【空が綺麗でたまらない】
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♂1:♀1:不問1
自殺願望少年 ♂ セリフ数:18
自称天使 ♀ セリフ数:15
ナレーション 不問 セリフ数:9
[あらすじ]《5分程度》
学校の屋上。俯いた少年は遥か下の地面を見つめていた。実はこの少年は自殺願望を持っていた。その口に笑みを貼り付けたまま、少年の足は空中に躍り出た――。
【自殺願望少年】
うん、怖くない。怖くない。
痛いのは一瞬だ、大丈夫。大丈夫。
だってこれから苦しくなるより一瞬痛い方がガマンできるし。
【ナレーション】
小柄な少年は屋上でもだもだしていた。この少年はこの屋上から飛び降りて地面へ叩きつけられたい系男子である。
まぁ、有り体に言えば『自殺志願者』とでも言うべきか。
【自殺願望少年】
うん! 男は度胸!
痛いのは一瞬、大丈夫!
【ナレーション】
馬鹿の滲み出るこの少年はこう見えても本気で自殺したいのだ。
そうしてその足を空中へ躍り出す。
と、同時に何かが少年の前へ飛び出た。
【自称天使】
ちょっと待ったぁぁああああ!!
【自殺願望少年】
うわぁあ! 何だ!? 不審者!?
【自称天使】
何だかんだと言われたら! 答えてあげるが世の情け!
【自殺願望少年】
あ、それ著作権的に駄目な奴。
【自称天使】
おぉう…思ったより的確なツッコミしてくれるじゃない。
【ナレーション】
少年の前へぷかぷかと浮かびながら現れたのは二対の羽を生やした…まぁ、所謂、天使とかいうものだった。
顔は可愛いが登場一発目に危ないネタを突っ込みそうになった辺り、侮れない奴である。
【自殺願望少年】
あの、誰ですか?
疲れ過ぎた幻覚ですかね?
【自称天使】
ヒトを勝手に幻覚扱いすんじゃないわよ! 私は天使! 天国を飛び回りながら神様にイタズラして生活しているの!
【自殺願望少年】
何か思ってた天使と違う…。
【自称天使】
勝手に幻想を抱かないでくれる? そういう他人が勝手にイメージした自分って逆にプレッシャーになる事ばっかりだから。
んで? 何で自殺しようとしてたの?
【ナレーション】
自称天使は少年の隣へ座って問いかける。
ふぁあ、と欠伸をする自称天使に少年は嫌そうな顔を浮かべながらもぶつぶつと答えた。
【自殺願望少年】
……さっきキミが言ったじゃないか。他人が勝手にイメージした自分がプレッシャーになるって。
学校で虐められたとかじゃないんだよ。家で不自由してるとかじゃないんだよ。
ただ、『真面目で面白みがない僕』は本当に『つまらない』みたいなんだ。
【自称天使】
ふーん。
で、これが遺書って訳ね?
『お父さん、お母さん。
先立つ不幸をお許しください』
【自殺願望少年】
うわぁあ! 読むなよ!
【自称天使】
何よ、読まれる為に書いたんでしょ? ならいいじゃない。
【自殺願望少年】
死んだ後に読まれるものであって生きてるうちに読むものじゃないだろ! それに本人の前で!
【自称天使】
……まぁ、そうね。
んで? 死んでどうするの?
みんなが後悔してアナタへの対応を変えたくてもアナタは死んじゃってるのに。
【自殺願望少年】
別に…それでいいし…。
勝手に…後悔すればいい…。
【自称天使】
あら、そう?
じゃあ私も勝手にお節介焼いちゃうわね。
【自殺願望少年】
は?
【ナレーション】
自称天使はふふん、と笑ってどこからか取り出した小さな杖を翳した。
そうしてクイっとそれを振れば空中に何かの映像が流れる。
それは少年の遺影を抱いて泣き崩れる両親の姿だったり、
教室で少年の座席に置かれた花瓶と綺麗な花であったり、
それを見て悲しそうな顔をするクラスメイトや担任教員だったり、
毎日花を変えてくれるのは少年の…好きな人だったりした。
【自殺願望少年】
…………。何だよこれ…。
【自称天使】
アナタが死んだ後の世界よ。
……。
“勝手に後悔したらいい”?
【自殺願望少年】
だって、こんなの……。
嘘かもしれないじゃないか……!
【自称天使】
うん。でも本当かもしれないわ。
【自殺願望少年】
………………。
【ナレーション】
黙り込んだ少年に自称天使は得意げに微笑んだ。そうしてずっと俯いている少年へとある提案をしてみる。
【自称天使】
ねえ、空を見上げてご覧なさいよ。
【自殺願望少年】
……はあ?
【自称天使】
今日は良い天気よ?
【ナレーション】
少年はそう言う天使を少し睨んでいたが、やがて空を見上げて、ああ。と低く泣きそうな声を絞り出した。
【自殺願望少年】
何で…こんな時ぐらい曇ってくれればいいのに…。
【自称天使】
本当にね。私もそう思うわ。
【自殺願望少年】
……綺麗だ。
【自称天使】
えぇ、そうね。本当に嫌になるくらいね。
【ナレーション】
少年は暫く空を見上げていたがふと思い立って隣を見た。
【自殺願望少年】
ねえ、そう言えばキミって本当にてん……し……
【ナレーション】
少年は目を見開いた。
もう、あの天使の姿はどこにも無かったのだった。
STORY END.




