28.正義
1549年 11月(天文十八年 霜月)
九州から来ていた行商人の情報で島津の領地で布教活動をしていると知り、人を急がせた。
前から異国の者の出入りを探っていた。一度、知らせを受けていながら、お父様のことがあって忘れていた。
家中の者に主要な港へと探しに行ってもらった。移動していたら見つけるのに苦労する。まずは、行商人から教わった地から探してもらうのが間違いない。結構な人数を動員した。
戻った者から話を聞いた。
布教は他の者に任せザビエルと通訳だけで土佐へ来てくれるらしい。ありがたい。だが、それはそうだろうという気もした。なんせ帝へ親書を届けたいとの話。島津にいてはどうしようもない。
その点、一条家は摂関家であり先の関白が身内にいる。話を通すには一条に来た方が利がある。
まぁ、その辺を説明してもらい足を運んでもらうことになった。
南蛮の人は母国語がポルトガル語なのかスペイン語なのか分からん。分かったところで話せるかというと話せないが、言葉が通じれば話がしたいとは思う。
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ザビエルが来たけど、何か衆道はダメ的なこと言ってる。
でも、全く分かってない。
世の中には、いろんな人がいる。
人に迷惑をかけずに自分達だけで楽しむのならいいのではないだろうか。常識というのは人によって少し異なることがある。特に顕著なのが性的な事なのだ。時代や国が違えば尚更のこと、常識に囚われてはいけない。
何だか、関わると面倒なことになりそうな気がする。お土産を渡してさっさと帰ってもらおうか。
蔵にあった余り物の爪切りと洗濯板と穴あけパンチを渡そう。出来れば恩に着てほしいが、二度と来てくれなくてもいい。渡したお土産を確認しながら、通訳の男と何やら話している。
「~~~~~~~~~~~~~」
「これらは素晴らしい発明品だ、と申しております」
………… なに?
「この爪切りも大胆かつ機能的で素晴らしく、更には穴あけパンチが大変に画期的だと。こんな素晴らしい物をありがとうございます、と申しております」
ふふ、いいやつらだな。
これからは長い付き合いになりそぅだ。
これからも、よろしく。
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なんか一気に要求すると警戒されそうだし小まめに頼む。
まずは絶対に外せない、南蛮絞りと古代コンクリートの製造方法、ローマへ親書を携えた将兵の同行を頼んだ。ただ、勝手に親書なんて作って大丈夫だろうか?
日本を代表してなんて事は書く気はないけど。
もし、それでもいいなら一条家が窓口になれるのは大きい。最悪、本家に泣きついて親書を作ってもらえないかお願いしてみるつもりだ。
大砲も頼みたかったけど、会っていきなり『最新の武器頂戴』って、なかなか言えない。何こいつら、信用してないのに武器なんて渡すわけないだろって思われたらな、信頼構築してからでないと次に頼む時に渋られる可能性もある。
それと印籠と根付を作れば売れるかもしれない。印籠ショップを開くにあたっては、品物の数を揃えてからじゃなければ真似される。やるなら一気にやらねば。
ブランドイメージも大切だ。21世紀のイメージ戦略により版画で広告を作る、戦国時代で初のポスターだ。
各主要都市でのイメージタレントによる宣伝、更には高位の公家なども使用しているという高級感を植え付け、極め付けはオリジナルキャラクターの作成もできたりして。
あとはアクセサリーショップも作る。
ネックレス、ブレスレット、腕輪、指輪などその他にも思いついた物も作ってみよう。革や木で作り削ったり焼き印をつけたり。穴を開けて模様にしたり。金属だと金属アレルギーもあるし、銀と金が圧倒的に足りない。
木なら大量に作れるため、作って作って作りまくる。お店も出来ればコンクリートで造りたい。外側に漆喰を塗って真っ白で清潔感溢れる感じ、中はモダンな店とか。
買い付けに来た商人、行商人など数量や男女の違いによる差別などもしない。そうする事で心地光明であり無私無偏の公家大名だと評判になるだろう。その噂も流そう。
プロパガンダによる正義の公家大名の誕生だ。
周辺大名が攻めてこようものなら即座に悪と判じられる事だろう。何せこちとら正義の大名だから。
そして、兼定が率いるファッション流行の最先端となるだろう。




