真っ赤なお化けはうつむいて
ある所に神社がありました。
その神社は豊穣の神を祀っていて、境内には御神木の大きな松がありました。
その神社に時折、真っ赤な化け物が現れました。
その化け物は、生皮を剥がされた様に真っ赤で、大層気味悪がられておりました。
お祓いなんかもされましたが、それでも時折現れました。
ある日、一人の女の人が、膝を抱えて座り、顔をその膝にをうずめている化け物を見つけました。
その化け物は今まで、見た目の割に何も悪さをしなかったので‥‥ 彼女は、何があったのか訪ねました。
聞けば、近くの子供達に石を投げられた様でした。
姿が赤くて気付きませんでしたが、なるほど石の当たったであろうところから、血が滲んでいました。
かわいそうに思った彼女は、今は使われていない山小屋へ化け物を連れて行きました。
そしてムシロを敷いて寝かせ、濡らした布で傷口を丁寧に拭きました‥‥ その折に化け物の、お腹の虫が鳴きました。
彼女は家から食べ物を持って来ました。
化け物は申し訳なさそうに頭を下げ、おずおずと箸を進めました。
それからも彼女はこまめに山小屋を訪れ、食べ物や、とりあえずの着る物などを持って行きました‥‥
そしていつの間にか‥‥彼女は陰口をたたかれる様になりました。
やれ化け物に会っているだとか、汚らわしいだとか、その外にも色々と‥‥‥ それでも彼女は、化け物に食べ物を持って行き続けました。
ある日、いつもの様に山小屋を訪れると‥‥‥そこには、目を見張る様な美男子がおりました。
何者なのか彼女が訪ねると、あの化け物だと言うのです。
彼は、御神木に宿る神様でした。
人の姿に興味を持ち、人になろうとして‥‥最後、肌が出来上がるその前に、人に見つかったのが、事の成り行きでした。
神様は、彼女の家の田畑を手伝いたいと言い出しました。
断りきれずに、神ということを伏せて家まで連れて行くと、彼女の父がどうしたものかと、胡散臭さげに首を捻りました‥‥が、男手が欲しかったのは正直なところ。
結局手伝うことになりました。
ただ彼を見る、村の人の目は冷ややかでした。
彼の手の入った田畑は、毎年どこもかしこも大豊作でした。流石は豊穣の神です。
ある年、彼が、来年は冷夏になるから米をやめて蕎麦にした方がいいと言い出しました。
半信半疑で半分ほど切り替えたその年‥‥彼の言う通りになりました。
またある年は、旱魃が来るから根菜を植えた方がいいと言いました。
そしてそれも、その通りになりました。
噂は広がり、彼を見る目はすっかり変わりました。まるで手の平を返した様に。
そしてその見た目もあって、村の女性たちは色めき立っていました。
ある日、神様は告白をされたそうでした。
村でも評判の美人の娘です。
彼女は神様に良かったねと言いました。
‥‥でも神様は、断ったと言いました。
そして何かを彼女に差し出しました。
それは一本のかんざしでした。
端には、綺麗な琥珀が揺れています。
その琥珀は、神様が御神木として生きた永い年月がはぐくんだ、とても貴重なものでした。
そして神様は、秘めていた淡い恋心を彼女に告げました‥‥‥
‥‥‥そのかんざしを彼女が受け取ったかどうか
それはまた、別のお話。




