男爵令嬢ルルーリアのお話3
視察は順調に進みました。なぜかというとレオニダスにはあまり重要ではないお仕事が王族のお仕事として割り振られているからです。それに有能な部下が一緒に行っていたので視察の大事な部分はその部下がしっかり行いました。
しかし、視察からの帰り道に問題が起こります。レオニダスとルルーリアの馬車が襲われてしまったのです。馬車には火が放たれてしまい、2人は護衛騎士たちに守られて馬車の外に逃げました。
襲ってきた相手は中々手ごわい相手で騎士たちは手こずっていました。それに護衛対象が王子1人ではなく、ルルーリアも守らないといけません。
「きゃあっ」
ルルーリアが放たれた矢に驚いて護衛騎士の1人に抱きつきました。
その隙を襲撃者たちは見逃さずに斬りかかろうとします。
『なんだか怖いわ……』
『このシーンは飛ばしましょうか?』
『そうね……だって手ごわい相手ってことは自分の娘を王子の妃にしたい貴族がやとったんでしょう? それとも……まさか王妃さまがやとったのかしら……』
『お嬢様、けっこう黒い展開を考えますね。ではこのシーンは少し飛ばしてお話しましょう』
レオニダスとルルーリアはなんとか無事に王宮まで帰ってきました。
でも、ルルーリアに抱きつかれて思うように護衛ができなかった騎士はひどい怪我をしてしまいました。腕と背中を怪我してしまったので、その護衛騎士はもう剣が握れなくなってしまいました。
王妃さまはまた大変怒りました。レオニダスが勝手にルルーリアを一緒に視察に連れて行ったこともですが、ルルーリアの軽率な行動で1人の護衛騎士の将来を潰してしまったからです。
レオニダスとルルーリアは部屋で謹慎を言いつけられました。お互いに会うことは許されず、ルルーリアはお勉強、レオニダスはお仕事です。
ちなみに、王家からその護衛騎士にはたくさんのお金が支払われました。
謹慎して1週間ほど経った頃、レオニダスは王妃さまに呼ばれました。
部屋に入ると、王妃さまは大変不機嫌な様子です。
「この手紙はどういうことでしょうね」
それはレオニダス宛にある貴族令嬢から届いた手紙でした。王妃さまはその手紙をぽいとレオニダスの足元に、まるで汚いものの様に投げ捨てました。
レオニダスは母親のその行動に驚きながらも手紙を拾い上げます。
そこには、「こちらは約束を守ったのだから、我が家に融通を利かせるか、私を側妃に召し上げろ」といった内容が書かれていました。
レオニダスの顔色が悪くなるのを見て、王妃さまは深い深いため息をつきました。
『王子さまはどうなるのかしら? はいちゃく? しょけい?』
『お嬢様、最終手段を最初に持ってくるのですね』
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