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三人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
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【やんごとなき事情】

台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂1:♀1:不問1


 爪を噛む女 ♀ セリフ数:15


 気怠(けだる)げな男 ♂ セリフ数:16


 ナレーション 不問 セリフ数:11


[あらすじ]《5分半程度》

 男と女は森の中を歩いていた。けもの道のようで足場は悪く、スグ横は(がけ)。しかし(おび)える様子もなく進んでいく男女はポツポツと言葉少なく会話をし始めた―――。






【爪を噛む女】

 っまだ着かないの?


【気怠げな男】

 もーちょっと待ってって…。

 さっきから文句言い過ぎ。


【爪を噛む女】

 文句も言いたくなるわよ。

 突然夜中に電話来たと思ったら目立たない格好して外出ろだなんて。


【気怠げな男】

 まあまあ。そうカッカせずに着いてきてよ。


【爪を噛む女】

 ったく。仕方ないわね…。


【ナレーション】

 森の中をズカズカと進んでいく男女。男の方が誘ったらしく歩きにくそうにしている女を置いてさっさと奥へ進んでしまう。

 一方、女の方は先へ歩いていく男を苛立(いらだ)ちながら追い掛けて行く。ガリ、と苛立ちと共に爪を噛んだ女は声を上げた。


【爪を噛む女】

 あーもう! 蜘蛛(くも)の巣はそこらじゅうにあるし、うわっ何これ何か踏んだっ


【気怠げな男】

 うっさいなぁ、もう。

 そろそろ着くから我慢してって…。


【ナレーション】

 頭を()いて苦言(くげん)(てい)した男はそのまま先へ進む。女も慌てて追えば、少し広い所に出た。

 ここが目的地? と女が男へ問えばそうだ、と男が答えた。


【爪を噛む女】

 で? 何、こんな所に何の用?


【気怠げな男】

 そろそろ時効(じこう)かなってさ。


【ナレーション】

 そう言うと男はどこに仕舞(しま)っていたのかシャベルを取り出して地面を掘り出した。時効? 穴掘り? こんな真夜中に? そこまで考えて女は慌てた。まさかこの男、人を殺して埋めたのでは、と。


【爪を噛む女】

 ち、ちょっと待って!?

 それ、下に何が埋まってるの!?


【気怠げな男】

 出てきてからのお楽しみ。予想しててよ


【ナレーション】

 今のところその予想は最悪の事態になっていてアテにはならない。男とは随分な付き合いだ。確か大学のサークルで初めて会った。その時から何を考えているのか良く分からない奴だったと思っていたが…まさか。


【気怠げな男】

 ホントはもっと早く見せたかったんだけど色々事情があってさ。


【爪を噛む女】

 色々……事情……、そ、そうなの…へぇ……


【ナレーション】

 最早引いた声しか出てこない女はザク、ザク、とシャベルでどんどん穴を掘っていく彼から目を()らしたくなったが意地で見つめ続けた。

 もし本当に最悪の予想が当たっていて彼が人を殺して埋めていたとしても何とか説得させようと思ったのだ。


 その時、彼のシャベルにカツンと何かが当たる音がした。


【気怠げな男】

 あ。…あった。


【ナレーション】

 あったじゃねぇよ。


 女はそう思ったがあえて口にはしない。したくもない。

 女は男がシャベルを放り出し、手でそれを掘り起こしているのを見てクラっと目眩(めまい)がした。


【気怠げな男】

 ……い。おい。何やってんの。


【爪を噛む女】

 へ? あ、あぁ。地面に埋まってたのって…その(かん)


【気怠げな男】

 うん、あと200個ある。


【爪を噛む女】

 にひゃ……!?

 な、何よこれ! 一体なんの為にこんな缶を…!


【気怠げな男】

 やっぱり覚えてないか。


【ナレーション】

 男が女に差し出したのは小さな缶。分かりやすく言えば鯖の缶詰などに使われている缶である。

 女は予想が外れてホッとしたのと同時に訳の分からない状況に陥って混乱した。男はそんな女の様子にため息を吐いてポケットから一枚の紙を取り出す。


【気怠げな男】

 読んで。


【爪を噛む女】

『ほんとうに おひっこし しちゃうんですか? わたし、あなたと はなしたいこと もっと たくさん ありました。もし、どこかで あうことが あれば たくさんの いれものに おもいを つめこんで また とどけてください』……? そう言えば引っ越しちゃう好きな人にこれを書いて渡したわね。

 昔はみんなでタイムカプセルごっこをしてて缶や入れ物に手紙を入れるのが流行(はや)ってて……って…アアアアアアアアッ!!


【ナレーション】

 手紙を読んだ女は(しばら)く昔に(ふけ)っていたがやがて思い出したのかビシィッと目の前の男を指差した。


【気怠げな男】

 うっっっるさ……。

 ってか思い出すの遅くない? お陰でこんな遅くなっちゃったんだけど。


【爪を噛む女】

 な、ななな……! なに、い、って……!


【気怠げな男】

 だから、俺も好きだっつってんだけど。もう再会もしたし、いい加減缶埋めるの飽きたし、『時効』かな、とね。


【ナレーション】

 はぁ、と再度面倒そうにため息を吐いた男は未だに口をパクパクとさせている女の額にデコピンを御見舞(おみまい)した。


【爪を噛む女】

 いったぁッ! 何すんのよ!

 っていうか子供の頃のそんなちゃちな約束今まで守ってたなんて馬鹿みたいだわ! 私帰るわ!


【気怠げな男】

 その耳が赤いのは寒さのせい? 今、夏なんだけど。


【爪を噛む女】

 〜〜〜〜〜〜〜っ!!


【ナレーション】

 女は(きびす)を返してズカズカと帰って行こうとした足を止め、チラリと後ろを見遣(みや)って満足げにこちらを見る男へ言葉を(こぼ)した。


【爪を噛む女】

 ……あ、暑いから……っ!


【気怠げな男】

 あっそ。そんじゃあ、穴埋めるまで待っててよ。帰ったらやる事あるし。


【爪を噛む女】

 や、やる事?


【気怠げな男】

 まぁ、帰ってからのお楽しみって事で。


【ナレーション】

 男はそう言って地面に置き去りにされていたシャベルを拾って穴を再度埋め始めた。

 女がそれを放って帰る事はもうしなかったという。








STORY END.

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