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疑念の影

燃え上がる倉庫からの脱出の余波で、グループは訓練施設の周辺に散らばっていた。外の空気は冷たかったが、ミッションのアドレナリンはまだ完全には消えていなかった。徹は木にもたれて座り、先ほどの出来事を思い返していた。


楓は生きている。全員が生き延びた。しかし、混乱の中での彼女の冷静さが、徹の心に引っかかっていた。


「なんで彼女はためらわなかったんだ?」彼は震える手を見つめながら呟いた。


「大丈夫か?」将司の声が徹の思考を遮った。彼の大柄な体が隣に座り込む。普段は安定している彼の表情が、今日は何か考え込んでいるようだった。


「ああ…たぶん。」徹は答えたが、その声には確信がなかった。


将司は彼を横目で見た。「楓のことを考えてるんだろう?」


徹は驚いて顔を上げた。「何を言ってるんだ?」


「彼女は違う。」将司は簡潔に言った。「彼女は何かを隠しているみたいだ。」


徹が答える前に、楓自身が現れた。訓練場の薄明かりに彼女のシルエットが浮かび上がり、いつものようにその表情は読み取れなかった。


「二人ともお喋りは終わった?」彼女は冷静に言いながら腕を組んだ。


将司は慌てて立ち上がり、後頭部を掻いた。「ただ…戦略について話してただけだよ。」


楓は眉を上げたが、それ以上追及することはなかった。そして彼女は徹に目を向けた。「さっき、君はためらった。」


その指摘は、思った以上に痛かった。「俺は…その…銃弾が飛び交ってて、火も…」


「言い訳はいらない。」楓は遮った。その声は鋭かったが、冷たくはなかった。「ここで生き残りたいなら、すぐに決断することだ。ためらいは命取りになる。」


彼女が立ち去った後も、その言葉は空気に残り続けた。


その夜遅く、徹は食堂で一人になっていた。冷めた食事は手つかずのままだった。楓の言葉が頭の中で何度も繰り返され、そのたびに胸を刺すような感覚がした。


「彼女の言う通りよ。」


徹は椅子から飛び上がりそうになった。現れたのはリカだった。グループの中でも静かな方の彼女は、暗い髪を後ろにまとめ、鋭い目で彼をじっと見つめていた。


「疑念に飲み込まれちゃダメ。」彼女は続けながら向かいの席に座った。「楓は厳しいけど、間違ってはいないわ。」


徹は長いため息をついた。「それだけじゃない。彼女には何かある…何かを隠してる気がする。」


リカの表情は変わらなかったが、少しだけ身を乗り出した。「もし隠しているとしても、それには理由があるはず。知らないことより、今自分ができることに集中しなさい。」


その言葉はあまり慰めにはならなかったが、徹の中で何かが芽生えた。それは、成長し前に進むための決意だった。


時計が真夜中を告げるとき、徹は静かに楓の真実を突き止めることを誓った。それが自分の恐怖と向き合うことになったとしても。

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