【宝石回路〜彼女と御名の戯れ〜】
台本タイトルは
【ジュエリーコード〜かのじょとみなのたわむれ〜】と読みます。
宝石回路シリーズ 第九話
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♂1:♀1:不問1
アテナ・ヘリオドール ♀ セリフ数:18
〈暗殺隊隊長。嫌いなものは嫌い。だけれど、生きている限りそういうものがあっても仕方ないと思っている〉
アスクレピオス 不問 セリフ数:23
〈医療団団長。いつの間にか宝石回路に居た。知的生命体を解剖する趣味がある〉
イクシオン・ラブラドライト ♂ セリフ数:11
〈暗殺隊副隊長。気分屋な隊長の代わりに隊をまとめる事が多い。クロノスの代から宝石回路に在籍している〉
[あらすじ]《8分程度》
彼は。自分の世界が欲しかった。誰にも。邪魔をされない世界。奪って。作り上げたはずのそれは。かつて憧れた。手の届かない存在に。奪われ。壊され。そして―――。
【イクシオンN】
ゼウスは総てを掬おうとした。
無理だ? 幻想だ? いいや、そんな伽話を、いとも簡単にやってのけてしまうのが、彼であったからか、誰も、何一つ、反対などしなかった。
だから驚いたのだ。
“救えなかった”。そう言って血を吐く勢いで慟哭するゼウスに。
あのゼウスが?
前統治者など眼中にも無いような振る舞いをして、
宝石回路のメンバーの願いを順に叶え、
吾々を馬鹿げた宗教だと笑い飛ばした政府連中を地の底へ落とし、
あの、
ウラノス・ダイヤモンドすらも屠った吾らの神が、“失敗”などあり得ない。
だが、それは本当で、覆りようもない事実で。
耳を塞いで、目を覆って、見ない振りをしたかったけれど、その“失敗”を誰よりも受け止めたのは、他でもないゼウスだったから。
だから吾らも、いつか昇華出来るよう、その“黒歴史”を共に抱えていくと誓ったのだ。
だからこそ。
それを世に晒そうとする奴らを、吾らは決して許しはしない。
✽
【アテナ】
まだ動いちゃ駄目みたいだしぃ、あの基地ぶっ壊しちゃっていいよねぇ。
【アスクレピオス】
勝手に動いて、勝手に死ぬなら好きにしろ。ワタシは止めないし、治さないがな。
【アテナ】
うっげぇぇ。聞いてたのかよ、ヤブぅ。
【アスクレピオス】
お前の娘の片割れ。その下半身を繋ぎ合わせてやったのは誰だと思ってる。
【アテナ】
ふふん、それはそれぇ。これはこれぇ。
感謝はしてるけどぉ、それを継続させるほどの恩は感じてな〜い。
【アスクレピオス】
………。まあ、お前に感謝されずとも構わないがな。
それよか、ソチラの神様は元気か。
【アテナ】
はぁ? “ソチラ”って何の話ぃ? 下らない話を始めようってんなら、その頭潰してあげてもいいよぉ?
【アスクレピオス】
ふっ、しらばっくれ方がアイツにそっくりだ。……ソチラでは『メルクリウス』とでも呼ばれている、アイツのね。
【アテナ】
はぁ………っ!? 何でお前如きがその名前知って………!!
(自分の失言に気が付いて)
、あ……!?
【アスクレピオス】
くく、はははははっ!! 馬鹿は、やはり馬鹿だな。知らない振りをしていればいいものを。自分の“知っている話”を他人に教えたくて堪らないんだろう?
くく、『馬鹿』とは自分の発言が相手にどう作用するかなど、さして考えもしない生き物だからな。
【アテナ】
…………お前、何者?
【アスクレピオス】
ただの『アスクレピオス』だ。
【アテナ】
…コッチの話してんじゃねぇ……!
アッチのお前は誰だって聞いてんだ!! あンの忌々しい男も知れなかった、来れなかったアッチを、何でお前は知ってんだって聞いてんだよ!!
【アスクレピオス】
ふむ、後半は聞かれてなかったと思うがな。まあいい。一つずつ教えてやろう。
アチラ側にはな、ワタシと同一の存在は居ないのだ。
【アテナ】
………は? そんな事あっていい訳ぇ………? 同一が、居ない…?
【アスクレピオス】
まあ、ワタシと同じ役割の奴は居るがな。
ワタシの対であり、ワタシの裏面は存在しない。…馬鹿には少し、分かりづらかったかな?
次の質問に答えよう、何故アチラを知っているか、だったな。
叔父が教えてくれたのさ。善と悪の区別もつかぬ小さな頃にな。
【アテナ】
………。
じゃあ、『アスクレピオス』。
お前らにとっての『クロノス』って何ぃ?
【アスクレピオス】
父の愛を望み、父の世界を欲した、哀れで、愚かな、世界の均衡を乱した者。
【アテナ】
………じゃあ、『愛い子』は?
【アスクレピオス】
掬いから零れた者。…いや、そもそも彼女は“救い”など欲してなかった。
総てを掬おうとした、勘違い野郎を跳ね除けられた、唯一。
【アテナ】
…ふ〜ん、大体分かったぁ。
じゃあこれが最後の質問。
『メルクリウス』はぁ〜?
【アスクレピオス】
(ニヤリと笑って)
我らの敵。
【アテナ】
そっかぁ♡ じゃあ〜♡
(一切の感情を無くして)
死んで。
【イクシオン】
……お前が『馬鹿』で良かった、アテナ・ヘリオドール。
【アテナ】
(後ろから胸を貫通するナイフを見て)
ア゜…………………? ぐ、ぅ……?
(血を吐いて)
ぐげぼぉ………!! テ、メェ………! イクシ、オオォォォォンンン!!!!!!
【イクシオン】
おかしいな、確かに核は潰したはずだが。まだ動けるのか。
【アスクレピオス】
間に合ってくれて良かった。
ワタシ、戦闘はからきしだからな。
【イクシオン】
お前諸共串刺しにしたかったが、半歩分足りなかったな。
【アスクレピオス】
おお、怖い怖い。
【アテナ】
(苦しみながら)
て、めぇ…ら!! 最初っから組んでたって訳ぇ…!? いつもと、変わらねえ任務だってのに……! ぐ、ぅぅ……! お前が着いてくるっつった時点で……! おかしいと思うべ、き…だった…!!
【アスクレピオス】
おや、まだ生きてる。お前の核は胸にあると、アルテミスが教えてくれたんだが…、誤情報だったか?
【アテナ】
は………? なん、で、アル、テミ、ス……?
【アスクレピオス】
(首を傾げていたが、合点がいって)
………? ……ああ!
お前は知らなかったなぁ、そう言えば。
そうかそうか。知らなかったか。元はと言えば、お前が撒いたタネなのに。
【イクシオン】
おい、あまり近付くなよ。
お前に怪我をさせるとアイツが五月蝿い。
【アスクレピオス】
これは失礼。
叔父はワタシに甘いからな。
いや、ワタシが死ぬと生き返った自分も死んでしまうから、かもしれないが。
【アテナ】
おい!!! ぐ、ぁぁ……! 言え、よ……ッ! アルテ、ミスが…!! なんッなんだよッッ!!
【アスクレピオス】
ふふ、まあそう急くな。
この情報は冥土の土産にしてやろうな。
(囁くように)
アルテミスはな、自分の名の本当の意味を知っているぞ。
【アテナ】
は…………ッ!?
【アスクレピオス】
知った上で、誰に味方すべきかも、ちゃんと分かっている。
名前というのはな、アテナ。“魂”なのだ。この世界を生きていく中で、せめて縋れるようにという意味を込めて付けるモノなのだ。
世界中が敵になっても、暗闇で一生を終える事になっても、名があればワタシ達“ウヴラ”は生きていける。縋れる場所があるのだから。
それをお前は潰したんだ。自分の都合をアルテミスに押し付けて、素知らぬ振りをしたんだ。
アテナ、お前は自分の『馬鹿』のせいで死ぬんだ。
大丈夫。お前の可愛いアポローンとアルテミスは、ワタシが面倒を見てやるよ。
【アテナ】
あ、あ、あ、…ちが、う…ちがうちがうちがう、ちが、……………ぁ。
【イクシオン】
……やっと死んだか。しぶとかったな。
【アスクレピオス】
………………。
【イクシオン】
最後のアレは、説教か?
【アスクレピオス】
…そんな、慈愛に満ちたものではないさ。
(一気に空気を変えて)
ところでこの死骸くれるんだろう?
【イクシオン】
そんなモノの何が良いかは知らんが、欲しいのならくれてやる。痕跡は残すなよ。
【アスクレピオス】
誰に言ってるんだ。医療団団長のアスクレピオスだぞ。
核が潰されても、即死しなかった貴重な個体だ。趣味が捗る。
【イクシオン】
…悪趣味め。
……5日後に帰還だ。それまでにお前の叔父に伝えておけ。
【アスクレピオス】
何を?
【イクシオン】
『メルクリウス』殺害までは協力するが、それ以降は関与しない、と。
【アスクレピオス】
はははっ、モチロン。最初からそのつもりだ。
【イクシオン】
なら、いい。
STORY END.




