【宝石回路〜神域の狭間で笑う〜】
台本タイトルは
【ジュエリーコード〜しんいきのはざまでわらう〜】と読みます。
宝石回路シリーズ 第三話
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♂1:♀1:不問1
エウリュノメ・アンバー ♀ セリフ数:11
〈一年の殆どを瞑想して過ごしている。ハルモニアとは前統治者の時代からの戦友。昔の怪我で声が掠れ気味〉
ヘルメース・アクアマリン 不問 セリフ数:24
〈あまり宝石回路の基地から出ない。政府との接触が一番多い。最近メガネの度が合わない気がしている〉
コイオス・ルビー ♂ セリフ数:19
〈前統治者とは旧知の仲。普段は極寒の地で、弟子と暮らしている。クールな酒好き〉
[あらすじ]《8分程度》
クロノス・ダイヤモンド、とは。
聞けば顔を顰める者が殆どで、“あの”ゼウス・ダイヤモンドの父親だというのに良くないウワサばかりの男だった。
政府はそんな男を何故今一度欲するのだろうか。そして、何故。クロノス・ダイヤモンドは姿を消したのだろうか―――。
【コイオスN】
宝石回路が世界を滅ぼそうと決めたのは、政府がゼウス・ダイヤモンドの復活を望んだからだ。
そもそも一体全体どうしてゼウス・ダイヤモンドは消滅したのか。
彼は自ら消える事を望んだ。消え解ける事で、全ての罪から逃れた、と言った方が良いやもしれない。
はてさて、ゼウスの罪、とは。
遠くの惑星を一つ潰した事など、さして問題ではない。
政府の上層部を総入れ替えさせた事もあったが、我々宝石回路にとって必要だったから仕方ない。
ならば、自由聡明なゼウス・ダイヤモンドが犯した罪とは、何ぞや。と。
彼の数多ある罪の一つを教えてやろう。
彼曰く、『奪った』のだと。
生まれた瞬間から、産声を上げる前から、世界が自分を見初めた時から、『奪ってしまった』という。
彼曰く、『死んでも許されない』のだと。
奪った本人ですら、可哀想にと頭を撫でてやりたくなったと。
そんな同情を含んだ自分が『死んでも許せない』という。
我らが神は、そういう御方だった。
✼
【ヘルメース】
失礼致します、エウリュノメ・アンバー。
【エウリュノメ】
………………。
【ヘルメース】
…エウリュノメ・アンバー、聞こえていますか?
【エウリュノメ】
………………。
【ヘルメース】
…まだ瞑想中でしたか、困りましたね。
至急確認して頂きたい資料があったのですが。
【コイオス】
エウリュノ…おっと、ヘルメース。…何だまだ瞑想中か。
【ヘルメース】
コイオス・ルビー。貴方も彼女に御用事ですか? ご覧の通りです。
ところで、その大量の瓶はもしや酒ですか?
【コイオス】
エウリュノメが到着したって聞いたからな。居ても立ってもいられなくて。
【ヘルメース】
アテナ・ヘリオドール、エレボス・アイオライトと共に酒盛りをしていたのでは?
デメテル・ダイヤモンドより、ペルセポネー・ダイヤモンドの身体に障るような騒音は控えてほしい、との苦情が出ておりましたよ。
【コイオス】
酒盛りというほど飲み漁った覚えはないがな。
…まあ、次会った時にデメテルには謝罪しておこう。
【ヘルメース】
…そうして頂けると助かります。
ですが、意外でした。
【コイオス】
何がだ?
【ヘルメース】
今回の作戦に参加された事ですよ。
貴方は…ゼウス・ダイヤモンドを嫌っていたようでしたから。
【コイオス】
(相手の言葉に息を飲んでから、自嘲する)
…………。
…まあ、確かに。好きではなかったな。…然程嫌いでもなくなったが。
【ヘルメース】
それは、クロノス・ダイヤモンドの教えですか。
【コイオス】
教えってほど大層なものじゃないが、ゼウスが世界にとって、あまり良くない存在なんだっていうのは、よく聞かされたよ。
【ヘルメース】
…………………。
【コイオス】
クロノスの言う“ソレ”を、違えようのない真実だと騙されていた奴も居たな。
俺も実際にゼウスに会うまではそうだった。いや…今も、少しだけそう思っている節がある。
【ヘルメース】
…コイオス・ルビー。貴方は今も、クロノスを慕っているのですか。
【コイオス】
…酷い男だったがな、それがアイツの魅力でもあった。
ゼウスという正義だけを見てきたお前達には、難しい話かもしれないがな。
【ヘルメース】
…っ、では、クロノス・ダイヤモンドは悪ですか。
【コイオス】
…さあ?
【ヘルメース】
(眉間に皺を寄せて)
……………っ。
【エウリュノメ】
アクアマリン、…とコイオス。
他人の部屋で薄気味悪い男の話は止してちょうだい…。
【ヘルメース】
……エウリュノメ・アンバー。貴方の瞑想が終わるのを待っていたのですよ。
【コイオス】
起きたか、エウリュノメ。待ってたぞ。
【エウリュノメ】
…基地に来てから、まだ半日も瞑想してないわ…。
此処は少し煩すぎるの。静かな空間で考える時間が欲しいわ…。
【ヘルメース】
……はぁ、資料の確認をして頂きたいだけですので、終わり次第退出致します。
エウリュノメ・アンバー。
第八十七回の政府基地防衛戦のメンバーは貴方がお決めになられたんですよね?
【エウリュノメ】
……えぇ、ええ、そう…。ワタシが決めたわ…何か問題があって…?
【コイオス】
第八十七回というと…。ゼウスが消える直前か。確かメンバーは…。
【ヘルメース】
…特攻軍より、ハルモニア・トパーズ、アトラス・クォーツ、他三名。
騎士軍より、ヘリオス・アレキサンドライト、アポローン・ヘリオドール、他五名。
騎空軍より、アイテル・アイオライト、ヘスティア・ダイヤモンド、他五名。
司令官はエウリュノメ・アンバー。その補佐にメドゥーサ・オニキス、他二名。
…死者、二名。重傷者、五名。各軍の軍長、副軍長は無傷で帰還しています。尚現在、重傷者は全員現場復帰しております。
【エウリュノメ】
…特に、おかしな点は見当たらないわね…。ワタシの指揮が気に入らなかったかしら…。オニキスの事だって、ちゃんと彼女に聞いたわよ…?
【ヘルメース】
いえ、メンバーに関しては特に問題はありません。メドゥーサ・オニキスの件に関しましても、本人に了承を得ていたのであれば、こちらの出る幕は御座いませんので。
そうではなく、死者二名に関してです。遺体受渡し人の名に、少しだけ見覚えがあったので、その確認に。
【コイオス】
死んだのは特攻軍の一人と、司令官補佐の一人か。
………ん? …っな…!
【エウリュノメ】
……どうして、彼の名がここにあるの…?
【ヘルメース】
…カイロス・アメシスト。
確か、クロノス・ダイヤモンドの右腕だったのですよね?
【コイオス】
ああ、だが…アイツは死んだはずだ。…俺がこの手で殺したはずだ。
【エウリュノメ】
ええ。…酷い裏切りだったから、あの男が怒ったのよ…。処刑しろって煩くて…
【ヘルメース】
コイオス・ルビー、間違いないのですね。
【コイオス】
間違いない。アイツの鼓動が止まる瞬間まで、俺はアイツの喉に剣を突き立てていたんだからな。
【エウリュノメ】
そう…その後にプロメテウスが焼き尽くしてしまったから…遺体も何も…残ってなかったはずだわ…。
【ヘルメース】
…………………。
【エウリュノメ】
アクアマリン…申し訳ないけれど…遺体受渡し人の欄までは見ていなかったわ…。
【コイオス】
…クロノスに、カイロス…。
消えた奴と死んだ奴が、今更何の用だというんだ。
【ヘルメース】
(動揺したように)
政府に、確認を取りましょうか…、
【コイオス】
止しておけ、ヘルメース。
事実を全て確認してからでなければ、政府に逆手を取られて終わりだぞ。
【ヘルメース】
そう、ですね。…失礼、少し取り乱しました。
【エウリュノメ】
…アクアマリン…無理はしちゃいけないわよ…それに…………
…………………。
【ヘルメース】
…? エウリュノメ・アンバー?
【エウリュノメ】
………………。
【コイオス】
おっと、話し過ぎたか。また瞑想だ。
【ヘルメース】
…、はぁ。先程の件、詳しく調べておきますので、他のメンバーへ情報共有しておいて頂けますか?
【コイオス】
高い酒で手を打とうか。
【ヘルメース】
……はあ、善処はします…。
STORY END.




