【宝石回路〜神は儚く溺れ死んだ〜】
台本タイトルは
【ジュエリーコード〜かみははかなくおぼれしんだ〜】と読みます。
宝石回路シリーズ 第四話
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♂2:♀1:不問0
アトラス・クォーツ ♀ セリフ数:11
〈特攻軍副軍長。ダイヤモンド一族の事を徹底的に調べているダイヤモンドオタク。興奮すると早口になる。情報を書いているノートは48冊目〉
コイオス・ルビー ♂ セリフ数:10
〈前統治者時代は特攻軍に所属していた。ゼウスが統治者になる際、司令部にと打診があったが、エウリュノメに譲った〉
ヘリオス・アレキサンドライト ♂ セリフ数:15
〈騎士軍長。前軍長からの指名で最近就任した若手のホープ。真面目な性格で色濃い面子にいつも揶揄われたり、あしらわれたりしている〉
[あらすじ]《7分半程度》
とある惑星のとある島国の、荒れ果てた廃屋の本棚の端っこ。
宝石回路と書かれた本が一冊。
“フードを被った何かしら”はその本を手に取り、唇を歪ませて舌打ちをした。
そうして苦々しく呟く。
「クロノス・ダイヤモンドは死んだはずだ」―――。
【ヘリオスN】
ゼウス・ダイヤモンド様の消滅は、ほんの数回しか話したことの無いボクにとっても、衝撃的だった。
事情を知っていそうなハデス様やハルモニア様に聞いても、曖昧に濁されたりするばかりで、事の真相は未だよく分かっていない。
それに、最近の宝石回路は何というか…こう。ギスギスしている、気がする。
ボクが新参者だから、余計にそんな事を考えてしまうのかもしれないが、ゼウス様が居た時よりずっと、寒々しい。
ああ、ゼウス様。もっと貴方と話してみたかった。出来る事なら、貴方の消滅を無かった事にしたい。
現特攻軍長のハルモニア様より強く、情報司令部長のペルセポネー様より賢かったと聞いております。
ああ、ゼウス様。宝石回路は貴方を復活させないと、そう決めました。
ですが、ゼウス様。
どうか。こんな不埒な想いを描くボクを、あの時のように笑って許してくれませんか―――。
✼
【アトラス】
コイオス先輩、こんな所に呼び付けて何の御用ですか〜? あーしはハデス様にゼウス様の幼少期について、もっと詳しく聞く用事があったんですけどぉ。
【コイオス】
そう膨れるな、アトラス。そのハデスに、お前をここに呼べと命じられたんだ。
【アトラス】
ハデス様がっ? 他には誰を? 自慢じゃないですけど、あーし、そんなに頭良くないですよ〜?
【コイオス】
お前の頭の出来が良くない事など、デメテルの教育を受ける前の新人だって知っている。
他にはハルモニア、ヘリオス、アポローン、アイテル、ヘスティア、アスクレピオスだ。
【アトラス】
あや〜、特攻軍、騎士軍、騎空軍のツートップと医療団のアスクレピオス先輩とは。
ハデス様ったら大胆。何をおっぱじめるつもりなんですかね〜。
【ヘリオス】
下品ですよ、クォーツ先輩。
【アトラス】
あ~! ヘリオスだ。今日も元気にお祈りやってるー?
【ヘリオス】
何時にも増してうざ絡みですね。今日のお祈りはもう済ませました。
コイオス様、遅れて申し訳ありません。
【コイオス】
相変わらず真面目だな、ヘリオス。
“お祈り”だなんて、ゼウスが消えた直後なら兎も角、今でも続けてる奴なんぞお前くらいなもんだ。
【ヘリオス】
……今の自分が言い訳なく出来る供養は、ただの一つだけですから。
それより、他の方はまだなんですね。
【アトラス】
ヘスティア様以外はここに来る道中見たしぃ、もう来るんじゃない?
(段々と早口になって)
それよりぃヘリオス、ヘリオス。
さっきね、デメテル様とペルセポネー様が内緒話してたんだけど、すっごいすっごい楽しそうだったの! 何かな、何かな。生まれてくるお子様のお名前でも話してたのかな? あ、そだ知ってるぅ? ハデス様から聞いたんだけど、生まれてくるお子様って男子らしいのぉ。良いなぁ、良いなぁ。ダイヤモンドの一族に生まれてこれるなんて、良いなぁ、良いなぁ。
【ヘリオス】
クォーツ先輩、クォーツ先輩。落ち着いてください。涎出てますよ。
【アトラス】
おっと、いけない。ダイヤモンド一族の事となると、やっぱり興奮せずにはいられないなぁ。
【コイオス】
まぁ、あの五兄弟はダイヤモンド一族の中でも優秀だからな。
【アトラス】
そうなんですよぅ、コイオス先輩!
長男のハデス様はゼウス様の良き理解者で、ハイブランドの煙草を嗜む姿はまさに大人〜! 大人オブ大人! それに長男と言ってますけど無性な所も魅力の一つですよね〜むふふ〜ん。
長女のデメテル様もとっても妖艶で、もうすぐお祖母様になるだなんて思えないですよぉ。ちょぉっっぴり面倒な癇癪が玉に瑕ですけど〜…。
【ヘリオス】
…クォーツ先輩のダイヤモンドオタクっぷりは今に始まったことでは無いですけど、語らせるとやはり止まりませんね。
【コイオス】
何、他の奴が来ないうちは好きにさせておけばいいさ。
ところでヘリオス、お前の所から一つ、異動願が出ただろう。何処へだ。
【ヘリオス】
ああ、ラダマンテュス・スピネルですね。本人の強い希望でハデス様の部署へ。
…彼もクォーツ先輩には劣りますが、ダイヤモンドオタクなので。
情報は何故かハデス様に偏っていますが。
【コイオス】
(少し考えて)
………あー、なるほど“スピネル”…。懐かしすぎて、咄嗟に出てこなかった。エウロペの所の次男か。
【ヘリオス】
エウロペ・スピネル様…。確かハルモニア様の秘書をされていた方、ですよね。
ラダマンテュスが入隊する際に少し調べた程度ですが、知っています。
【コイオス】
あー、そうだったそうだった。自由奔放なハルモニアに随分手を焼いていたなぁ。
お前のように揶揄い甲斐のある奴だったぞ。
【ヘリオス】
(ムッとして)
………そう言われると、少々複雑ですね。
ですが、物事を整理する手腕は中々のものだったとの記録が残っております。どうして宝石回路から脱退されたのでしょうか…。
【コイオス】
簡単な話だ、エウロペの努力の根源は…クロノス・ダイヤモンド、ただ一人だけだった。
クロノスが死ねと言えば、その場で首を掻き切ろうとしかねないほどに心酔していたな。
だからエウロペにとって、クロノスの居ない宝石回路に価値は無い。
【ヘリオス】
……。
話を聞けば聞くほど、クロノス・ダイヤモンドという人物は、訳が分からなくなりますね…。
【アトラス】
クロノス・ダイヤモンドに関する情報はこっちのノートにまとめてあるよぉ! えっとね、えっとねぇ。
戦闘能力は一般兵より少し上でぇ、剣より魔法の才があったってさぁ。
お家に帰るよりも宝石回路の基地にばっかり居座ってぇ、側近達に苦い顔されてたとかぁ。
―――後はねぇ、レアー様以外に女性の影があったとか、ふふ、無かったとかぁ?
【コイオス】
…………っ?
【ヘリオス】
そういう情報は一体どこで仕入れてくるんですか、クォーツ先輩。後、相変わらず字が汚いですね。
この間行われた国境近くでの戦闘訓練の報告書、半分近く読み取れませんでしたので、特に異常無しとして処理しましたけど良かったですよね?
【アトラス】
戦闘訓練〜? あー! あーしとヘリオスとヘスティア様が立ち会ったやつぅ? 良いよん、何にも問題なかったしぃ。
ヘスティア様にゼウス様のちっさい頃のお写真見せてもらってて、あんまし訓練見てないしぃ。
【ヘリオス】
はぁ…。どうしてこんな人が特攻副軍長なのか…世も末ですね…。
……? コイオス様、どうかなさいましたか?
【コイオス】
…っああ、いや。何でもない。
それより遅いな、あいつら。
……少し様子を見てくる。二人はここに居てくれ。
【ヘリオス】
畏まりました。
【アトラス】
いってらっしゃ〜い、コイオスせんぱ〜い!
あ、ねえねえ、ヘリオス。これね、ハルモニア先輩に描いてもらった、小さい頃のペルセポネー様を抱いたゼウス様!
バリバリに捏造だけどよく描けてるよねぇ!
【ヘリオス】
ちょ、クォーツ先輩、ボクに乗らないで、危なっ、…ええ、ええ! そうですね! よく描けてると思います! ……けど、それ。デメテル様にだけは見られちゃいけませんよ…?
下手したらそのノートの束、灰になりかねませんからね。
【アトラス】
もう! それくらい分かってるよぅ! ふふん、後でこれねぇ、ハデス様に見せて更にダイヤモンド一族のネタ強請るんだぁ。
【ヘリオス】
…ボクを巻き込まないなら、お好きにどうぞ。……はぁ………。
STORY END.
【フードを被った何かしら】
ああ、クロノスが仕掛けた地雷が早くも芽吹き出しているのか。
全くさっさと退場すればいいものを……面倒な事だ。
そこの君達。そう、“宝石回路”を知ってしまった君達さ。
何、怯える必要はない、ワタシはハッピーエンドが見たくてね。
…あまり時間もない。
君達に少しばかりのタネを恵んでやろう。クロノスが遺した地雷より小さく儚いが、芽吹けば何よりもの武器となるだろう。
さて、今まで登場した“キャラクター”の中で、誰が一番真相に近いのかは分かるだろう? 分からない? ふはは、冗談は止せ。…………何? 本当に分からないのか?
………………。
………………。
……まあ、いずれ分かることだ。そう気を急くな。
では、分からない君達の為にもう一つくらい残そうか。
今喋っているワタシは、一体誰だと思う?




