戦闘
夜の森の中で、一人の少女が目を覚ました。
彼女は目を開けて、自分の置かれている状況を把握しようと周囲を見渡した。
視覚よりも先に手首の感覚が、自分が縛られていることを伝える。
上を見ると、天井から垂れ下がったロープが自分の両手首を一纏めに縛り上げているのがわかった、かろうじてつま先が地面に擦るか程度に自分の体もまた、吊るし上げられているようだ。
薄暗い…なにか小屋だろうか、古く木造の建物の中に自分はいるようだ。
そしてなにより、彼女を恐怖させたのは…自分が、全裸であるという事だった。
「な、何で…」
心の恐怖と困惑がそのまま口を突いて吐き出されたようだ。
こんな心当たりのない場所で、何処かもわからない薄暗い小屋の中で、自分は『全裸』で吊るされているのだ。
気絶で霞がかかっていた頭が、恐怖と寒さから生まれた冷気で少しずつ冷めてゆくの同時に、そこから生まれる冷静か思考が答えをはじき出す。
どうやら自分は何者かに気絶させられ、この小屋に運び込まれたようだ、つまり誘拐、監禁。
(た、確か友達の家から帰る途中…森の横を通りかかって、それで…
それで、その時に、確か、森から出てきた黒い影にお腹を殴られた、ような…)
思い返すとそうだった!一瞬の出来事、かつ腹部への衝撃で意識と同時に認識も一時的にトンでいたみたいだ。
(逃げないと……!)
裸で吊るすような相手だ、自分が何をされるか嫌でも想像がつく。
弄ばれ、嬲られる…レイプか暴行か、あるいは両方だろうか。
なんとか逃げなくちゃ、犯人が帰って来る前に。
彼女がそう決心した、まさにその時だった
犯人、いや『人』でない、蛇の頭をした、二足歩行の化物が、小屋の中へ入ってきたのは。