【声劇団体リュシエル④】
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♂2︰♀1︰不問0
有北川くん ♂ セリフ数:21
〈①が初登場。19歳の新人。調子乗りな所もあるがしっかり反省し、次に活かせるので期待の新人〉
深さん ♀ セリフ数:14
〈副団長の一人。深という名で活動するラジオパーソナリティでもある。生粋の日本人〉
稲中くん ♂ セリフ数:10
〈20歳の新人。情報管理担当で演者ではないが演技を聞くのは好き。こう見えて優秀。皆の癒し〉
[あらすじ]《8分程度》
今日は非番だから。そう言って妹と買い物に出かけた麗白さんに課題を言い渡された有北川くん。台本片手にお邪魔した稽古場では副団長の一人、深さんと同時期に入団した稲中くんが何やら神妙な顔をして話し合っていました――。
【有北川くん】
えーっと、今日の課題は滑舌と冒頭練習…あれ、深さん? 、と稲中くん?
【稲中くん】
あ〜、有北川くんだ。
自己練習? 精が出るねえ。
【有北川くん】
麗白さんに課題出されたんですよ。とりあえず再来週のプチ声劇の確認を、と。
【深さん】
結局麗白がお前の世話係に定着したか。団長がそう言ったのか?
【有北川くん】
………? 何で団長が出てくるんですか?
【深さん】
ああ、有北川は知らないのか。麗白は私の前に副団長にならないかなんて言われてたんだ。結局アイツはそれを断ったがな。
団長は団長で幹部というだけじゃなく、麗白に何か役割を与えたかったんだろうな。
【有北川くん】
えぇ……全然知らなかった…。
【稲中くん】
麗白さんってそんなに昔からいらっしゃるんですか? だって深さんって団体結成当初から居ますよね?
【深さん】
団長が界隈に入ってすぐの頃、悪名高いユーザーとトラブルになってな。その時に仲裁や対応を代わってくれたのが麗白だったらしい。
私より付き合いは長いはずだぞ。
【有北川くん】
へえ…。何か、凄いですね…。
今に繋がってる過去の話ってワクワクしますっ。
【稲中くん】
……そうなってくるとますます麗白さんの年齢が分からなくなりますねぇ…。
だって団体が10年目で、団長さんの声劇歴が15年…。
………うーん、麗白さんって本当ミステリアスですよねえ。
【深さん】
まだチビ助だった恵が今や団体の幹部やってんだから感慨深いもんだ。
【有北川くん】
はぇぇ…。
二度と麗白さんの年齢聞かんとこ…。
あ、それより。さっき何を話してたんですか。
【深さん】
ああ、有北川は三枝子って演者、知ってるか? 一応うちの団員なんだがな。
【有北川くん】
えぇっと、名前だけは。
あ、もしかして白鷺さんが怒ってた人…?
【稲中くん】
その中の一人ではあるねえ。
白鷺さんの『ソーキオール・ロード』、知ってる〜?
【有北川くん】
新作ですよね、確か。
麗白さんが悪役だったから何となく覚えてますけど。もしかしてボイコットとか?
【稲中くん】
うーん。えっと、台本横流し、みたいな?
【有北川くん】
(絶句して)
えっ…。
【深さん】
白鷺の新作台本はまだ団体のアカウントでも知らせてなかった極秘なものだ。三枝子は主人公を殺そうとする母親役でな。
練習にも出てこない、連絡もつかない。雲隠れやもしれないと団長と他の副団長と対応を考えていた矢先だ。
『朱の声劇団体』って知っているだろう? そこの団体がな、白鷺の『ソーキオール・ロード』を演じていたんだ。
【有北川くん】
そ、それって…団体の団長さん、知ってたんですか…。
【深さん】
いいや。恐らくだが、『朱の声劇団体』で脚本を担当している奴が三枝子の友人だったんだろうな。裏で話している時に台本を見せたか…、あるいは…。
三枝子は今まで中堅として団に所属すらしていたものの、目立つ役を貰う事は少なかったからな。
…舞い上がったんだろうが。それは理由にすらならない。
【稲中くん】
でもね、三枝子さんの話だけ聞くなら『朱の声劇団体』は台本を見せられたけど三枝子さんの配役がある、声劇団体リュシエルの台本だって分かってたはずなのにそれをどうして団の台本にしちゃったんだろうって。
【有北川くん】
ああ、確かに。
それって、でも…あんまり言いたくないですけど三枝子さんが嘘をついてる可能性だって…
【深さん】
ああ、無きにしも非ずだ。
だからこそ先月の末だったか。
あちらの団長とこちらの団長、数名の副団長、三枝子と件の脚本担当を交えて話をしたんだ。
最初は三枝子も脚本担当もスムーズに話を進めていたんだがな、飼田が点を突くとそこからボロが出始めてな。
(深い深いため息を吐く)
結局、三枝子は役が決まった事を脚本担当に話し、見せて欲しいと言われ軽率に見せてしまった事を自白して。
脚本担当の方は…嫉妬したんだと。
【有北川くん】
嫉妬?
【深さん】
そう。
白鷺は個人で本も出している、まあ所謂プロだ。
そんなプロの作品を目の当たりにした脚本担当は白鷺にも、そんな台本を使える三枝子にすら嫉妬したんだ。
【有北川くん】
だから台本を、盗んだ…。
でもそんなのって…!
【稲中くん】
うん。身勝手だ。
そんなの理由にすらならないよ。
白鷺さんの作品を奪って殺した。その事実は変わらないもん。
【有北川くん】
…っていうか、それってどうやって発覚したんですか?
【深さん】
白鷺が見たんだよ。
【有北川くん】
(思わず声が出た、というように)
…えっ、
【深さん】
『朱の声劇団体』に知り合いが居てね、『ソーキオール・ロード』には出てないものの、「すげぇ新作やるから」とな。
(疲れたようにため息を吐いて)
……ショックどころじゃないだろうな。
あの子は賢い。すぐさま団長に連絡をして、それから『ソーキオール・ロード』の演者達に連絡した。
団長から連絡を貰った私たちは散り散りに指示を出しに走ったさ。
会いに行った白鷺はね、最悪だなんだといつもの口の悪さだったけど……震えていたよ。
悔しかったろうさ。自分が手間隙掛けて書いた台本が奪われたのだから…。
【有北川くん】
あ、って事は…もう『ソーキオール・ロード』は…。
【稲中くん】
うん。『朱の声劇団体』が配信で使ってしまったから。リュシエルはもう使えない…。
白鷺さんはタイトルの変更だけを求めて、あとは団長さん達に任せるって…。
公にはしていない事だからこちらもあんまり動けなくてね。
【深さん】
それに『朱の声劇団体』は私達とは違って完全リモートだ。オフで団員が会う事はあるらしいが…顔を合わせたことがない演者なんて沢山居ると。
だからこそここまで対応が遅れてしまったんだがな…。
今はあちらの返答を待っているところさ。
……白鷺のメンタルケアは…、幹部に任せた。
……、まあ何にせよ。『朱の声劇団体』の信用は無くなったな。団長も二人の副団長も良い奴だったんだが。…団員の粗相は共に責任を負わなければならない。
【有北川くん】
…あれ、じゃあ三枝子さんは?
【稲中くん】
謹慎だよ。
本人は辞めたいって言ってるんだけどね、ちゃんと白鷺さんに謝ってもないのにそれから逃げるのは駄目だって、団長さんが謹慎って形にしてるんだ。
【有北川くん】
そうなんですね…なんか俺の知らない間に色々あったんすね…。
【深さん】
『朱の声劇団体』から返事を貰ったら皆に知らせるつもりではいたさ。
…有北川、当たり前だが。
【有北川くん】
ふぁいっ! 絶対に誰にも言いませんっ!
【深さん】
ふっ、よろしい。
さあ、この話は終わりだ。
せっかくだし、お前の練習に付き合ってやろう。麗白の教育が上手くいっているかの確認だな。
【有北川くん】
えっ!? イヤ、アノ…一人で出来ま――
【稲中くん】
(面倒な気配を察知して逃げるように)
じゃあ僕、佐古田さんと打ち合わせだからまたね〜。
【有北川くん】
あ、ちょっ、まっ…あ―――!
STORY END.




