【声劇団体リュシエル⑤】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。
※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。
♂3︰♀0︰不問0
藤郷さん ♂ セリフ数:16
〈演出家兼監督を務める古参。幹部の話もあったが過去の清算をまだ終えていないと自ら蹴った。団体の篩でもある〉
修吉 ♂ セリフ数:26
〈③が初登場。アドリブ常習犯の若き幹部。麗白の妹の旦那。今回は『前座』を務める〉
HIDAXさん ♂ セリフ数:21
〈団体に所属しながらも世界中を飛び回るホルン奏者。故にあまり劇参加は出来ないが実力はある。特徴的な甘い声〉
[あらすじ]《6分半程度》
再来月の新人上演に向けて新参の教育を行っている稽古場を冷やかし半分に覗いた修吉は懐かしい顔を見つけます。彼に挨拶をしようとした修吉の声を怒鳴り声が遮りました―――。
【修吉】
ちーす。…って、HIDAXさんじゃん! 久し―――
【藤郷さん】
だッから! 空気読めねえアドリブ入れんなっつってんだろうが! 一人でやってんじゃねぇんだぞ!
【修吉】
わお、相変わらず綺麗ながなり声ねー、藤郷さん。
【HIDAXさん】
さっきからずぅっとアレなんだわ。
久しぶりだね、半年ぶりくらい?
【修吉】
そうっすね〜。いつ日本に?
【HIDAXさん】
先週。暫くは日本にいる予定だし、劇参加出来るかって聞いたら願ったり叶ったりだって。
新人の子も増えたみたいだし、ちょっと挨拶がてら冷やかしかね。
【修吉】
何だ、俺と一緒か。
【HIDAXさん】
あらら、修吉も?
【修吉】
俺は今回前座なんで、その練習も兼ねてですけどね。
で、何の台本やってんすか今。
【HIDAXさん】
大江都君って子の『再会のアステード』。
新人上演は毎回新人の台本だし楽しみなんだよね。ちょっとだけ読ませてもらったけど面白そうだったよ。
【修吉】
へぇ。上演楽しみっすね〜。
(藤郷と目が合って)
あ、どーも。藤郷さん。ちょっと冷やかしにきてまーす。
【藤郷さん】
(疲れた様子で)
ああ、修吉か。邪魔すんなよ
【修吉】
しませんよ。つーか、藤郷さんがそんなになるほど手を焼いてる新人達、相手にしたくないわ〜
【HIDAXさん】
ド直球だね、修吉…。まぁ、同意見かも。
そうだ、新人上演の次の夏季上演で羽田の『立直・Dead・バイ』やるから練習付き合ってくれる?
【修吉】
出た〜、地獄の早口台本・・・。
【HIDAXさん】
あら、もう知ってるの。
【修吉】
ちょっと前に見せてもらったんですよ。
羽田さんには珍しく結構テンポの早いギャグ台本だったから。
【HIDAXさん】
念願のギャグ台本だぁって喜んでたよ。
んじゃあ、修吉はオズワードやって。
【修吉】
りょーっす。
▲間▲
【HIDAXさん】
『何で!? 何でゾンビが麻雀やってんだよ! そんで何でアンタは普通に混ざってんだよ!』
【修吉】
『黙り給えよ、青年。この至高の空間に雑音など要らないのだ。ゾンビだろうとも人間だろうとも麻雀を愛す魂は同じなのだよ』
【HIDAXさん】
『……、色々突っ込みてぇ所はあるけど…、とりあえず一つ言わせてよ…、まじでオズワード頭悪いのな…何でそこで鳴くんだよ』
【修吉】
『これは奇跡への伏線なのだよ、青年。彼らは初心者用のゾンビだからな。まあ私に任せ給えよ』
【HIDAXさん】
『初心者用とかあんの!? つーか、オズワード初心者なんじゃねぇか! よく鳴けたな!? 門前で和了れよ!』
【藤郷さん】
やっぱいいなぁ、お前らの演技は。
心が安らかになるわ。
【修吉】
うわぁぁあっ!?!? ビビったぁぁ! 藤郷さん居たんすか!? いつの間にか新人達居なくなってるし!!
【HIDAXさん】
割と序盤から居たよ。
【修吉】
言って下さいよ〜…。めちゃくちゃ死角に居っから分かんなかったぁ、めっちゃ叫んだじゃん、クソ恥ずい〜…!
【藤郷さん】
(長いため息を吐いて)
はぁぁぁ゛〜〜〜〜〜…!
【修吉】
・・・藤郷さん、どうしたんすか。幸せ逃げますよ。
【藤郷さん】
お前らからも一言言ってやってくれやぁ゛〜…! 基礎も出来てねぇのに、応用しようとすんのは何のバグなんだって話だわ…
【HIDAXさん】
ああ、新人さん達の。
さっきもオレたちの演技見て、入りたそ〜にしてた子達居たね。
【修吉】
まぁ、気持ちは分からんでもないですけどねー? やっぱほら、“格下”とは声劇したくねぇよって事じゃないですか。
【藤郷さん】
相変わらずお前はそういう事、憚らずに言うよなァ。
【修吉】
ヤダなぁ、俺も他所では言いませんよ。で、どうなんすか。新人上演。成功しそうっすか。
【藤郷さん】
今の出来なら投げた方がずっとマシ。
【HIDAXさん】
うーわ、本当に問題児ばっかりなの。
個々のやる気とかの問題でしょ、新人上演って『かろうじて聞けるようにする』ってのが元々の目的みたいな所あるし。
【藤郷さん】
声劇初心者によくある、本人は気付きもしねぇ躓きのフルコースだ。もう個々に付き合ってやるヒマも気力もねぇ。
【修吉】
(少しニヤついて)
例えば?
【藤郷さん】
嬉々として聞いてくんな。
多いのは台本の読み間違いだな。助詞が一つ違うだけで台本の背景がひっくり返る。キャラの心情すら矛盾しちまう。
【HIDAXさん】
『彼女が甘い声を出してお願いをする』
『彼女に甘い声を出してお願いをする』
うん、確かに。
甘い声を出しているのが彼女か第三者かで物語の進行にも関わってきそうだね。
【修吉】
つーか、藤郷さんが言いたいのはその後でしょ。どーせ新人達、全員“しない”んじゃないですか?
【藤郷さん】
! お前、本当何でンな事分かっちまうんだ。
【修吉】
始めたてン頃は俺も声劇嘗め腐ってたんで。考え方とか、姿勢とか。あの時の俺見たら藤郷さんガチギレすんじゃないっすか。
【HIDAXさん】
何? 何を“しない”の?
【修吉】
謝罪っすよ。
【HIDAXさん】
謝罪・・・?
【修吉】
まぁ、謝罪って言い方は大袈裟ですけど、簡単に言えば「セリフ噛んでごめんなさい」をしないんです。
【HIDAXさん】
えっ・・・?
【藤郷さん】
最近は特に多いな。野良でもたまに見掛ける。
【HIDAXさん】
え、待って待って。謝らないって他に何するの。セリフ噛んだり間違えたりしたら普通に謝るものじゃないの?
【修吉】
最近はそれが普通じゃないんですって。
「セリフ噛むのは当たり前」が変な形で浸透しちゃってセリフ噛んでも「みんなやってる」から「大丈夫」なんですよ。
【藤郷さん】
HIDAXはあんま野良しねぇから知らねェと思うがな、今回の新人達みたいな奴らが界隈に増えてきてる。
ンな終始真面目に、一欠片も噛むなとか無理難題押し付けるつもりはねェけどよォ。
台本読めりゃあいいなんて奴らはリュシエルにゃあ要らねぇ。
【HIDAXさん】
なるほど、団長が言ってた篩って言葉の意味。やっとわかった気がする。
野良でやってた子達が団体っていうモノに馴染めるか否か、藤郷さんが見極めてるんだね。
【藤郷さん】
ンな大層なモンじゃねェよ。合わねえ奴は辞めてく。根性ねェ奴も同じだ。
それ以外の「やってやる」って気概のある奴だけが残るって話だ。
【修吉】
まあお陰様で前みたく変な人も入って来なくなったし俺は今のリュシエル好きですけどねー。
、と。あらら。……藤郷さーん。
【藤郷さん】
ア゛?
【修吉】
ドアの前に新人さん発見〜。
何何? “個人練習付き合って下さい”。ですって。熱烈ですね〜?
【HIDAXさん】
どうするの、藤郷さん
【藤郷さん】
………まっ、こういう事があっから新人教育は辞めらんねェんだわ。
【修吉】
(わざとらしい演技で)
んじゃぁ、三名ご案内〜。
仕方ないなぁ、この修吉お兄さんも付き合ってあげよう。
【HIDAXさん】
じゃあオレもお供しよっかな。
台本見せて。どの役演るの?
【藤郷さん】
おい、新人共。さっさと始めっぞ。
STORY END.




