【白の王女と黒の子猫】
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♂1︰♀1︰不問1
ナレーション 不問 セリフ数:8
王女 ♀ セリフ数:9
少年 ♂ セリフ数:4
[あらすじ]《3分程度》
焼け落ちた城。生暖かい焦げた匂いが、辺りを包んだ。身元すらも不明の遺体が転がる中、美しい少女はその目に強く生きる意思を抱いてはるか遠く、地平線の先を見つめていた――。
【ナレーション】
とある世界の隅っこで。
白いドレスに身を包んだ可憐な美少女は、薄汚れた黒い子猫を、服が汚れることも厭わずに抱き上げた。
【王女】
これからどうする?
アタシはどこへでも着いていくわよ
【ナレーション】
清々しくそう言う美少女は、後ろで焼け落ちている城を振り返った。
それから、はあ…と溜息を吐いてから足を1歩踏み出す。
【王女】
いい加減何か言って頂戴。
もう猫の振りをする必要は無いじゃない。…もう城の人間も、…お父様だって死んでしまったのだから
【ナレーション】
美少女の、いや。王女の声に彼女の腕の中にいる黒い子猫は不思議そうに鳴き声を零してから、人間じみた仕草でやれやれ、と首を振った。
【王女】
本当にこれからどうする?
海辺の別荘に行くのもいいわね。楽しそう
【ナレーション】
黒猫が王女の腕の中から飛び降りる。
【王女】
そうだわ、田舎に行ってパンを焼きながら暮らしていくのはどうかしら? 貴方、焼きたてのパン好きでしょう?
【少年】
……勝手に決めるなよ
【ナレーション】
王女は振り返る。
その先には薄汚れた少年が立っていた。先程まで居た黒い子猫の姿は無く、むすりと拗ねた様子の少年が居るだけだった。
王女は少しだけ肩を竦めるとドレスの裾を摘み、少年の方に近寄ればそっと跪いた。
【王女】
やっぱりそっちの姿の方が可愛らしいわ。
貴方だったらどこに行きたいのかしら?
【少年】
……あそこ。
【ナレーション】
少年が指を差した先には暗い森。
魔族が住んでいるとウワサの立つ深き森だった。
【王女】
あら面白そう。
【少年】
もうそのドレスも捨てたら? 僕が新しいの買ってあげるよ
【王女】
嫌よ。これは貴方が初めてアタシにくれたものじゃない。……盗んだものだけれど
【ナレーション】
笑い混じりに言った王女に、少年はまた拗ねたように顔を伏せた。
【王女】
ダメよ、前を向いて。
下を向いたら転んじゃうわ。そうでしょ? 猫の精霊さん
【少年】
……キャット・シーなんて今時珍しくもないでしょ
【王女】
人型を取れるキャット・シーなんて貴方ぐらいよ。
……さあ! 攻め落とされた城になんてもう用はないわ! 一緒に行きましょ、あの深き森へ
【ナレーション】
そう言って王女は立ち上がり、その場から歩き出した。呆れていた少年も、黒い子猫の姿に戻れば後を追っていった。
それから白いドレスがよく似合う王女様と、その王女様が連れていた黒い子猫を見た者は誰一人として居ないようだ。
STORY END.




