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33.収穫

 



1550年 閏5月(天文十九年 閏月)



 今年は五月が閏月として二回続くのでややこしいが、先の五月の末のことだ。


 一周忌も無事に終わり、ひと月ほど過ぎたころに宗珊が頼みごとをしてきた。話の内容はなんとなく察してはいたが、やはり出兵の件だった。


 お父様の無念を晴らすべく西園寺を討ち滅ぼす事を家臣一同が望んでいるそうだ。


 今、政は下向してきた房通が主体となり家司の三人と家老衆が行っているため俺はほとんど関わっていない。確認が必要な書類だけに朱印を押しているくらいだ。外交も含めて、今の一条家はお父様が居た時と然程変わりはなく安定していると言ってもいい。だから米作りをしている余裕があるのだが、これでいいのだろうかとは思ってはいた。


 ただ、戦となると全く分からない。

 一条家のみで西園寺家と戦えないだろうから大友家に協力する形での出兵になると思うが、今までも勝ちきれていない。それに、当主が元服前であるからか今年は要請が来ていないし、しばらくは来ないと思われる。というのも、大友義鑑が廃嫡を企て義鎮(後の宗麟)に殺されている。


 あと戦は房通が許さない、基本的に公家は戦が嫌いだから。戦が嫌いというよりも荘園を横領している武家を嫌っていると言ったほうがいいかもしれない。


 摂家ともなるとエリート意識がある。

 それが全てではないが、武家と同じように戦で事を決めるのを忌避していそうだ。


 別に、お父様の敵を討ちたくないという事ではない。西園寺家には憤りも感じるし、暗殺を行ったことも厭わしい。いつかは西園寺へと赴くことになるだろうが房通がいる今は難しいのも事実だ。


 二期作が上手くいっているのに徴兵されると米作りに支障をきたすとも考えてしまうし。


 まぁ、俺は戦場にいくことは無いと思う。

 正直、少し見てみたくはあるが例え希望したとしても許されないだろう。


 ただ…… 昨年の襲撃もそうだったが目の前で殺し合いが行われてもどこか他人事のような気がしてしまう。自分が戦をするなど考えられないし、刀を向けられることを想像すると恐ろしい。


 現状では西園寺との戦は保留にするしかない。




 ◾️◾️◾️




 一回目の米収穫を迎えた。

 思ったよりも順調に収穫できたが問題がなかったわけではない。


 五月に入り、いもち病が発生した田があったのだ。幸いにも広がる前に発見でき、対策として一度田の水を抜くことにした。


 水を抜くことで根の張りがよくなり稲が強くなるそうだ。沢からの水を塞き止め、畦の一部を壊し田の水を排水出来るように施した。



 そのことで思い出したが、田植え前の苗に負荷を与えて力強く根付くようにすることと食材で構成された農薬を次の田植えから取り入れたい。


 食材農薬の材料は『よもぎ・しょうが・唐辛子・酢・アルコール・ニンニク・にら・茶殻・牛乳』などがある。


 材料の中で入手が難しいものは唐辛子・酢・牛乳。唐辛子はだれも知らないようで日本原産ではなさそうだ。まだ伝わってないのかもしれない。


 酢はこの時代でもあるが、高価で流通量が少ないので農薬として大量に使えない。そのため木酢液を使用する。今は牛乳を飲む習慣は無いが、律令時代には役職として牛乳を扱う機関があった。まぁ、やり方を伝えただけでは乳搾りは出来ないとは思うが。


 その他のものは名前は違うが栽培されている。

 ただ、アルコールっていってもにごり酒しかないが大丈夫だろうか。




 調べたところ、懸念していた蝗害(こうがい)についてはほとんど災害の記録がなかった。


 三国志ものなんかだと蝗害による飢饉が起きていたが、日本では被害が少ないのかもしれない。もしくは四国だから被害が無いということもあり得るが、他家でも被害の噂が多くないらしいので心配しなくても大丈夫ということかもしれない。


 ただ、バッタは多くないがウンカなどの害虫はいるのだが、それよりも鳥獣による被害の方が多い。案山子を作り、動物は本能的に大きな目を恐れる傾向にあるので顔には大きく目玉を描いた。



 後から思い出して千歯扱きの他に脱穀台を手配した。いつも追加、追加で頼むのが悪いところだな。


 千歯扱きで脱穀しきれない分は、台の上面がすのこ状になっている脱穀台に穂束を打ち付ける。それでも残るようであれば扱き管を使うのがいいと思う。




 手配した後に思い出したので羊の毛を刈った。


 去年は忘れて刈れていなかった。33頭の内10頭は結構な量があり、世界記録の羊程ではないにしろ結構モコモコだった。短刀で毛を刈ったのだが、毛刈りハサミを作らないと羊を傷つけてしまう。


 動画で見た羊の毛切りでは、バリカンを使っていた。代用品として糸切り挟みを大きくした物だったと思うがどうだろうか。


 毛に付着している異物を取り除きつつ水で洗い、ある程度きれいになったら再度熱湯で冷水では取りきれなかった汚れを落とす。


 ハンドカーダーは研ぐ前の針を曲げて木板に打ち付けた後に先端を少し曲げて作った。記憶の物とだいぶ違う気がするが、どこがどう違うか分からない。ハンドスピンドルも作ったが何か違う。


 気にしても仕方ないので、不具合があれば改善していこうと思う。


 

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