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三人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
35/48

【宝石回路〜棄てる仏あり〜】

台本タイトルは【ジュエリーコード〜すてるほとけあり〜】と読みます。


宝石回路シリーズ 第六話

グロ表現のある台本です。


台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂2:♀1:不問0


 コイオス・ルビー ♂ セリフ数:16

惑星わくせい調査隊副隊長。宝石回路(ジュエリーコード)に戻ってきてからも、度々別惑星へ出向でむいて調査をしていた。一族の中で一番ルビーの血がい〉


 レアー・ダイヤモンド ♀ セリフ数:19

〈ゼウスの母。クロノスの妻。潔癖症でちょっとメンヘラが入っている。“あの子”の為に生きてきたけれど、やっぱり“あの子”はちょっと違うかもしれない〉


 ※※※※・※※※※※ ♂ セリフ数:17

めいのおかげよみがえった。今回はナレーションにてっするようだが…?〉


[あらすじ]《8分半程度》

 “ウヴラ”の住まう惑星わくせいから数光年離れた、水を多くふくむ惑星へ降り立ったコイオスは、真上に広がる宇宙の星々をながめながら溜息ためいきを吐いた―――。









【コイオス】

 ……、ここも異常なし…。

 お前の言っていた事が杞憂きゆうに終わればいいんだがな。


【※※※※】

 そんな事を言うコイオスの目の前に電子でんし画面が映る。

 どの惑星の画像にも、“NEGATIVEネガティブ”に似た文字が交差こうさして、バツをあらわしていた。


【コイオス】

 っ、


【※※※※】

 不意ふいにコイオスの目がれ、電子画面が閉じると同時に、彼の背後に“彼女”が降り立った。


【コイオス】

 ……レアー?


【レアー】

 感謝しているわ、コイオス。

 カイロスを殺してくれてありがとう。


【※※※※】

 コイオスのいぶかしげな声にはんして、ゼウス・ダイヤモンドの実母じつぼであるレアーは世間話を振るように話し始める。


 コイオスは至極しごく当然な疑問を全て飲み込んで、彼女に向き直った。


【コイオス】

 ……いつの、話をしている。


【レアー】

 “アレ”はカイロスを裏切り者と言った。

 だから“アレ”にぞくする者達は、カイロスを殺したくてたまらなかった。


【コイオス】

 …レアー、聞こえているか。


【レアー】

 “アレ”はカイロスが許せなかったの。だって自分を差し置いて、“あの人”の目に映るだなんて、まさしく裏切り行為だもの。

 まあ、カイロスが死んだのは、ソレを“仕方ない”、“そういうものだ”、で片付けられなかった“アレ”のせいでもあるのだけれど。


【※※※※】

 淡々とつむがれる、分かるようでわからない話にコイオスのまゆが寄る。

 レアーの目にはコイオスが映っているだろうに、まるで彼が居ないかのように自分勝手に話している。


【レアー】

 …だから、何にも属していなかった貴方が、コイオスが。“アレ”の、――クロノス・ダイヤモンドの癇癪かんしゃくに付き合ってくれて、良かったわぁ。


【コイオス】

生唾なまつばを飲んで)

 ―――お前は、誰だ。


【※※※※】

 そんなコイオスの言葉に、やっとこさレアーが反応した。ふふフふフフと、くるい始めのような笑い声を上げながら。


【レアー】

 やだ、私を忘れてしまったの?

 レアーよ。レアー・ダイヤモンド。


【コイオス】

 …俺の知るレアー・ダイヤモンドは、決してクロノスの事を“クロノス・ダイヤモンド”だなんて呼びはしない。

 …俺の知るお前は、フォボスやエウロペよりもクロノスを愛して止まなかった。


 …俺達のレアーは、戦えもしないくせにクロノスの隣に居たがって、愛おしそうにクロノスを見つめていた女だ。


 ――少なくとも、そんな大きな武器を持つお前は、レアーではない。


【※※※※】

 コイオスの言葉に、レアーは途端とたんにつまらなさそうな顔をする。

 そうしてまた、好き勝手に話し始めた。今度は明確な殺意をにじませて。


【レアー】

 “あの子”が「お前は要らない」って言うの。


【コイオス】

身構みがまえて)

 ……、


【レアー】

 だけれど、そんなの薄情はくじょうな話じゃない。私ずぅーっと。“あの子”のために動いてきたのに。

 “あの子”が生きられるように、ちゃんと“シて”あげたのに。


 なのに、今更いまさら

 ひどいと思わない?


【※※※※】

 長く深い溜息を吐いて、地にした大剣たいけんもたれ掛かるレアーは、ふ、と笑ってからコイオスを見た。


【レアー】

 でも、“あの子”は言ったの。

 「コイオス・ルビーが居るから、お前は要らない」って。


 だから―――


【コイオス】

 っ……!? ぐ、ぁっ……!!


【レアー】

(悲鳴に近い声で)

 お前の永久とわを壊せばいい…!!!


【※※※※】

 大剣をき、コイオスの胸元をなぐる。

 強い力に押され、コイオスは吹き飛ばされた。


 信じられなかった。コイオスの知るレアーは戦えないはずだ。クロノスが護身ごしんにと持たせた武器だって、レアーのマイルームでほこりを被っていて、それをプロメテウスに揶揄からかわれて……。


 目の前の細身ほそみの女は、本当に―――、


【レアー】

 “あの子”がクロノス・ダイヤモンドの為に動くというから…! “あの子”が“い子”の為に戦いたいというから…! 私は、にして働いてきたというのに…!


 あ゛あ゛あ゛っ!!

 全部全部全部!!!! ゼウスのせい! ゼウスのせいだぁッ!!!!


【コイオス】

 …っ、待、て…! おい、レアー!


 クソ、何なんだ、この強さは…!?


【※※※※】

 まるで木の枝ように大剣を振り回すレアーに、防戦ぼうせん一方いっぽうのコイオス。

 ハルモニア辺りが見れば、「遊んでやっているのか」と笑いそうな光景だ。


【レアー】

 あああああっ! 私だって“アレ”が正しいと思ってたっ!!!


【コイオス】

 っ!? ぐ、ぁあ゛…!!


【※※※※】

 レアーの大剣がコイオスの左手首に突き刺さる。

 痛みにバランスをくずした彼の左目に、血にれたきっさきせまるが、それをすんでの所でけ、コイオスは左手首を押さえる。


【レアー】

 でも“アレ”は結局! 居もしない“神様”をいつまで経っても追いかけて、追いかけて、追いかけ続けて!!

 ああ、馬鹿みたいな男! 本当に死んでくれて清々(せいせい)してるわ!!


【コイオス】

(痛みにもだえながら)

 く、…クロノスは、死んだん、だな…っ


【レアー】

 死んだわよ! ええ、ちゃんと! 殺してくれるって言っていたもの! “アレ”だって本望ほんもうでしょう!? “偉大いだいなる神様”に殺してもらえたんだもの!


【※※※※】

 ボタボタと、赤色の鮮血せんけつが地面を染める。

 圧倒的不利(ふり)な状況で、だけれどコイオスはレアーの言葉に口角こうかくを上げ、こう言った。


【コイオス】

 ―――、…だとよ、ハデス。


【レアー】

 …………………あ?


【※※※※】

 目を彷徨さまよわせたレアーの視界に映ったのは、音もなく現れた小さな電子画面。

 通話中らしいその画面には、『ハデス・ダイヤモンド』と表示されていた。


【レアー】

 ……………ぁ、…………あぁ……あああぁ……?


【コイオス】

 残念だ…はぁ、はぁ…レアー…。

 お前の抱えた信念しんねんなんぞ…知りたくもないが…今この瞬間より…、はぁ…はぁ…お前――レアー・ダイヤモンドは宝石回路(ジュエリーコード)の敵だ…。


【レアー】

 あああああああああああああっっ!?!?


【コイオス】

 あ゛ぐぁ゛っっ!!


 わ、るい…ハデス……、エウ、リュ、ノメに……よろし、く……つたえて、くれ……


【※※※※】

 さけびながらはなたれた大剣の鋒が、電子画面ごとコイオスの身体をつらぬいた。


【レアー】

 ああああ! これじゃあ!! これじゃあ!! また“あの子”にてられる! 違う、違う違う!! 違うのよぉぉ!!


【コイオス】

 あ゛っ…! う゛ぁ…! ぁく゛っ!!


【※※※※】

 背から倒れ、口から血を吐くコイオスのむね目掛めがけて、何度も何度も大剣を突き刺すレアー。


 ぐちゅり、ぐちゅり、と。

 何度も何度も。

 突き刺す。突き刺す。突き刺す。


【レアー】

 はぁーっ。はぁーっ。


(静かな声で)

 …オマエが、いけないのよ…、ゼウス。

 オマエが生まれてしまったから、全てが狂ってしまったのよ…。


【※※※※】

 おびただしい血の海の中、もう動かないコイオスの上で、レアーがぽつりとつぶやいた。


 そうして、コイオスの閉じた左目を無理矢理開け、ぐちゃり、と指をしずめた。


【レアー】

 これが、あれば…私も、フォイべの神託しんたくを受けられるかもしれない…。

 “あの子”がまた、私を必要としてくれるかも、しれない…。


【※※※※】

 そう言って笑うレアーは、コイオスの上から退くと、大剣もそのままに何処どこかへフラフラと歩いていき、やがて姿は見えなくなった。




(間)




【※※※※】

 「悪いなぁ、コイオス。ただ、死んでもらって感謝してんだぜ。お前が死んだおかげで、動く物語があるんだからな。


 レアーが持ち去ったお前の左目に。

 実の母を敵と見做みなしたハデス。


 それにほら、お前の可愛いエウリュノメも見物みものだろ?




 ………コイオス、向こうで待っててくれや。たんと土産みやげばなし持ってくからよぉ…」













STORY END.

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