に戻ってきたら、一年休んだ分の仕事をしてもらう。できないならば退職です。
そして女の子と男の子の双子を、良い子に育てなさい。家はほこりひとつなく、シミひとつなく洗濯してフロを沸かし栄養があっておいしいごはんを、用意しなさい
こうして織姫は、鬼母になりました。
鬼忙しい。織姫はひたすら働き、双子を育て、家のことを完璧にしなくてはならず、手が何本あっても足りず、猫の手をかりようとしました。
「おくさん、あっしは黒猫でございますゆえ」
猫は、魚くわえて逃げ出し、おくさんはほうきを持って追いかけました。
黒猫がぴょーい、と飛んで。
おくさんは、ほうきにまたがって飛び、ねこをつかまえました。
こんなこんなで、いっぱい、いっぱい。
お互い、まず唯一の二人が休める日の、七夕に再会してもお互いぐったり疲れきってる。
信頼しきった愛する伴侶です。つい、本音を話したくなる。出るわ出るわ愚痴。
愚痴はね、これは終わらない戦争なんです。
どれだけ男の子と女の子の育児が大変で家事に手が回らないか織姫が話すと。
馬と鷹と人間を合わせた彦星は、舌が疲れきって動かない。舌を商談に使いすぎた。
モーーー
と鳴くしかないのです。
それに織姫は腹が立って仕方なくて怒る、ケンカになる。
まくしたてる織姫、モーモー鳴いて牛の足でドスドス!してる彦星。
双子が遊んでると勘違いしてきゃっきゃとはしゃいでまとわりつき、相手をしている間に疲れきって、彦星と織姫は手を繋いで眠るのです。
ご覧の通り。
こんなにも愛し合ってるのに、双子の次を作る暇なんて、ありゃあしない。
ね、こんなぐったり疲れきって、働いても働いても、四畳半で四人暮らしのかわいうな人たちにむかって
好きな人と結ばれますように!
って、言いに行くの?
ピンポン押しておしかけて、そんなこと言うの?
およしなさい、大迷惑。
君と、君の好きな人が百年続きますようにと本気で願うなら、まずは育児の革命をおこしてあげなさい。
あなたの我慢が実で結んであげなさい。
ここで変えておかないと、人間の数はどんどんへりますからね。