第43話 分散&暴走&吸血鬼
爆発によって地面が崩れて真下へと落下していく。
「トレイ!」
「ケイト!」
(あいつ…味方まで巻き込んで、いや、自分まで落ちている!)
「この下は大きな迷宮のような地下遺跡、迷わないといいわね。[ウインド]」
落ちながらエースが魔法を唱えると突風が吹き荒れる。空中で身動きが取れないまま全員がバラバラに飛ばされる。
「きゃっ!」
「ミーシャ!」
まずい!ミーシャだけ俺たちから特に離れた!
「どうにかして近くに…!」
だめだ、風に体を取られて…思うように動けない。この状態じゃ自分の身体を気遣うだけで精一杯だ。
「ケイト!きゃっ!」
「トレイ!早く僕のところに…うわっ!」
「くっ、この風じゃ身動きが上手くとれへん…」
(まずい、このままだと全員離れ離れになって…)
全員が離れてしまうのはだめだ。この先は何があるかもわからない、それに敵と鉢あったりしたら危険だ。
「だめ…動けない」
「ミーシャ!」
吹き飛ばされるミーシャの身体は差し出された手によって抱きとめられる。
「侑季君、ミーシャは私に任せてください」
「エリル!ナイスだ!」
落下しながら風に吹き飛ばされてる状況で、それでもエリルがミーシャの近くにいてくれた。いや、近くに行ってくれたんだ。
「エリル!ありがとう」
「お礼を言う必要は…くっ」
「きゃっ!」
しかし、ミーシャの手を掴んだがそのまま2人は風に吹き飛ばされる。
エリルがいるなら大丈夫だと思うけど、それでも心配だ。
「くそ、…[サモン]!月影!2人を頼んだ!」
「任せとけ相棒!」
自分の身体がダメでも、魔法なら2人の元に届く。俺は半ば無理やり月影を召喚して2人の護衛を任せる。
月影は2人に覆いかぶさるようにすると、衝撃に備える体制をとったまま飛ばされていった。
「よし…ってうわっ!」
急に風が強くなった!皆んなはどこに…くそっ風が強くて視界もわからなくなって…どうなってるのかまったくわからねえ。
今俺はどこに飛ばされてる?落ちてるのか、それとも横に飛ばされてるのか。
(…壁!)
飛ばされながら急に目の前に現れたのは岩壁だった。とっさに腕を前に出して顔を防ぐ。
「…ってえ!」
ゴン、と音を立てて壁にぶつかる。
遺跡の壁にぶつかったのか…もう少し気づくのが遅かったら危なかったな。
「ここは…どの辺だ?」
まず俺はどこまで落ちてきた?
上を見上げてもわずかに光が見えるだけでかなり下まで落ちてきたことがわかった。地下遺跡ってのはこう言うことか…たしかに地表から見えていたのは氷山の一角にしか過ぎなかったというわけだ。
「この広さ…皆んなどこに行ったかなんてわかんねえぞ」
どうしたものか…ミーシャとエリルには多分月影が付いてるから大丈夫だと思うんだけど。この状態じゃ俺と迅雷さんがそれぞれ一人でいるってことか。迅雷さんに関しては俺が心配する必要もないとは思うんだけど…もし敵の二人と一緒になっていたりしたら危ない。
そんな風に思考を巡らせていると少し遠くの方から声が聞こえてきた。その声はだんだん近くなっていく。
「トレイ!どこだ!返事をしてくれ!」
こいつは、ガルバドシアの…
「っ!お前は…」
くそっ、見つかった以上はしかたない。こうなったら一人でやるしかないのか。覚悟を決めろ、銀雪なら一瞬で勝負を決めれるはずだ。
「[サモ」
「頼む!見逃してくれ!」
「…え?」
寸前まで言いかけた言葉が止まる。今見逃してくれって言った…?
「敵に頼むなんておかしいのはわかってる!でも俺はトレイを探さないといけないんだ」
トレイってあの女の子だよな。…待て、冷静になろう。戦わないで済むなら徳だし、俺もみんなを探さなければいけない。
「落ち着け、俺も手伝うよ」
「なっ!?何を言ってるんだ」
「そっちに戦う気がないなら俺たちはそもそも戦う気がない、それに今はお互いに協力したほうがいいはずだ」
あくまで俺たちの目的は魔道具だし、むやみに争う必要はない。向こうが協力してくれるなら嬉しいくらいだ。
「信用できるかどうかは君が決めてくれ」
「…わかった。お互いに協力しよう
どうやら向こうにも意図が伝わってくれたみたいだ。すぐに襲いかかってくるようなやつじゃなくてよかった。
「それじゃあ、早く探しに!」
「待てって、そんな闇雲に探したって見つかるわけが」
「急がなきゃいけないんだ!じゃないとあいつが暴走してしまう!」
暴走?あいつって…トレイ?のことだよな。一緒にいた女の子の。
「暴走って?」
「トレイは!あいつは…!」
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「おいおい…こいつは僕に貧乏くじが当たったパターンとちゃうか?」
迅雷は目の前の光景に思わず苦笑する。風に飛ばされて全員と離れ離れになったと思っていたが、目の前にはトレイがいた。それだけじゃなかった。
「お、お兄さん…早く逃げて」
トレイの様子は今までと打って変わっている。目は真っ赤に染まり、口からは尖った八重歯が見える。迅雷はこの姿に驚きを覚える。
「これはまた珍しい…人間と魔物のハーフってことやな」
「だめ、もう頭が…」
かろうじて自我を保っていたトレイが一度ガクンと意識を失い倒れる。すぐに立ち上がったかと思うとそこには別人のような性格のトレイがいた。
「貴方は誰?…まぁ誰でもいいわ。私お腹がすいたの」
「制御できひんようやな、完全に飲まれとる」
(さて、どないしたもんか)
迅雷はそっとクナイを手に取るとトレイに向けて攻撃態勢をとった。
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「はぁ!?吸血鬼?」
「そうだ!もしどこかで怪我でもしたらおそらく、あいつの血が目覚める」
「め、目覚めるとどうなる?」
「暴走していたら…一度気絶するか、血を満足するまで吸わないと戻らないと思う」
てことは、誰かが出会っていたらその時点で危ない。暴走をしている吸血鬼なんて危険すぎる。
「最後に見たときはおそらくあっちに飛ばされて行った!」
「わかった!急ごう」
頼むぞ…誰も出会っていないでくれよ。




