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21.羊毛

 


1548年 12月(天文十七年 師走)



「十月の(すえ)に三好筑前守殿は細川摂津守殿および遊佐河内守殿と結び謀反。現在は京の榎並城を包囲しておる由に御座います」


 市正が政所で確認してきた内容を教えてくれた。

 信長、信長で忘れてたけど、三好長慶が細川に反旗を翻して畿内を支配するんだよな。細川政権の崩壊だ。


 でも、これも可哀想ではある。

 父親は主君の謀略によって起きた一揆によって自害させられてる。切腹した際は内臓を天井に投げつけるほど恨み骨髄だったようだ。それでも父の恨みを飲み主君と一揆の和睦を成立させたのに御料所は奪われたまま。還付願いをしても駄目。十六年も経って父の死の真相が分かった時には怒髪天を衝く勢いだった事だろう。


 うろ覚えだけど。とにかく酷い仕打ちを受けてきた苦労人で能力値めちゃ高いイメージ、特に政治。それに比べて兼定は……天と地ほどかけ離れた圧倒的な数値差を思い出し、涙が出そうになる。


 瞬く間に三好家の支配下になった筈だから、来年には細川領の殆どを支配下に置くと思う。俺なら今から誼を通じておくが、お父様に一度、お話ししてみても良いかもしれない。




 ◾️◾️◾️




 家中の子息達で医術を勉強しても良いと思った者に集まってもらった。五人いる。これから彼らには医聖の下で学んで貰わなければならない。

 昨年、お祖母様が病気を罹った時に気づいたのだが、病気になってから医聖を探していても遅いと。


 それから医聖と呼ばれる曲直瀬道三を探してもらい、京で見つけて弟子入りの許可を得るまでに一年掛かってしまった。


 関東に出向いた者達は曲直瀬と名乗る者が数年前まで居たが名前が正盛、等皓とか一渓だったりと……。

 京で探索していた者達と合流させ確認したら、結局は全部道三の事らしい。


 とにかく探し出せたが京で医療をするため土佐には来られないとの事で、何人か弟子入りさせる事にしたのだ。将来的には医学校も作りたいとのことだったので、一条家が資金を援助する約束もした。五十貫までの許可は頂けたが、足りなければ再度交渉するつもりだ。道三を逃す手はない。




 ◾️◾️◾️




 領内の村から風切羽以外の生羽と綿羽が結構な量まで集まった。捨てる物が買い取ってもらえるんだから当然か。


 天秤ばかりと分銅は間に合わず、(ざる)何杯分かで買取した。多分、かなり銭が必要だったんだろうけど仕方ない。


 羽はかなり多いけど、ダウンが少ない。


 くっ、仕方ない。

 スモールフェザーの羽軸が柔らかいものを厳選するしかない。羽軸が飛び出ていれば切っていこう。


 この時代だからこそ可能なパワープレーだ。

 人手を集めねば、人海戦術だ。


 ついでに羽根布団も作ってみる。羽軸を切ってダメなら松ヤニと漆を混ぜたものを羽軸の先に付けて布地を貫通しない様に処理しとかなければならない。



 選別した羽は熱湯でしばらく煮た後、麻のゴザに広げて乾燥させる。乾燥中に飛んでいってしまわない様に、上にもゴザをかける。


 水気が上下のゴザに吸い取られると供に日差しで乾いていく。風が吹いていると外でできないので今日みたいなほぼ無風の日に行なっている。


 衝立で囲んでいるので、強風でない限りは心配要らないだろうが。


 最悪、焚き火の三尺くらいの高さに板を置き火が当たる面に羽を一枚一枚手作業で並べていく。羽は上昇気流で板に張り付いて乾燥する。または金属の箱を作ってそれを火にくべて中の羽を乾かすか。そんなことするくらいなら、無風の日にやるのが一番楽だな。


 量産体制を作るなら箱が要るが、ただの長方形の箱ではダメだ。階段状にしなければ羽が痛んだり、取り出しにくくなったり。そんな形状が作れると思わないが、もしネジとナットを作ることができれば可能だな。


 いやいや、木で作ればいいのか。そうすると接着剤が必要か。無いなら無いでいいが、漆と松ヤニと米(のり)あたりで出来なければ諦める。後は釘で固定でいいだろう。むしろ鉄製よりも良い気がする。早いし、安いし、楽だし、作る奴はやる気に満ち溢れてるし。




 防寒で思い出したが、貿易で連れてきた羊の毛を刈って無かった。確認させたが結構モコモコになってるみたいだ。


 来年の夏前に刈ってあげよう。


 羊毛か。

 毛糸を作りたいな。

 ハンドカーダーとスピンドルが必要だ。

 ハンドカーダーってどうやって作ればいいのか、何で出来てるのかも分からない。ただ、婆ちゃんがやっていたのを見たことあるってだけ。


 

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