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三人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
15/48

*【浅はかな男女の出逢いについて】

こちらの台本は性別指定がある台本ですので【男前なオネエ】は男性(男声)が演じて下さい。ご理解とご協力をお願い申し上げます。



台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂1:♀1:不問1


 無表情の女 ♀ セリフ数:13


 男前なオネエ ♂ セリフ数:13


 ナレーション 不問 セリフ数:9


[あらすじ]《6分程度》

 結婚式直前。夫になるはずだった男から突然別れを告げられ呆然(ぼうぜん)とする女は自棄(やけ)酒をしに、とあるバーへ足を運んでいた―――。






【無表情の女】

 マスター、もう少し強いお酒あるかしら。


【ナレーション】

 女の注文にバーのマスターは一つ(うなず)く。あまり多弁(たべん)ではないのか、ポツポツと話すのを聞くに、結婚式を来週に(ひか)えた今日。女は夫になるはずだった男に別れを告げられたらしい。


【無表情の女】

 別れて良かった。……私、思ったより彼の事好きじゃなかったみたい。


【ナレーション】

 (うつむ)きがちにそう言う彼女の前へ、色鮮やかなカクテルが置かれた。

 強い酒を頼んだだろう、と彼女がマスターを見ればその視線を受けたマスターはす、と手を端の席へ向けた。


【男前なオネエ】

 随分(ずいぶん)荒い飲み方してるじゃない? ああ、突然ごめんなさいね。それ、飲みやすいからどうぞ。


【無表情の女】

 ど、……どうも……。


【ナレーション】

 どうやらマスターへ愚痴(ぐち)る彼女に、常連らしきオネエが気を()かせたらしい。

 彼女がカクテルに口をつけた(すき)に、マスターへ目配せをしたオネエは、自分が飲んでいた酒を一旦置いて、彼女の方を向いた。


【男前なオネエ】

 自棄(やけ)酒なんてお肌に悪いわぁ。アタシで良ければお話聞くし、ちょっとだけ色々吐き出してみない?


【無表情の女】

 どうして、そんなお世話を焼いてくれるのかしら。


【男前なオネエ】

 ふふ、アタシはいつだって乙女の味方なのよ。


【ナレーション】

 彼女にウィンクをしたオネエに、胡散臭そうな目線を向けるものの、やがてため息をついてまたポツポツと話し始めた。


【無表情の女】

 彼が言うには『本当の愛』を見つけたらしいわ。結婚式を来週に(ひか)えといて、そう(のたま)ったのだから『本当』にそうなんでしょうね。


【男前なオネエ】

 ……んん、仮にもアンタの昔の男な訳だし、悪く言うのも気が引けちゃうんだけど…もしかしてその男…あんまり頭がよろしくないのかしら。


【無表情の女】

 七年も一緒に居たけど、私もそう感じてるから平気よ。


 婚約指輪ですら、その彼女さんにあげるからって取り上げられたし、本当に別れて良かったって思うわ。


【男前なオネエ】

 やだ、何それ!? その男、本当に馬鹿じゃないの!?


【ナレーション】

 そんな失敗談を話しながら、女は(かたわ)らのオネエに目を向ける。向けられた目に首を傾げたオネエは、それなりに顔の整った人物らしかった。


 まぁだからと言って、すぐに惚れ込むほど彼女も馬鹿ではない。それに馬鹿な男によって、馬鹿な目に()った直後だ。(しばら)く恋愛は()()りだった。


【無表情の女】

 でも結婚式どうしましょう。

 また親戚(しんせき)のおじ様達が五月蝿(うるさ)そう…。


【男前なオネエ】

 あら、放っておけばいいじゃない? 幸先(さいさき)短い小鳥なんて、勝手に(さえず)らせとけばいいのよ。


【無表情の女】

 貴方みたいな考え方が出来れば苦労しないわ。でもそうね…(しばら)くは独りでいたい。


【男前なオネエ】

 まぁ今日はアタシが(おご)ってあげるから好きなの飲みなさい。ただし! 限度を越して飲むのは駄目よ。こういうのは後でお肌に響くんだから。


【ナレーション】

 人差し指を立てて彼女にそう言ったオネエは、マスターへお酒のお()わりを注文する。

 その様子を見て(ただ)れていた気持ちがす、と消えたような気がした彼女はクスリと笑う。


【無表情の女】

 ……ふふ、不思議。男なんて()()りだと思ってたけど。


【男前なオネエ】

 あら、アンタ。笑うと案外可愛いのね。


【無表情の女】

 …………そんな事、初めて言われた。


 ねえ、私の話ばかりはつまらないわ。貴方の話も聞きたい気分。


【男前なオネエ】

 意外にグイグイ来るわね。…んふふ、いいわよ。


【ナレーション】

 得意げに笑ったオネエは、(たく)みな話術で彼女を楽しませた。バーのマスターはそんな二人をちらりと盗み見てからグラスを磨く。


 そんな(なご)やかな時間は彼女がそろそろ、と(から)のグラスを置いた事で終わった。

 支払いを済ませようとした彼女に、オネエは立ち上がってそれを制した。


【男前なオネエ】

 あら、アタシが(おご)るって言ったでしょ?


【無表情の女】

 でもそういう訳にはいかないわ。

 私、こういうのには五月蝿(うるさ)いのよ。


【男前なオネエ】

 なら、またここへ来て? その時にアンタのオススメを飲ませてちょうだいな。


【無表情の女】

 ……貴方がいつ来るか分からないのに?


【男前なオネエ】

 じゃあ連絡先を交換しましょ。

 一夜(いちや)だけの相談相手、なんて味気(あじけ)ないわ。


【ナレーション】

 何だかオネエの口車(くちぐるま)に乗せられている気がしないでもない彼女だったが、素直に連絡先を交換した。


 男なんて()()りだと思っていたけれど、小さな優しさにきゅんと来てしまった浅はかな自分に、彼女は少し、ほんの少しだけ救われた気がした。


【無表情の女】

 ……それじゃあ、また。


【男前なオネエ】

 えぇ、また逢いましょう。


【ナレーション】

 カラン、とドアベルを鳴らして、夜の街へ歩いていった彼女の足取りは、どこか清々しく、そして前向きになっていたのだった。









STORY END.

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