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異世界への輪廻転生  作者: アークセーバー
二人の少女編
29/56

第29話 恋?&愛?&信頼?


「そういえば、なんで俺は倒れたんだ?」


「おそらくは魔力がまだ体に馴染んでいないのだろう。私を召喚する場合にはルナの魔力を使うからな」


「えっと、月影の時とは別ってことか?」


「無論だ。本来ならば起こり得ないことだが、主の中にはアマテラスとルナから与えられた2つの魔力が流れている」



てことは、月影のときはアマテラスの、銀雪を出すときはルナの魔力ってことか。まぎらわしいな?ていうか使い分けてる感覚は全くないんだけどな?



「そしてルナの魔力はまだ主の体に馴染んでいない。だからこうしてすぐに力尽きたのだろうな」


なるほど、納得した。まあ何はともあれ、デュースを倒すのは間に合ったのでよかった。



「む?そろそろ目覚める時間のようだ。最後に月影からの伝言だ。俺のことを忘れるなよ」


「はは、あいつらしいな。わかったよ」



拗ねてんじゃねえだろうなあいつ?たった一回出番なかっただけだぞ。




_____________________




今度は真っ暗で何も見えない状態だった。目が開いていないからだ。


…って痛え!全身が筋肉痛みたいになってる…?ていうか誰かが俺の手を握ってる?



手があったかい。両手から伝わってくる暖かさを感じながらゆっくりと目を開けた。




「...あ、起きた。シーだよ?」




右から聞こえて来た声に向かって振り向くと、ミーシャが俺の手を握って笑顔で椅子に座っていた。



「侑季君がなかなか私たちのこと離してくれなくてね、結局動けなかったんだ」


「あ、悪い…ん?私たちって…」



左手に感じる温もりを確かめるために振り返ってみると、エリルが俺の手を握って椅子に座りながら寝ていた。器用に寝てるなおい。



「疲れて寝ちゃったみたい。侑季君のそばが安心するんじゃないかな?」


「…茶化すなよ」


「えへへ〜。それじゃ起きたことだし、私はモラグの様子も見てくるね」


ミーシャはそう言うと掴んでいた俺の手を離して部屋から出て行った。あ、ここ俺の部屋だ。ってことは誰かに運んでもらったのか。


バタンと音を立てて扉が閉まった。


その音でさっきまで眠っていたエリルがゆっくりと目を覚ました。



__________________




「…」


部屋から出たミーシャは複雑ななんとも言えない表情をしていた。



「侑季の体の具合は?」


「わっ、…モラグか。驚かさないでよもう」


「あぁ、悪かったな」


何かに悩んでいるようなミーシャをモラグは不審に感じた。



「どうかしたか?らしくねえ顔で」


「んー、大したことじゃないんだけどねー」


ミーシャは優しく微笑んだあと言葉を続ける。



「私たちが始めてここを訪れた時は、理由も聞かずに泊めてくれた。私たちが理由を話したら、当然のように助けてくれた」


「?」


「ううん、もっと前。ここに来る前から私はエリルにすでにお世話になってるんだよね」


「何が言いたいんだ?」


「うーん、私ってさ。何でみんなに守られてるんだろうって」



ミーシャは冗談交じりの口調でそういったが、少しだけ笑顔がくもったように見える。それを見たモラグは口を開いた。


「上に立つ人ってのは力じゃねえ。そりゃま、あるに越したことはねえが」


「えっと、何の話?」


「上に立つ人ってのはな、自然と誰かが付いて来たくなるようなそんな魅力があるんだ」


ミーシャはまだわからないと言った顔をしているが、モラグはそれを気にかけることはしなかった。



「いつかわかる。守られる価値なんてのは自分じゃわかんなくても、周りはみんな守りたいと思うんだ」


「あはは、なんか子供扱いされちゃってる?」


「辛い時ほど元気に振舞う。結構だが、子供は年相応にわがままを言うもんだ」



参ったなというふうに笑うミーシャを見てモラグはため息交じりに笑う。



「それより侑季のところには?いてやらないのか」


「ん〜、私より今は…ね?」



ドアの向こうをチラッと見るとモラグに向けてウインクをした。



「空気を読むのもいいが、そうやってると後悔するかもしれねえぜ?」


「違うよ〜私はまだそういう気持ちは抱いてないよ」


「はいはいわかったよ。ま、じゃあもうすこし見舞いは待ってやるか」


「そうしてあげよっ」



怪我などしていなかったかのように颯爽と歩いて行くモラグを後ろから見ながらミーシャはそっと胸に手を当てた。



(少なくともエリルはもう…私はまだ違うと思うんだけどなぁ)





(あれ?"まだ"?)



わずかに首を傾げて一人で悩んだミーシャだった。



__________________





「あ…手、すいません」



ミーシャが出て行った音でうたた寝から目を覚ましたエリルが俺の手を握っていたことに気づいて慌てて手を離した。



「いや、その。たぶん俺が最初に握っていたっぽいから」


「そ、そうですか」






...気まずい。





なんでこんな甘酸っぱい雰囲気っぽくなっているのかはわからないが非常にこの空気は気まずい。はやくミーシャが帰って来てくれないか…いや、あいつのことだ。間違いなく面白そうとか思って帰ってこないな。



「「あ、あの!」」



被った。


会話が気まずくなった時に最もやってはいけないことナンバーワンだこれ。



「あ…侑季くんからどーぞ」


「あ、あぁ」



こういう時は譲り合ってはいけない。そしたら今度は譲り合い合戦が始まってしまう。



「その、あんまりよくは覚えてないけど、あの時エリルがすごく危なそうに見えたからさ」



焦っていたので記憶が定かではないが、俺がモラグを助けに行こうとした時、エリルは今までの気丈な振る舞いは欠片もみえない別人のように見えた。



「...その、ですね。あの男は、私たちを殺そうとした本人なんです」



エリルは膝に置いた両手をぎゅっと握りしめた。



「私、ここのところ心が緩んでたと思うんです」


「緩んでた?」


「はい、この銀の槍に客人が現れることなど滅多にありません。普通なら警戒して臨戦態勢を整えるべき場面でした」



確かにそれは言われてみれば間違いではないかもしれない。でもそれって…



エリルが握りしめた両手は力が入りすぎてプルプルと震えはじめる。



「甘えてたんです。侑季君が…いえ、皆んなが居るこの楽しい空間に」


「エリ」


「あの時、思ったんです。ミーシャを守るはずの私は今何をしてるんだって」



違う、それは絶対に間違ってる。



「そう思ったら私、なんでここにい」


「エリル」



エリルの声を無理やり遮るように呼びかける。エリルがびっくりした目で俺を見つめている。



「誰かといることを楽しんで、誰かに甘える。それがなんで悪い?」


「私は、ミーシャを命に代えても守る必要が」


「それとこれとは別の話だ」



内心少しだが怒っている。エリルは俺とミーシャの前…いや、例え誰の前だろうと強くあろうと振る舞う。


俺はそんなエリルがすごいと思うしとても尊敬する。




でも、エリルは笑ったり、怒ったり、泣いたり、そんな当たり前のことを頑なに拒もうとする。




「俺の知ってるエリルはさ、もっと弱いよ」


「っ!私が弱いのなんて分かってます!」




俺の言葉がエリルの癇に障ったようで怒りながら言い返してくる。



「違う、そうじゃない。俺の知ってるエリルは人と関わりを絶って、自分の感情を隠して、無理して生きていけるような奴じゃない」


「私は無理してなんか」


「いや、してる。ミーシャのために自分のことを殺そうとしてる」


「っ…そんなこと」



エリルの言ってる甘えなんてのは全く悪いことじゃない。楽しい時に楽しいと思って何が悪い。確かに今回のは危険な結果を招いたかもしれない。


でもだからってエリルが自分に重荷を背終って歩くことが正しいわけがない。



「ミーシャはエリルにそんな思いで一緒にいてほしいなんて思ってない」



なんでミーシャはエリルと一緒にいるのか。もちろん状況が状況だけにこの二人が一緒に行動するのは当然のことかもしれない。でもそういうことではない。


ミーシャはなんでエリルを全面的に信用しているのか。あいつはきっとこういうだろう。




だってエリルは親友だもん




って。



「エリルさ、もっと肩の力を抜こう。先は見えないし、何があるかもわからない。でもそんな時だからこそ思い詰めちゃダメだ」


「私が…思い詰めてる」


「そう、それも一人で」



少しの間エリルは黙っていた。何か声をかけようか迷ったが、エリルの返答を待った。



「...侑季君の言うことはよくわかりません。今まで誰にも言われてこなかったので」


言われないと言うか、言えなかったんだろう。ミーシャを助けようと必死だったエリルに対して、肩の力を抜けなんて言葉はもちろんミーシャ本人から言えるはずもない。



「でも…少しだけ、わかる気がします」


そう言ったエリルの顔には生気がしっかりと宿っていた。



「エリルは思ったより一人で悩みこむし、不安になったりするし。それに弱音も吐く」


「私は今だいぶひどいことを言われているような気がしますが?」


「あ、んーと…ごめん?」


「いえ、いいんです。ありがとうございます」



弱くたっていい。誰かを頼ったっていい。誰だってそうやって生きているはずなんだから。



「私は、弱いです。だから、もっと皆を...いえ、侑季君を頼ってもいいですか?」


エリルはもう一度俺の手を握りながらそういってきた。


微笑みながらそう言うのはずるいな。そう言われたらもちろん俺が返す言葉はひとつだけに決まっている。



「もちろん、いつだって助けるよ」



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