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三人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
16/48

【死を分つ生の執】

声劇タイトルは

【しをわかつせいのしゅう】と読みます。



台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂1:♀1:不問1


 謎の少年 ♂ セリフ数:15


 (はかな)げな美少女 ♀ セリフ数:18


 ナレーション 不問 セリフ数:12


[あらすじ]《5分程度》

 美少女が目を覚ましたのは良い香りのする花畑。自分は死んだのだろうか、とそこまで考えて立ち上がる。動かないと思っていた身体は自由に動くようだった―――。









【儚げな美少女】

 ・・・・・・ん。


【ナレーション】

 美少女は目を覚ます。(ほほ)(くすぐ)る良い香りに身じろいで、そこが花畑なのだとすぐに気が付いた。


 動かないと思っていた身体は自由に動く。立ち上がれもする。手で(こぶし)を作れる。普通に呼吸も出来れば、深呼吸をする事も出来るようだ。


【儚げな美少女】

 ワタシは死んでしまったのかしら。


【ナレーション】

 小首(こくび)(かし)げて花畑に座り込んでいた美少女は、心の中でヨシと一つ(うなず)いて立ち上がる。

 『冒険』という。目を覚ます前の世界では味わえなかった感覚を楽しむように、美少女は歩き出した。


(間を空けて)


 (しばら)く歩いていると、花畑の花の種類が変わった。美少女が今まで歩いていたのは黄色いコスモスのような花の絨毯(じゅうたん)だったけれど、美少女の目の前には青色の、少し刺々(とげとげ)しい花が広がっていた。


【謎の少年】

 そっちは危ないぞ。


【ナレーション】

 背後で突然声がした。

 美少女は青い花畑に目を奪われていたからか、少し驚いて振り返る。眠たそうな目をした少年が、片手にオモチャのような(やり)を持って突っ立っていた。


【儚げな美少女】

 そう。・・・ありがとう。


【謎の少年】

 ここから先は覚悟のあるものしか行けない。ボクにはまだ、その覚悟もないし。アンタは・・・ここに来たばっかだろ。


【儚げな美少女】

 えぇ。ここがどこだか分かるかしら。


【謎の少年】

 さあな。


【ナレーション】

 少年の答えは単純で不明快(ふめいかい)だった。美少女は、だけれど答えてくれたことに感謝して微笑んだ。


【謎の少年】

 アンタ・・・変わってるな。


【儚げな美少女】

 まぁ!


【ナレーション】

 美少女の微笑みにうげ、という顔をした少年。彼の言葉は美少女にとって一度も言われたことのない響きだった(ため)か、彼女は嬉しそうに一層(いっそう)微笑んだ。


【儚げな美少女】

 貴方について行ってもいいかしら?


【謎の少年】

 ・・・好きにしたら。


【儚げな美少女】

 ありがとう。


【ナレーション】

 美少女は少年について行く事にした。美少女にとって、少年が新鮮な存在だったからかもしれない。


【儚げな美少女】

 貴方はここへ来てどれくらい?


【謎の少年】

 さあな。


【儚げな美少女】

 本当にここがどこだか知らないのかしら。


【謎の少年】

 知らない。


【ナレーション】

 美少女の問いをぶっきらぼうに(かわ)してしまう少年。何を聞いても特に情報の得られなかった美少女は、プクリと頬を膨らます。


【儚げな美少女】

 ワタシは死んでしまったのかしら。


【謎の少年】

 それは違う。


【ナレーション】

 目を覚ました時と同じ疑問を口にすれば、今度は単純明快(たんじゅんめいかい)な答えを寄越(よこ)した少年。

 その答えに美少女は首を(かし)げた。


【儚げな美少女】

 それじゃあワタシが動けている理由が説明出来ないわ。


【謎の少年】

 でも、アンタは死んだ訳じゃない。


【儚げな美少女】

 じゃあどうして動かなかった身体は動いているの? 苦しかった呼吸が出来ているの? ワタシは死んでしまったのではないのかしら。


【ナレーション】

 矢継(やつ)(ばや)に少年へ疑問をぶつけた美少女は、何も言わない少年へ「ごめんなさい」と謝る。今のは、少し不安に思っていた八つ当たりだったと気が付いたのだ。


【謎の少年】

 死んだ訳じゃ、ない。


 生まれ変わる事が出来ないだけだ。


【儚げな美少女】

 ・・・・・・・・・ごめんなさい、よく。理解が追い付かないわ。


【ナレーション】

 やっとこさ答えをくれた少年にカタコトで返事をする美少女。

 生まれ変わる事が出来ない、それ(すなわ)ち。死んだということでは無いのだろうか。


【謎の少年】

 死んだら、生まれ変わる。


 でも生まれ変われないなら、死んだ事にはならない。(たましい)が次の(うつわ)を欲してないから。

 死を認めてない状態なんだ。


【儚げな美少女】

 ・・・・・・・・・・・・・・・。


【謎の少年】

 ・・・・・・・・・・・・・・・。


【儚げな美少女】

 ・・・・・・理、解しましたわ・・・。


【謎の少年】

 いや、してないだろ。


【ナレーション】

 美少女の強がりな言葉に突っ込んだ少年は、それから周りを見渡す。どこまでも続く黄色い花畑に、辟易(へきえき)した様子でため息を()いた。


【儚げな美少女】

 どうかなさったの?


【謎の少年】

 ・・・いや。・・・というか、いつまで着いてくるの。


【儚げな美少女】

 あら、「好きにしたら」と言ったのは貴方だわ。だったらワタシはワタシの好きにするだけよ。


【謎の少年】

 アンタ、図太(ずぶと)いな。


【儚げな美少女】

 まぁ、それも初めて言われたわ。

 貴方と居ると新鮮な事ばかりね。


【ナレーション】

 どこまでも呑気(のんき)な美少女に、少年はまたもやため息を吐く。この、どこかも分からない不思議で、(あや)しい花畑で。

 美少女は楽しそうに、少年はつまらなさそうに、()を進める。


 これは。

 いつかこの二人が、本当の『死に方』を見つけるお話。いつか、二人を死が(わか)つ物語である―――。












STORY END.

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