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あへがおの観察日記

作者: 職員M

7月21日

今日から夏休みです。宿題がいっぱい出て大変です。

中でも自由研究が大変です。何が自由なのか分かりません。宿題をやらない自由もあるのではないかと学校で自由運動を呼びかけたところ、30人ほど同志が集まりましたが、お母さんを学校に呼ばれてお母さんといっしょに怒られて解散させられました。そのあとお母さんにも怒られました。僕は納得していません。



洗たく物をほしているお母さんに自由研究が分からないと言いました。するとお母さんは、あへがおの観察日記でもつけなさいと言いました。


あへがおって何? と聞くとお母さんはしまったという表情を一しゅん浮かべると、顔をそらしながら言いました。「あさがおみたいなもんよ」


あさがおは学校で育てているので、お花の種類なのかなと思いました。



勉強するから貸してと言った僕は、お母さんのiPhone10を使ってあへがおと検さくしました。



大変なことになりました。



[個人的所感:大変きたない]



7月30日

それからお母さんに自由研究の宿題について一切を口にしないと心に決めました。子供から自由研究の宿題について聞かれた時に、とっさにアヘ顔と答える親を持ったことを後かいしています。


でも一応観察日記なので毎日観察はしました。一見すると同じように見えるアヘ顔も、本当にきたない物もあれば背景の美しさからかまだ見れた物もあるというように様々でした。僕はアヘ顔もおくが深いのだなと思いました。



読書感想文という宿題もあったので図書館へ行きました。

読みたい本がとくに無かったので、パソコンでアヘ顔と検さくしました。


すると一冊だけあるようで、僕はとりあえずその本を探して読みました。


とてもむずかしい漢字ばかり使っていたので、漢字辞典も一しょに使いながら読みました。

むずかしすぎてよく分かりませんでしたが、僕もいつか"あたみのたこつぼ"に行ってみたいなと思いました。

とりあえず読書感想文の本にするのはやめておきました。


アヘ顔にはダブルピース(僕が写真をとられる時によくするポーズでした)をセットにするのが基本だということを知りました。なぜアヘ顔とダブルピースはセットなのかとても気になりました。



[個人的所感:読んだ本がすごかった]



8月15日

おじいちゃんの家に遊びに行きました。おぼん休みということでお父さんも一しょに行きました。

おばあちゃんともいっぱいしゃべりました。ちゃんと宿題はやっているかい? と聞かれて思わずアヘ顔の観察日記に苦戦しているともらしそうになりましたが、ギリギリのところであさがおが上手く育っていなくてと言いました。

お母さんは僕に感謝するべきだと思います。


それなのに、お母さんと二人きりになった時に、先の一件でアヘ顔なんて検索するんじゃありませんとまた僕に怒りました。僕は納得していません。




最初に見た時はエッチな絵でドキドキしましたが、顔を見てそんな思いは吹き飛びました。僕が見てはいけないというのは分かりました。

それ以降はしっかりと"研究対象"としてアヘ顔を観察することが出来ています。

口角の角度、舌を出す出さない、涙目か号泣か、ピースの指は伸びきっているか第一関節を少し曲げているか。鼻水を出す出さない。よだれを出す出さない。

それは各資料により異なりました。


しかし僕は根本的な疑問を解決することが出来ていませんでした。



[個人的所感:アヘ顔ダブルピースに至る過程が不透明。ヒト科の日常生活を運営していく上での突発的事象としては考えにくく、肉眼での観測は資料のみである]



8月29日

行き詰った僕は酔っ払ったお父さんとお風呂に入っている時に思い切って尋ねました。

「どんな時にアヘ顔ダブルピースをするの?」


お父さんは聞き間違えたと思ったのか今なんとと聞き返してきましたが、僕が同じ質問をすると頭を抱えました。

お前にはまだ早いというお父さんはアヘ顔ダブルピースについて知っていそうでした。


僕はお母さんがあへがおの観察日記を付けなさいと言ったこと、iPhone10でアヘ顔について全てを知ったこと、図書館で半端では無いアヘ顔に関する書籍を目にしたこと、これまでの観察と洞察についてお父さんに話すと、僕が半端な気持ちでこの研究に向き合っているわけではないことが伝わりました。

お父さんは言いました。


「お前に真実を話す。まず結論からだが、それは禁じられた研究だ。宿題として出すわけにはいかない」


僕はこれまでの努力が水の泡になる絶望と、禁じられた研究という言葉への興奮の間でとても複雑でした。


その夜お父さんと話したことは決して忘れることはないでしょう。



9月1日



あさがおの観察日記


7月21日、肥料を付与した土より既に蔓が伸びた状態であったことから支柱を植える。今後の成長を期する。

8月15日、開花する。この状態はアヘ顔とは言い難いが9分といったところだった。午前7時15分、日の出からしばらく経った後に花弁が最大限まで開き、雄しべと雌しべの露呈を確認した。

ここだった。これこそがアヘ顔であり、見えないダブルピースが筆者には観測できた。

8月29日、あさがおの次世代が誕生する。この種を保存し、来期に再度アヘあさがおを観測するものとする。



[個人的所感:あさがおという題材から世代を受け継ぐ生き物の姿と、その過程の重要性を知ることとなり生物学への知的好奇心が刺激される良い機会となった]


[講評:明後日の保護者懇談会に来てください。お話があります]



僕は先生とお母さんにしこたま怒られました。僕は納得していません。



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