【声劇団体リュシエル①】
台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。
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♂2:♀1:不問0
有北川くん ♂ セリフ数:19
〈19歳の新人。いつも麗白さんに振り回されている。演技は下手め〉
麗白さん ♀ セリフ数:17
〈年齢不詳見た目ロリ。大人しい人だがズバズバと辛辣なことを言う。演技は上手〉
洋介さん ♂ セリフ数:9
〈二人の練習に偶然居合わせただけの人。麗白さんに理不尽を言われるのは慣れた。演技上手い〉
[あらすじ]《6分程度》
新人の有北川くんはいつもいつも監督に怒られます。それは演技が下手だから。声劇団の先輩である麗白さんにご指導をお願いした有北川くん。でも有北川くんは知りません。先輩の麗白さんは見た目からは想像できないほどに辛口な事を―――。
【麗白さん】
では有北川くん。稽古場へ行きましょう。
【有北川くん】
は、はいっ…!
【麗白さん】
今回はとりあえず台本を読むことに慣れましょう。噛んでも構いませんし、詰まっても構いません。
【有北川くん】
は、はい…!
【麗白さん】
私とてプロではありませんからあまり偉そうなことは言えません。ですが、貴方は確実に私より下手……あ、使ってましたか洋介さん。
【洋介さん】
あれ、麗白ちゃんに有北川くん。珍しい組み合わせだね。
一人で独白部分を練習してたんだ、使うならどうぞ。
【麗白さん】
ありがとうございます。
監督にやっとこさ怒られました。その棒読み何とかしないと参加させないって。
【洋介さん】
で、その教育係が麗白ちゃんって訳ね。有北川くんって声劇経験あるんだっけ。
【有北川くん】
えっと、少しだけ…。
罰ゲームとかでやった事あります…けど、そんな本格的なやつじゃなくて。ちょっと、その…エッチなやつです…
【麗白さん】
そんなものにド素人が面白半分に手を出してよく無事でいられましたね。
【有北川くん】
えっ!?
【洋介さん】
多分だけど聞く方も素人だったんじゃない?
【麗白さん】
なるほど、納得です。
有北川くん。何事も中途半端が一番恥ずかしいのです。きっと、今その音源があるのなら有北川くんは死にたくなると思いますよ。
【有北川くん】
えぇ…そんなにですか…?
【麗白さん】
知らぬ事は運命を仏にも変えるのですよ。
では頭からやりましょう。
【有北川くん】
は、はい…っ!
あ、『アルセーヌ』『僕には地位も金も無い』…じゃっ、あ、『だけれど、君を愛する覚悟だけは持っているんだ』
【麗白さん】
『だけれどフレッド。私は貴方に愛される覚悟なんかこれっぽちも無いのよ。私が持っているのは地位とお金だけ。使い道の知らない腐った宝物…』
【有北川くん】
だ、『大丈夫だ』『アルセーヌ』『僕と共に逃げよう』『こんな場所で』『君の心が壊れ』た……『てしまうよりずっといい』
【麗白さん】
『駄目よ、駄目っ! フレッド! そんな事をしてもし失敗したら…! …ああ、駄目よ…駄目だわ…私は私が壊れてしまうより貴方を喪う方がずっと怖い…』
【有北川くん】
『可哀想な、アルセーヌ』『こんな所で』か、『飼い殺されて』…………んん?
【麗白さん】
………………………。
【有北川くん】
く、『クタびた』『花のように』『なっていくんだね』
【麗白さん】
…………、有北川くん。
【有北川くん】
は、はい…っ!
【洋介さん】
有北川くん、斬新な演技をするねえ。
【麗白さん】
いいえ、この際下手すぎる演技については割愛しましょう。
場数を重ねれば馬鹿でも上手くなります。ですが、馬鹿は残念ながら教えてやらないと学びません。
有北川くん。どうして私が今、稽古を止めたと思いますか。
【有北川くん】
えっと、俺が下手だから?
【麗白さん】
今さっきの言葉を聞いていませんでしたか、ド素人。下手すぎる演技については割愛すると言いました。
そもそも最初から私は噛んでも詰まっても構わないと言いました。今更それに言及するほど性格は悪くありません。
貴方、台本を読んできませんでしたね?
【有北川くん】
イエッ?? ソンナコト、ナイデスヨ…??
【洋介さん】
うああ…分かりやすう…。
台本もらったら本番前に10回読み込めっていつも監督が言ってるよね?
【有北川くん】
だって今回、俺セリフ少ないから簡単にイケると思ったんですもん。
【麗白さん】
イケてないから私が演技指導してるんでしょうが。だってもヘチマも無いですよ、セリフが少なかろうがガヤだろうが『簡単な役』なんて存在しないんです。
だからどんなにベテランだろうが古株だろうが練習するんです、読み込みするんです。
それが声劇への最低限の礼儀だから。
【有北川くん】
……………………………っ。
【洋介さん】
まあ、ぐうの音も出ないよね。
ちなみに、『萎びた』は『萎びた』ね。草臥れたって読もうとしたんだろうけどどっちにしろ間違っているから、気を付けよう。
【麗白さん】
人間である以上、噛みますし詰まります。そこにだけ注目して下手だなんだと責めるつもりはありません。
ですが、漢字は調べれば分かります。そうでしょう?
【有北川くん】
はい…。
【麗白さん】
分からない事を聞く事は恥ずかしい事ではありません。寧ろ、知らないままでいる方が恥ずかしい事です。
それに、今更有北川くんが常用漢字やその他の特殊な読み方をする漢字を知らなくても何も驚きません。
【有北川くん】
何気にひどい…!
でも、そうですよね。読めないと困るのは自分だけじゃないですもんね…。
ごめんなさい…、反省します…。
【洋介さん】
いいねえ、青いね新人さんは。
僕も昔は監督や麗白ちゃんにたくさん怒られていたなぁ。
【有北川くん】
えっ?
【洋介さん】
ん?
【有北川くん】
洋介さんの昔って…あ、あれ…? じゃあ麗白さんって今おいくづッッッ!!!!!
【麗白さん】
女性に年齢を聞くなんて、全く。デリカシーが無いですね。では台本を読む前に読めない漢字講座でも開きましょうか。
【洋介さん】
有北川くん、大丈夫かい?
【有北川くん】
だ、だい゛じょ゛う゛ぶです゛……。
STORY END.




