第42話 目的&奇襲&爆発
エルトリア王国 隠れ家
薄暗い中で一人、怪しそうになにかを考えてる女がいた。
(これでほとんどは計画通り。あとは…そろそろ私も)
「エース、何をしているの」
「!?…あらクイーンじゃない。あなたがわざわざ私のところに出向くなんて、どうかしたかしら?」
「ふん、最近影でコソコソと何かしているお前の監視よ」
「失礼しちゃうわね、乙女のプライバシーを覗こうとするなんて」
2人は言葉は軽い調子であるが、にらみ合ったままお互いに譲り合わない。
「薄汚い魔女の末裔が…調子にのるなよ」
「お生憎様、私がキングに気に入られてるからって…嫉妬かしら?」
「キング様を侮辱す」
「図星になると人ってすぐに焦るのよね」
クイーンの言葉を遮りさらにあえて挑発じみた言葉をかけるエース。クイーンは舌打ちをしたあと一度頭を冷やした。
「これ以上怪しいそぶりを見せたら、裏切りとみなすわよ」
それだけ言い残すとクイーンは去っていった。
「…そろそろ限界かしらね」
(さて、まだまだやることがあるんだけど)
クイーンが去って再び誰もいなくなるとエースは自身のすべきことを一つ一つ考え始める。
「まずは、私は向こうに行かないといけないわね。[ワープ]」
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「ねぇケイト、寒くない?」
「大丈夫だよ。それよりトレイの方こそ風邪を引いたら大変だ」
「私は大丈夫よ。心配しないで」
トレイとケイトは冷える夜中を二人で身を寄せ合うようにして寒さを防いでいた。
(あれが…ガルバドシアのメンバー)
パッと見た感じ…強そうには見えない。ただ見た目で判断などしてはいけない。敵は2人っていうのは本当っぽいな。辺りに誰かの気配を感じない。
「準備はええか?いくで」
まずは奇襲だ、あわよくば一発で仕留めるのが理想だけど。
「「[サモン]」」
銀雪と疾風が飛び出す。突如現れた二体の魔物にトレイとケイトは臨戦態勢に入る。
「銀雪![凍星]」
「疾風![旋風]」
疾風が翼を大きく動かすと、風の刃が出来上がる。銀雪が咆哮をあげると風の刃が冷気をまとい、氷の刃となって襲いかかる。意図したわけではなく二匹の攻撃は合わさってコンビネーション攻撃となり襲いかかる。
「トレイ!危ない!」
二人に直撃すると地面が大きな砂埃を立てる。避けた形跡もなく軌道は直撃する場所を通っていた。
(よし!当たった!)
これでどっちか一体でも倒れてくれていたら…そんな淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた。
「…残念ながら侑季君、倒すどころか最悪の展開かもしれんでこれ」
「え?」
「敵か味方か…この様子やと味方ではなさそうやけどな」
砂埃が晴れると、銀雪と疾風の攻撃が効いていなかったのがわかった。いや、効いていなかったのではなくそもそも二人には当たっていなかった。
トレイとケイトの目の前に立っている女が、
攻撃を全て防いでいた。
「二体ともいい攻撃だけど…生身の相手だからって手加減し過ぎよ♡」
「エース…!」
まさかこのタイミングでくるなんて、さっきまで気配もなにも感じなかったのに…
「みんな無事にここにつけたようで何よりよ」
いつも俺たちが予想しないような時に現れて、謎めいたことだけ言って去って行く。エースの手のひらの上でずっと踊らされてるみたいだ。
「エース、なんでこんなところにいるの?」
「あらトレイ、言ってなかったかしら?私もここに用があるのよ」
どうする…どうすればいい。当然こんな状況で対話なんか不可能だ。
「…それで、手伝いに来たのか…邪魔しに来たのか?」
「そう睨まないでケイト。殺気立ちすぎよ」
エースの登場はトレイとケイトにとってもイレギュラーなことだったようで驚いている。
(今銀雪に攻撃をさせれば倒せるのか?いや、俺が魔法を唱える前にまた制止されるかもしれない)
「侑季君、いざとなったら二人だけでも逃すで」
「はい、もちろんです」
もしエースが完全にこちらの敵に回っているのなら、二人がかりで止められるのかすら未知数だ。
だとしても俺がやらなきゃいけないのは、意地でもミーシャとエリルを守ることだ。
「さて、私がここにきた話をする前に。貴方達はここに何をしに来たのかしら?」
「…それは俺たちが言わなくてもとっくにわかってるんだろ?」
「えぇそうね。この遺跡にある魔道具を手に入れるため。そうでしょう?」
当然ながら筒抜けか。だからこそ先回りされているのだしそこに関しては驚きはしない。
「もちろんこの2人は私の命令で貴方達の目的を邪魔しに来てる…そう簡単には行かないわよ?」
「何が言いたいんや」
「そうね…実はこの遺跡って、すごく広いのよ?ここに見えてるのは一番上の一角」
何を言うかと思ったら…すでにエースには遺跡に入られている?それじゃあもう魔道具は…
「安心して、魔道具は取ったりしてないわ」
「…貴方の言葉をどこまで信用していいものかわかりませんがね」
「あら失礼ね。…まぁいいわ、ずっとそこの女の子には信用されてないみたいだし」
エリルの方を向く。初めから対話は無理だと感じたのかすでにレイピアを構えて臨戦態勢に入っている。
「貴方の行動に信用できる点が見当たらないだけです」
確かにその通りだ。結局エースが何をしに俺たちのところへ現れたのかまだわかっていない。
「エース、いい加減にしてくれないか?邪魔をしに来たのか」
「あら、私とうとう味方のはずのケイトにも信用されてないのかしら?」
「…」
てっきりあいつらは味方だと思ったら…何か不穏な雰囲気だ。
「仕事モードのケイトになられた以上、仕方ないわね」
ため息混じりにエースがそう呟く。
「いいわ、それじゃあ私が何しに来たか教えてあげる」
目的、俺たちの敵か、味方か。
それとも…
「なんちゃって…[エクスプロージョン]」
その瞬間、エースを中心として大規模な爆発起こった。




