*【浅はかな男女の出逢いについて】
こちらの台本は性別指定がある台本ですので【男前なオネエ】は男性(男声)が演じて下さい。ご理解とご協力をお願い申し上げます。
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♂1:♀1:不問1
無表情の女 ♀ セリフ数:13
男前なオネエ ♂ セリフ数:13
ナレーション 不問 セリフ数:9
[あらすじ]《6分程度》
結婚式直前。夫になるはずだった男から突然別れを告げられ呆然とする女は自棄酒をしに、とあるバーへ足を運んでいた―――。
【無表情の女】
マスター、もう少し強いお酒あるかしら。
【ナレーション】
女の注文にバーのマスターは一つ頷く。あまり多弁ではないのか、ポツポツと話すのを聞くに、結婚式を来週に控えた今日。女は夫になるはずだった男に別れを告げられたらしい。
【無表情の女】
別れて良かった。……私、思ったより彼の事好きじゃなかったみたい。
【ナレーション】
俯きがちにそう言う彼女の前へ、色鮮やかなカクテルが置かれた。
強い酒を頼んだだろう、と彼女がマスターを見ればその視線を受けたマスターはす、と手を端の席へ向けた。
【男前なオネエ】
随分荒い飲み方してるじゃない? ああ、突然ごめんなさいね。それ、飲みやすいからどうぞ。
【無表情の女】
ど、……どうも……。
【ナレーション】
どうやらマスターへ愚痴る彼女に、常連らしきオネエが気を利かせたらしい。
彼女がカクテルに口をつけた隙に、マスターへ目配せをしたオネエは、自分が飲んでいた酒を一旦置いて、彼女の方を向いた。
【男前なオネエ】
自棄酒なんてお肌に悪いわぁ。アタシで良ければお話聞くし、ちょっとだけ色々吐き出してみない?
【無表情の女】
どうして、そんなお世話を焼いてくれるのかしら。
【男前なオネエ】
ふふ、アタシはいつだって乙女の味方なのよ。
【ナレーション】
彼女にウィンクをしたオネエに、胡散臭そうな目線を向けるものの、やがてため息をついてまたポツポツと話し始めた。
【無表情の女】
彼が言うには『本当の愛』を見つけたらしいわ。結婚式を来週に控えといて、そう宣ったのだから『本当』にそうなんでしょうね。
【男前なオネエ】
……んん、仮にもアンタの昔の男な訳だし、悪く言うのも気が引けちゃうんだけど…もしかしてその男…あんまり頭がよろしくないのかしら。
【無表情の女】
七年も一緒に居たけど、私もそう感じてるから平気よ。
婚約指輪ですら、その彼女さんにあげるからって取り上げられたし、本当に別れて良かったって思うわ。
【男前なオネエ】
やだ、何それ!? その男、本当に馬鹿じゃないの!?
【ナレーション】
そんな失敗談を話しながら、女は傍らのオネエに目を向ける。向けられた目に首を傾げたオネエは、それなりに顔の整った人物らしかった。
まぁだからと言って、すぐに惚れ込むほど彼女も馬鹿ではない。それに馬鹿な男によって、馬鹿な目に遭った直後だ。暫く恋愛は懲り懲りだった。
【無表情の女】
でも結婚式どうしましょう。
また親戚のおじ様達が五月蝿そう…。
【男前なオネエ】
あら、放っておけばいいじゃない? 幸先短い小鳥なんて、勝手に囀らせとけばいいのよ。
【無表情の女】
貴方みたいな考え方が出来れば苦労しないわ。でもそうね…暫くは独りでいたい。
【男前なオネエ】
まぁ今日はアタシが奢ってあげるから好きなの飲みなさい。ただし! 限度を越して飲むのは駄目よ。こういうのは後でお肌に響くんだから。
【ナレーション】
人差し指を立てて彼女にそう言ったオネエは、マスターへお酒のお代わりを注文する。
その様子を見て爛れていた気持ちがす、と消えたような気がした彼女はクスリと笑う。
【無表情の女】
……ふふ、不思議。男なんて懲り懲りだと思ってたけど。
【男前なオネエ】
あら、アンタ。笑うと案外可愛いのね。
【無表情の女】
…………そんな事、初めて言われた。
ねえ、私の話ばかりはつまらないわ。貴方の話も聞きたい気分。
【男前なオネエ】
意外にグイグイ来るわね。…んふふ、いいわよ。
【ナレーション】
得意げに笑ったオネエは、巧みな話術で彼女を楽しませた。バーのマスターはそんな二人をちらりと盗み見てからグラスを磨く。
そんな和やかな時間は彼女がそろそろ、と空のグラスを置いた事で終わった。
支払いを済ませようとした彼女に、オネエは立ち上がってそれを制した。
【男前なオネエ】
あら、アタシが奢るって言ったでしょ?
【無表情の女】
でもそういう訳にはいかないわ。
私、こういうのには五月蝿いのよ。
【男前なオネエ】
なら、またここへ来て? その時にアンタのオススメを飲ませてちょうだいな。
【無表情の女】
……貴方がいつ来るか分からないのに?
【男前なオネエ】
じゃあ連絡先を交換しましょ。
一夜だけの相談相手、なんて味気ないわ。
【ナレーション】
何だかオネエの口車に乗せられている気がしないでもない彼女だったが、素直に連絡先を交換した。
男なんて懲り懲りだと思っていたけれど、小さな優しさにきゅんと来てしまった浅はかな自分に、彼女は少し、ほんの少しだけ救われた気がした。
【無表情の女】
……それじゃあ、また。
【男前なオネエ】
えぇ、また逢いましょう。
【ナレーション】
カラン、とドアベルを鳴らして、夜の街へ歩いていった彼女の足取りは、どこか清々しく、そして前向きになっていたのだった。
STORY END.




