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うさぎと亀

 むかしむかし、ある森に。

 くそ迷惑なうさぎがいました。

 うさぎは昼夜問わず走り回り

 

「あそんでよ、かけっこしようよ!」

 

 と絡んでくるのです。体力が異常で走って遊ぶのが大好きで、そしてやっかいなのが負けず嫌いです。

 かけっこに負けたら、勝つまで

 

「もう一回、もう一回かけっこしよ!」

 

 と、しつこく周りを飛び回るのです。

 森の動物たちは、みんなうさぎに負けたふりをしました。

 

「うさぎさんには勝てないよ。君ってば、遊んでばっかりかと思いきや、すごい努力家なんだよね。四つの足で走るだけじゃない。二足歩行で走る、さらに耳でも走れる。耳で走れる動物はいないね」

 

 そうやってうさぎをおだて、やれやれ、とうさぎの気分をよくしました。

 うさぎは有頂天になって、自分はこの世界で一番走るのが早いんだとうぬぼれました。

 森のみんなが寝静まった時、カメが海からやっきました。初めて見る動物に、ヒャッホーとうさぎは飛び付きました。


「おれと、かけっこしようぜ!」

「いいぜー」

「いえい、スタート!」

「すたーと」


  ビュン、と走ったうさぎ。

  ビュン、と走って戻ってきました。

  カメが、あまりにもノロマだからです。


「なんてすごい、のろまなんだー! おまえみたいなノロマは初めてだよ。よく海からやってこれたな。おれの早さを少しは分けてやろう、ほーらお手本だよーん」

 

 うさぎはかめをゲラゲラ笑い者にして、ダッシュとゴール繰り返しました。

 かめは、ひたすらゆっくりと確実に前に進みました。

 

「やれやれ、こんなにノロマとは。ハンデとしておれは昼寝をするぜ」

 

 そう言って、疲れたうさぎはこてん、と寝てしまいました。そこに森中の動物たちが集まって交代で子守唄を歌い寝かしつけました。

 

 うーん、よく寝たなあ。

 うさぎが目覚めると、お日さんが登っていました。

 

 亀は、ゴールしていました。


「おれは、のろまだけど、必ずゴールにたどりつくんだ。自分は誰よりも早いと吹聴してまわってると、目立って目をつけられて、ひどい目に遭う。君がすごいのは、君がすごいからじゃなくて周りが優しいからさ。人を馬鹿にしてと、すぐ上にある危険に気づかないよ」


 うさぎは上を見ました。頭の上の耳はずいぶんと長くなって、とても目立っていました。そしてなにやらぷくぷくとおいしそうです。

 それは、森の動物たちが子守唄を聞かせたので、耳が肥えてしまった。

 

 人間やってきて、こりゃうまそうなうさぎだと、耳をひとつかみにして、連れ去りました。


  やれやれ、やっと静かになった。


「どんなに自分がすごくても、努力して一等賞でも。初対面の人間の劣ってるとこだけ見て、笑ってはいけないよ。痛いしっぺ返がくるさ。

 そして人間のおまえさんたち、運よく耳までうまいうさぎを獲って食ったからって、いい気になってはいけない。おれは人間よりも長生きだ。年長者のいうことは聞くもんだ」


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