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三人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
30/48

★【拝啓、崇高な貴方へ】

声劇タイトルは【はいけい、すうこうなあなたへ】と読みます。


台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂2:♀0:不問1


 鹿華ろくばな ♂ セリフ数:17

何処どこかでそよささやく声に耳をます必要は無い。聞こえずともれに反応を寄越よこせば、人はそれ以上を求める様になるからだ〉


 鹿嬭しかね ♂ セリフ数:14

中堅ちゅうけんの語り部。囁く声すら聞き分けたい。けれど、聞きたい声はいつも快活かいかつで弱音は見えない。嗚呼ああずるい人〉


 ナレーション 不問 セリフ数:12


[あらすじ]《5分半程度》

 風に追われる雲のように。ミツバチを誘う花のように。人々を魅了(みりょう)し、(きり)のように去っていく。(かた)()達は()()途切(とぎ)れさせぬよう、未来にタネを残してゆく―――。












【鹿華】

(伸びをして)

 …さて、っと。寝坊助ねぼすけを起こすとすっか。


【ナレーション】

 骨組みのあらい屋根の下。金色こんじきの首飾りをつけた男が、軽く伸びをしてから、かたわらで眠る青年を見遣みやる。


【鹿華】

 おーい、そろそろ移動すっぞ。起きろ、鹿嬭しかね


【鹿嬭】

 ……んん゛…。…おししょうさま…?


【鹿華】

 よお、よく寝てたな。やっぱ疲れてたんじゃねぇの。


【鹿嬭】

(顔をしかめて首を振って)

 …ん゛…、いえ、平気です。


 …………ところで、…()()は。


【ナレーション】

 鹿嬭しかねと呼ばれた青年は、短い白髪をガシガシときながら起き上がる。


 青年を起こした男の名は鹿華ろくばな。今はまだ、伝説ではない普通の中堅語り部である。


【鹿華】

 華倖かぎょうにゃぁ、ちょっと()()()()を頼んだんだわ。ヤビオク地方まで飛んでもらってる。


【鹿嬭】

 そうですか、分かりました。

 どこで合流ですか。


【鹿華】

 フーラン地方の屋台通りで。こっからなら、三日で着くからな。途中で夜嘉瀬やかぜに会う予定もあるし、…準備できたか?


【鹿嬭】

 お待たせしました。行きましょう、お師匠様。


【ナレーション】

 立ち上がった鹿嬭の腰には、炎の模様が描かれた長剣ちょうけんたずさえられていた。

 伝説の男の二番弟子は、いつかの未来には『剣聖けんせい』と呼ばれるほどになるだろうと言われているのだ。


【鹿華】

 ―――そういやぁ、もうすぐ巣立ちか。


【ナレーション】

 思い出したように言った鹿華に、鹿嬭の動きが止まるが、それに気付かない鹿華は言葉を続けた。


【鹿華】

 長かったなぁ、鹿嬭。十年かー…。はは、でっかくなったなぁ…。


【鹿嬭】

 ………そう、ですね…。


【ナレーション】

 鹿華の嬉しそうな声に、鹿嬭は胃の中からせり上がってきそうな空気を、無理やり飲み込んだ。


【鹿華】

(笑いながら)

 …お前も華倖も喧嘩ばっかでなぁ。どっちが先に俺に呼ばれるかだ、野宿のじゅくの見張りをどっちがやるかだ、ちっせえ事ばっかり。

 これでも結構心配してんだぞ、独り立ちした後ってやつ。


【ナレーション】

 ほら行くぞ、と固まる鹿嬭をうながしながら、好き勝手に喋る鹿華。


 こっちの気なんか、これっぽちも分かってないんだろうな、と未来の剣聖は少しだけ遠い目をした。


【鹿華】

 なあ、鹿嬭。―――しっかり生きろよ。


【鹿嬭】

 ………………。……言われずとも。『鹿華』の名に恥じぬよう生きますよ。


【鹿華】

 はははっ、相変わらず硬っ苦しいなぁ。




〈間〉




【鹿嬭】

 そう言えば、夜嘉瀬やかぜ殿の所へは何をしに?


【ナレーション】

 歩き始めて数時間。

 森の中を進んでいると、腹を空かせたらしい魔物に襲い掛かられたが、あっさりと鹿嬭が細切こまぎれにしてしまっていた。


 一般人も安全に通れる、という文句をうたっている整備された山道のはずなのだが…、これは近くのギルドに寄って報告しておかないとな、なんて鹿華が考えていれば、剣を振って魔物の血を払っていた鹿嬭が思い出したように言った。


【鹿華】

 ああ、妖術が掛けられてるらしい手鏡を見てほしいっつーんでな。

 ゆず云々(うんぬん)も言われてたんだが、ンな素人目しろうとめで見ても分かるような呪物じゅぶつ要らねぇよってな。


 そうしたら、とりあえず見に来てくれって話になったんだわ。


【鹿嬭】

 なるほど。……まさか、対価もなしに受けたのですか。


【鹿華】

 んあ? そう。


【鹿嬭】

 ……はぁーー……。そうですね、貴方様はそういう方ですよね…。


【ナレーション】

 長く大きなため息を吐いた鹿嬭は、とりあえず目の前の死骸しがいに、聖粉せいぷんと呼ばれる、世界樹の枝をけずって作られた粉をいた。

 魔物の身体を分解し、土の養分に変える性質があるからだ。


【鹿華】

 何だよ、夜嘉瀬からふんだくろうってか?


【鹿嬭】

 っそうではありません、無償むしょうの働きなんて馬鹿がやる事ですよ。


 夜嘉瀬殿だって、何もご用意されてないなんて事は無いでしょうが、そこらの事に貴方は無頓着むとんちゃく過ぎるんです。


【鹿華】

 んー…つってもなぁ、夜嘉瀬がその辺り、ぼったくってくる訳もねぇし、大丈夫だろ?


【ナレーション】

 師匠の危機感のない発言に、鹿嬭は何度目かのため息を吐く。


 きっとこの人は、相手が同期でなくとも同じ事をする、し続けるのだと知っている鹿嬭は、それ以上は何も言わずに息をらすだけにとどめた。


【鹿嬭】

 …一先ひとまず、行きましょう。この先の町で語りをするのでしょう? …着物も汚れたので早く洗い流したいです。


【鹿華】

 へえへえ。んじゃあ、早めに着いて腹拵はらごしらえでもすっか。ギルドにも寄らねえとだし。


【ナレーション】

 軽い足取りで先を行く鹿華を見つめながら、鹿嬭は自分の中のどす黒く、はしたない思いを、思わず、と言った風にこぼす。


【鹿嬭】

 ―――願うならば、生涯貴方様のそばに…。


【ナレーション】

 その為ならば、何を敵に回そうとも構わない。

 純情に見せ掛けた狂気を含んだ目は、鹿華がこちらを向いた瞬間、消える。


【鹿華】

 …あー? 何か言ったか?


【鹿嬭】

 …………いいえ、何も。


【鹿華】

 何だよ、変な奴。ほら、置いてくぞぉ。


【ナレーション】

 滅多めったに表情を変えない二番弟子のほほが少しゆるむ。


 あれから数十年。

 剣聖と呼ばれ、弟や妹にしたわれ、静かに生きる鹿嬭はうように言うのだ。


【鹿嬭】

 探すという愚かな選択をした兄も、

 待つという馬鹿な事を選んだ僕も、


 どうか、


 笑ってください、鹿華様―――。















STORY END.

一人用声劇台本ページの語り部シリーズより。

それぞれ初登場台本を掲載しておきます。


語り部鹿華~猫万以々々編~

https://ncode.syosetu.com/n0087fo/78/


語り部鹿嬭〜異国編〜

https://ncode.syosetu.com/n0087fo/111/

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