【声劇団体リュシエル②】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。
※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。
♂1:♀2:不問0
恵さん ♀ セリフ数:16
〈声劇団体団長の娘さん。コネをフル活用して幹部になったが実際演技は上手〉
白鷺くん ♂ セリフ数:9
〈脚本担当で演者ではないが、読ませるとそれなりに上手い。いつも眠たげで呑気な子〉
穂稀ちゃん ♀ セリフ数:17
〈21歳の新人。大手配信者らしいが声劇の才能はイマイチ。楽して上手くなりたい〉
[あらすじ]《5分半程度》
今日は団内で一二を争う脚本担当の白鷺くんを加えての稽古です。彼の書く台本は綺麗で儚いファンタジー。団長の娘さんである恵さんもやる気十分です。でも新人の穂稀ちゃんは台本の内容が気に食わない様子で―――?
【恵さん】
それじゃあ、今日は再来月に公開される声劇、『ヒリカリ・パラレリ』の掛け合いを練習するわね。
【穂稀ちゃん】
はあ〜い。
【恵さん】
白鷺くん、今回の脚本って準主人公の方がセリフ多いのよね? 今後、加筆したり修正したりする予定は?
【白鷺くん】
今んとこ無いっスけど…、やりにくいようだったら何とかするんで言って下さい。
【恵さん】
了解。…じゃあ、穂稀ちゃん。『エレキドール』が『パレッド』を引き留める所からやりましょ。
【穂稀ちゃん】
はあい。それじゃあ行きますね。
『駄目、エレキ。ワタシ、きっともう行かないといけない』
【恵さん】
『そんな事言わないでよ、パレッド! オレ達、ずっと二人でやってきたろ!?』
【穂稀ちゃん】
『駄目。もう時間。時のアリスは待ってくれない』……はあ、
【恵さん】
……っ!
【穂稀ちゃん】
エレキが言ってくれれば、ワタシも楽。
【白鷺くん】
………………。
【恵さん】
……、『だってパレッド! お前だけは居なくならないって! オレ、信じて…!』
【穂稀ちゃん】
『そんな保証、どこにも無かった。
エレキは、夢を見過ぎ』…。
でもそんなエレキが、
【白鷺くん】
あのさ。…ちょっと恵さん。止めていい?
【恵さん】
ええ、いいわよ。
【穂稀ちゃん】
何か問題ありました?
【白鷺くん】
ボクの台本、そんな気に入らない?
【穂稀ちゃん】
え、いえ? そんな事ないですよ。
【白鷺くん】
多々入ってるそのアドリブは何。
話の流れを変えるようなアドリブはやめろって団体の決まりだよね。
【穂稀ちゃん】
それはそうですけど…。
でも、
【白鷺くん】
でもじゃなくてさ。
こっちは話のテンポも流れも全部考えて書いてんの。やりにくいなら言ってくれって最初に言ったよね。
穂稀ちゃんがしてんのはアドリブじゃなくて改悪だよ。
【穂稀ちゃん】
………はい、
【恵さん】
穂稀ちゃん、白鷺くんの台本を演るのは初めて?
【穂稀ちゃん】
…え、いえ…二度目です。
初演の時に『ソウル・パールル』でヒロインの妹役をやりました。
【恵さん】
その時にアドリブは?
【穂稀ちゃん】
演出の緑木さんがアドリブは一切無しって練習前に言ったのでしませんでした。
【白鷺くん】
今回の演出、来門っスからね。過度じゃなければアドリブOKって。
ボクも多少のアドリブは許容出来るけど、今のは流石に見逃せない。
【恵さん】
そうね、私も少しやりにくかったわ。
穂稀ちゃん、声劇は流れが大事なのよ。脚本も演出もそれを考えて台本や舞台を作ってる。
勿論今までの台本にアドリブが無かったなんて事は無いわ。
修吉はアドリブ常習犯だし、阿左見さんも演出家として団体の決まりを破らなければアドリブ大歓迎って言ってるし。
だけれど、穂稀ちゃんは今、アドリブを入れて苦言を呈されている。貴方と他の演者との違いは分かる?
【穂稀ちゃん】
…………えーっと…………。
……ごめんなさい、分からないです。
【恵さん】
正直で結構。
それじゃあいくつか質問するから答えてちょうだいね。
貴方はパレッドがなぜここでエレキに別れを告げたか分かる?
【穂稀ちゃん】
……えっと、本拠点でジーズラットに会わせるため?
【恵さん】
それはどうして?
【穂稀ちゃん】
えっと、ジーズラットとエレキが実の兄弟だから?
【恵さん】
白鷺くん、答えを。
【白鷺くん】
さんかく、かな。
パレッドがあの二人を実の兄弟と知ったのはアジトに帰ってから。ジーズラットは自分のファミリーネームを知ったらパレッドがエレキに会いに行くとわかってんの。
パレッドは単純にジーズラットに逆らえないからエレキから離れたんだよ。
……物語を理解してないくせに一丁前にアドリブいれてドヤらないでくれる?
【恵さん】
白鷺くん、お口が悪いわよ。
でもそうね、もう再来月に本番を控えている状態でその認識はまずいわね。
穂稀ちゃん、アドリブが悪いとは言わないわ。だけれど話の流れを切るようなアドリブは良くない。
それにセリフの終わりにアドリブを入れるのもあまり好ましくないわ。他の人が入るタイミングを掴めないもの。
分かるでしょう?
【穂稀ちゃん】
………、はい……。
【恵さん】
…何度も言うようだけれどアドリブが悪い訳じゃないのよ。でもキャラの口調だけでそのキャラを理解したつもりで臨んだり、物語を噛み砕けていないのに世界観を読み解こうとしてみたり。
あまりにマヌケでしょ、そんなの。
アドリブも同じよ。
パレッドはエレキに恋愛感情なんて抱いていないし、エレキはパレッドの周りに渦巻く闇なんて知らない。良くも悪くも純粋な子だからね。
独り善がりは駄目よ。
自分の役だけじゃなくて相手の役も理解しなければ。相手のセリフも考えなければ。
声劇っていうのはね、自分も尊重されて相手も尊重されるから成り立つのよ。
それを、忘れないで。
【穂稀ちゃん】
…ごめんなさい…、私、全然そんなの…考えてなかった…ごめんなさい…!
【白鷺くん】
ま、反省してんならイイよ。
物語の大まかな流れは変えられないけど何か付け足したいセリフあるんなら言って。来門と協力して色々遣り繰りしてみるから。
【穂稀ちゃん】
…あ、りがとう…ございます…!
【恵さん】
ほら、泣かないの。
それじゃあ後一時間、頑張りましょう。
STORY END.
*修正 2021/06/29
白鷺の台詞を一部変えました。
内容に変更はありません。




