救世主か?それとも…
…おい、お茶を出してやらんか。
お茶が出てきた。大きな部屋の真ん中に私がいる。
ポツンと座っている。周りを大柄から小物まで大小揃った男たちがこちらに向けてガンをとばす。
誰がどう見ても重たい空気だ。冗談が通じないだろうかと雰囲気で私は勇気を振り絞り口を開こうとした。
あっ…。
お前さん、出身は?
え、あ、えっと…中野です。
へえ。東京かね。そりゃあ親御さんも困ってるんじゃねえのか。
いや、両親は死にました。
そうなのかい。そいつはよかった。
私は心の中で問いかけた。
そいつはよかった…?
なぜだ?なぜその発想になる?でも不思議だ。
その発言に対して何にも不信感もない。怒りもない。
いや、これは失礼。でも、両親がいないってことは一人で生きられるって話だ。この若さで一人ってのは、自然と己が強くなる。
おまえさん、保護者は?
あ、親戚が。弟と共に住んでます。
そうかそうか。
このおじさんにはなぜか全て話せた。
そして、全てを話すと私は何かのゾーンに入っていたのだろう。我にかえる。
周りの男たちは皆涙目だ。
こいらはみんな、似た境遇じゃ。おまえさんほど若い子はいなかったがな。
よし!おまえさん、そんな環境なら窮屈じゃろ。
わしの養子にならんかい?
その時、なぜか視界が広がり、目の前に明るい光が差して見えた。
私は即答してしまったのだった。
これが、私がこの世界で生きるようになったきっかけである。