第8話 ロンダ&銀の槍&モラグ
「ここがロンダの町か、かなりでかいんだな」
サマルの遺跡を出て野宿して一夜を明かし、俺たちはロンダの町へとたどり着いた。
ロンダの町は立派な城壁に覆われていて中に入ると活気のある商店街がまず目に入る。
どうやら正門から入ってすぐが商いをする場所のようで中心街へ入ると冒険者用の店があるようだ。
そして、正門から入ってすぐに見えるロンダの町の中央にあるでかい建物は冒険者用のギルドだそうだ。
「侑季君は初めてなんだね。ここはいろんな国の中継店として商売が栄えてる国だよ。今は冒険者のために作られたギルドと合わさって王都にも負けない大きさなんじゃないかな」
ミーシャがニコニコしながら説明してくれる。
ここならなんでも揃ってるだろうし住みやすそうな街だな。
「では、まずは私たちがいた宿の方に寄りましょうか。客人も一人増えたことですし」
宿なんてとってたのか。
ミーシャも分かったと頷いてるしとりあえず俺はついていけばいいのかな?
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「いや、ここどこ…?」
ここにくるまでの道を思い出そうとしたけどなかなか思い出せない。
いや入り組みすぎてないか?
最初に入った時の華やかさとは打って変わってここはだいぶ中心街から離れてるし、ほとんど人通りもない。
「つきました。ここが私たちが今泊まっている宿屋です」
えっと、"宿屋 銀の槍"?
「ただいまー!」
「お、帰ってきたか。で、成果はあったか?」
「残念ですが目当てのものは、そのかわりに拾ってきたものはありますが」
「俺は捨てネコかなにかか」
「ほぅ、エリルが人を連れてくるとは驚いた」
うわ、この人でかっ。つーかこわっ。
背は180くらいだよな?俺よりだいぶ高いな、筋肉めっちゃあるし。
その体つきで俺のことを見下ろされると正直ちょっと怖い。
「ここに連れてこられたってことはエリルとミーシャ様のお客人ってわけか。お前さん名前は?」
「か、神楽侑季です!」
ちょっと声が裏返った気がする。仕方ないじゃん怖いんだって。
「俺は"モラグ=ガルマンド"だ。二人の客人ってことなら金は取らないから安心しな」
悪い顔で笑うなー。いやいい人なんだろうけど。
悪い人ではないんだろうけどもとにかく威圧感がすごいんだ。
「モラグは普通にしてるだけで怖いんだから、そんなに侑季君をいじめないであげてよ」
「おっと、こいつは失礼。まぁここには客人は滅多にこねえ。ゆっくりしていけ」
モラグはそれだけ告げると奥の厨房へと入っていった。
そもそもなんでこんな人が宿屋なんか経営しているのだろう。
どう考えても戦士とかそっちの類いの人だろう。
「あの人はどういう関係なんだ?」
「モラグは以前はシルエスタ王国に仕えていました。私の上司に当たっていた人ですね」
エリルは持っていた荷物を置きに二階の部屋へと上がる。
「エリルの上司ってことは、...あの人も偉い人だったのか」
「うん、エリルが私の護衛につくまでずっとエリルの修行をしてくれてた人なんだよ」
なるほど。あれに教えられたんならエリルの強さも理解できる。
「モラグはミーシャが来るまで私のお父さんの護衛を務めてた人なんだ。今はもうやめちゃってるんだけどね」
てことはあの人国王の護衛を任されてたってことかよ。
やべえ、会う人会う人スケールがでかすぎる。
「今は違うのか?あの体ならやめる必要がなかったんじゃ」
「あーそれがね、モラグは自分でやめるって言って出て行ったんだよね。それが一年前くらいだったかな」
ミーシャはそう語ると大げさにやれやれとおった表情をする。
「私も最初はなんでだー!って思ったんだけどね。まぁでもそれは仕方ないんだよねー」
ミーシャがニヤニヤした顔をしてる。
嫌ーな顔してるなおい。
「まあ今は聞かないでおくよ」
俺はとりあえずエリルが行った二階の客室へと向かう。
「ん?てことは、エリルとミーシャって17才ってことか?」
「そうだよ?言ってなかったっけ」
「あぁ、てことは同い年なんだな」
偶然だけど二人と同い年だったのか、なんか親近感ちょっと湧いた。
「お〜い、侑季だっけか!?お前の部屋は201号室だ!」
厨房から大声でモラグが叫ぶのが聞こえる。
「はーい!わかりました」
俺はお礼を言ってモラグの声に応える。
「ちなみにね、モラグは25才なんだよ」
「え..まじ?」
いやあの風貌はどう見ても30は行ってるだろう。
人は見かけで判断してはいけないと俺はこっそりと心に誓った。
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201号室のなかは少なくとも不自由しないくらいの広さであった。
宿屋らしいというか、まあイメージでしかないけどそんな感じの場所だ。
とりあえずそこらへんに荷物を投げ捨てといてと。
やっぱベッドがあるなら、倒れこむよなー。
この幸福感最高だぜ。
コンコン
「侑季君ー、入ってもいい?」
この声は、ミーシャが。
「ちょっと待ってな、今開ける」
俺はベッドから体を起こすとドアを開ける。
「おっと、エリルもいたのか。それでどうしたんだ?」
「あのね、エリルがこれからのことを話すために集まろうって」
あぁなるほど。確かにこれからどうするかは何も決めていなかったな。
「でもそれならわざわざ俺の部屋でやる必要はないんじゃ」
「乙女の寝室に入ろうとする変態だというのならそれでもいいで」
「なんでもない、入ってくれ」
エリルが大げさに肩をすくめてるけど残念ながらそんな変態な趣味はない。
「乙女二人を寝室に呼び込むなんてやっぱり変態だったんですね」
「どうしろっていうんだよ!」
どう行動しても結局変態に行き着いてんじゃねえか。
「はいはい、二人とも。話が進まないからね?」
「そうですね。話がまだ始まってすらいませんよ?どうするんですか侑季君」
「どう考えても俺の責任ではないと思うんだが、いやもういい。話し合いを始めよう」
「そうですね、拉致も飽きませんし」
「それじゃ、失礼しまーす」
さて、何を話すのか。
これからのことを何するかはまったく考えてないし。