【死を分つ生の執】
声劇タイトルは
【しをわかつせいのしゅう】と読みます。
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♂1:♀1:不問1
謎の少年 ♂ セリフ数:15
儚げな美少女 ♀ セリフ数:18
ナレーション 不問 セリフ数:12
[あらすじ]《5分程度》
美少女が目を覚ましたのは良い香りのする花畑。自分は死んだのだろうか、とそこまで考えて立ち上がる。動かないと思っていた身体は自由に動くようだった―――。
【儚げな美少女】
・・・・・・ん。
【ナレーション】
美少女は目を覚ます。頬を擽る良い香りに身じろいで、そこが花畑なのだとすぐに気が付いた。
動かないと思っていた身体は自由に動く。立ち上がれもする。手で拳を作れる。普通に呼吸も出来れば、深呼吸をする事も出来るようだ。
【儚げな美少女】
ワタシは死んでしまったのかしら。
【ナレーション】
小首を傾げて花畑に座り込んでいた美少女は、心の中でヨシと一つ頷いて立ち上がる。
『冒険』という。目を覚ます前の世界では味わえなかった感覚を楽しむように、美少女は歩き出した。
(間を空けて)
暫く歩いていると、花畑の花の種類が変わった。美少女が今まで歩いていたのは黄色いコスモスのような花の絨毯だったけれど、美少女の目の前には青色の、少し刺々しい花が広がっていた。
【謎の少年】
そっちは危ないぞ。
【ナレーション】
背後で突然声がした。
美少女は青い花畑に目を奪われていたからか、少し驚いて振り返る。眠たそうな目をした少年が、片手にオモチャのような槍を持って突っ立っていた。
【儚げな美少女】
そう。・・・ありがとう。
【謎の少年】
ここから先は覚悟のあるものしか行けない。ボクにはまだ、その覚悟もないし。アンタは・・・ここに来たばっかだろ。
【儚げな美少女】
えぇ。ここがどこだか分かるかしら。
【謎の少年】
さあな。
【ナレーション】
少年の答えは単純で不明快だった。美少女は、だけれど答えてくれたことに感謝して微笑んだ。
【謎の少年】
アンタ・・・変わってるな。
【儚げな美少女】
まぁ!
【ナレーション】
美少女の微笑みにうげ、という顔をした少年。彼の言葉は美少女にとって一度も言われたことのない響きだった為か、彼女は嬉しそうに一層微笑んだ。
【儚げな美少女】
貴方について行ってもいいかしら?
【謎の少年】
・・・好きにしたら。
【儚げな美少女】
ありがとう。
【ナレーション】
美少女は少年について行く事にした。美少女にとって、少年が新鮮な存在だったからかもしれない。
【儚げな美少女】
貴方はここへ来てどれくらい?
【謎の少年】
さあな。
【儚げな美少女】
本当にここがどこだか知らないのかしら。
【謎の少年】
知らない。
【ナレーション】
美少女の問いをぶっきらぼうに躱してしまう少年。何を聞いても特に情報の得られなかった美少女は、プクリと頬を膨らます。
【儚げな美少女】
ワタシは死んでしまったのかしら。
【謎の少年】
それは違う。
【ナレーション】
目を覚ました時と同じ疑問を口にすれば、今度は単純明快な答えを寄越した少年。
その答えに美少女は首を傾げた。
【儚げな美少女】
それじゃあワタシが動けている理由が説明出来ないわ。
【謎の少年】
でも、アンタは死んだ訳じゃない。
【儚げな美少女】
じゃあどうして動かなかった身体は動いているの? 苦しかった呼吸が出来ているの? ワタシは死んでしまったのではないのかしら。
【ナレーション】
矢継ぎ早に少年へ疑問をぶつけた美少女は、何も言わない少年へ「ごめんなさい」と謝る。今のは、少し不安に思っていた八つ当たりだったと気が付いたのだ。
【謎の少年】
死んだ訳じゃ、ない。
生まれ変わる事が出来ないだけだ。
【儚げな美少女】
・・・・・・・・・ごめんなさい、よく。理解が追い付かないわ。
【ナレーション】
やっとこさ答えをくれた少年にカタコトで返事をする美少女。
生まれ変わる事が出来ない、それ即ち。死んだということでは無いのだろうか。
【謎の少年】
死んだら、生まれ変わる。
でも生まれ変われないなら、死んだ事にはならない。魂が次の器を欲してないから。
死を認めてない状態なんだ。
【儚げな美少女】
・・・・・・・・・・・・・・・。
【謎の少年】
・・・・・・・・・・・・・・・。
【儚げな美少女】
・・・・・・理、解しましたわ・・・。
【謎の少年】
いや、してないだろ。
【ナレーション】
美少女の強がりな言葉に突っ込んだ少年は、それから周りを見渡す。どこまでも続く黄色い花畑に、辟易した様子でため息を吐いた。
【儚げな美少女】
どうかなさったの?
【謎の少年】
・・・いや。・・・というか、いつまで着いてくるの。
【儚げな美少女】
あら、「好きにしたら」と言ったのは貴方だわ。だったらワタシはワタシの好きにするだけよ。
【謎の少年】
アンタ、図太いな。
【儚げな美少女】
まぁ、それも初めて言われたわ。
貴方と居ると新鮮な事ばかりね。
【ナレーション】
どこまでも呑気な美少女に、少年はまたもやため息を吐く。この、どこかも分からない不思議で、妖しい花畑で。
美少女は楽しそうに、少年はつまらなさそうに、歩を進める。
これは。
いつかこの二人が、本当の『死に方』を見つけるお話。いつか、二人を死が分つ物語である―――。
STORY END.




