ビターチョコ
チョコレートはいっときの祝福の味。
溶けて消えてしまえば、終わってしまう。
だから、もう一度食べたくなる。
大粒のチョコレートを一口で食べる。
口からも鼻からも広がっていく甘さ。
あぁ、なんて幸せな時間だろう。
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「君の幸せを思えばこそ、ここまでなんだよ。」
君が最後に言った言葉。
幸せなんて他人が決めるものでないのに。
ずっとそばに居たいと願う私を尻目に
君はこの物語に終わりを決めた。
秋の昼下がり、夏も過ぎ涼しさが包む。
日本に生まれて四季を感じられることに感謝をしたくなる、そんな季節だ。
その夜、君が仕事を終えて帰宅する。
「今日は給料日だから、好きだって言っていたチョコレートを買ってきたよ!一粒200円だなんて高価だ!」
明るい声でただいまの次に言った言葉。
私は満面の笑みでそれを受け取る。
「今、コーヒー入れるから一緒に食べよう!」
2人の疲れを癒す最高の時間。
ドリップしてる間、君がコーヒーの香りにつられるように背中にくっつく。
「いい匂いだ。」
「そんなにくっついてたらコーヒーが上手く入らないよ。」
コーヒーの香りが2人を包み込む。
コーヒーを用意し、2人で選んだテーブルに腰をかけチョコレートの封を開け、口に投げ込む。
「好きだって言ってた意味がわかった気がする!とっても美味しいね!」
もぐもぐとさせながら笑う君。
サラダ記念日ならぬ、チョコレート記念日だ。
っと一人で含み笑いを浮かべてしまった。
コーヒーでチョコレートの甘さを流し込む。
チョコレートは一瞬で溶けてしまう。
だからこそ、愛おしいのかもしれない。
その日のキスはいつも以上に甘く溶けてしまいそうで、君との境界線もなくなっていきそうな夜だった。
チョコレートは溶けて消えてしまう。
人魚姫も泡になって消えてしまう。
君の中の私もきっと消えてしまうのだろう。
そう確信させる君の最後の言葉。
理由は分からなかった。
きっと、知る勇気すらなかったのだろう。
君との甘い時間はチョコレートのように消えてった。
そして、君に会いたいと思う。
秋の夜長を1人過ごす度に思い出す
チョコレートの味は、少し苦いビターチョコ。
最後までお読みいただきありがとうございました!
このお話は個人的には、チョコレートとコーヒーの擬人化な感じです。(お恥ずかしい…)
癖になってやめられない組み合わせですよね。
やっぱり、お互いに欠けているからこそ惹かれ合う。
いや、持っているものに惹かれ合うのかもしれません。