第25話 眷属&仲間&決意
「あのな相棒?神様には眷属っていって自分の部下みたいな奴らがいるんだよ。言っちまえば俺もそうなんだが」
なるほど?ってそれが俺になんの関係が。
「それがな、本来は眷属っていうのは一から作られるんだ。俺みたいにな」
「作られる?」
「要は創生魔法と同じ原理だ。俺はここにいるルナに作られた眷属だ」
え?
「お前って…魔物だよな?」
「魔物だって色々いるぜ。俺みたいなやつも、ただの魔物のやつも」
「な、なるほど」
眷属がどうこうはイマイチわかんないんだけどとりあえず月影がそれに該当してるってことはわかった。
で、だ。
「俺が眷属ってどういう意味だ?」
「つまり、相棒がアマテラスに命を救われた時に。もう眷属になってたんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は生きてるし!作られてなんて」
「そう、それが問題」
「え?」
それが問題って…どういうことなんだ。
「侑季君、妹は貴方を助ける時にほぼ体の全部を再構築した。それが侑季君が眷属になったきっかけ」
「きっかけって…そもそも俺に実感なんて全く」
「いい、大丈夫。侑季君は普通に生きて構わない」
「え?」
「まぁ、結論から言えば眷属だから何かしなきゃいけないってわけじゃあねえ。俺だってこの通り自由だしな」
あ、それもそうか。
じゃあ俺は一体何がどうなってここにいるんだ?
「でも、侑季君は特殊な子。今はまだバレてないけど…元から存在していたものの眷属化。これは危ないこと」
「もし相棒のことが神々の間に知れ渡ったら、場合によっては全人類を眷属化しようとする奴が現れるかもしれねえ」
それは怖いっていうか、どうしようもない。
え、俺の知らないところで俺そんなやばい人になってたの?
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その後、月影から話を色々聞いて見たところ。
厳密には俺は人間でもあり眷属でもあるということは神々の間では伏せておきたいという話らしい。
別に話す相手もいないしそれはそれでいいんだけどさ。
俺が異世界で生きていく上で支障は全くないらしいし、嫌がったところで今更そもそも俺に拒否権などない。
(半分人間やめてるのかなぁ俺…)
むしろ半分は人間なのだろうか?
いや、やめよう。
俺は俺として今間違いなく存在している。
それは間違いないし、悩むのだってバカバカしい。
だが、こうまで俺という何かが色々変わると多少は戸惑うけど。
「つーわけだ」
「なるほどな、で、俺は結局なんでここに呼ばれたんだ?」
「それはルナが話してくれるみたいだぜ」
色々話されたけどそこはルナから聞くのか。
つーかこれ普通アマテラスが来るべきじゃねえの?
忙しいとかあるのかもしれないけどさ。
「そう…私が呼んだ理由は」
もうここまでくると驚くこともそんなにない気がするけど、ようやく本題に入るのかな。
まぁこれだけあれこれ聞かされればもう今更驚くことなんてないない。
「侑季くん、今からあなたは私の眷属にもなる」
「...え?」
突拍子も無い提案に俺だけがわけもわからない顔をしている。
前言撤回だこのやろう。
「いやいやいや!よくいってる意味が」
「大丈夫、なったところで特にあなたに不都合はない」
「そうじゃなくって!なんで俺があなたの眷属になることになってるんですか?」
「..理由。そこにいる月影は元は私の眷属。私が妹にあげたもの」
「は、はぁ。それで?」
「妹と私は一心同体、私のものは妹のものでもあり、妹のものは私のものでもある」
「俺は物か!」
思わず全力で突っ込んだよとうとう。
人をおもちゃか何かと勘違いしてないかこの人!あ、人じゃない。
「理由は、それだけじゃない。月影にもメリットがある」
「メリット?」
「そう、これ」
ルナが魔力を込めたかと思うと辺りの空気がすごい勢いで震える。
この魔力は間近で受けるとよくわかる、とんでもない力をもっている。
やがて、震えが止まるとルナの前に大きな球体が現れた。
______中には魔法陣が描かれ、一匹の狼がいた。
白い体に背中に入った三本の黒い爪痕のような線。
眠っているようだが、間違いなく強さはいうまでもないと感じ取れる。
俺は直接見たことがない、だがこの姿とこの強さ。こいつを俺は知っている。
「私の眷属、種族は白狼。この子をあなたにあげる」
「..月影、こいつはまさか」
「あぁ、相棒」
そうか…こいつが。
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俺は月影と出会って最初の頃に質問したことがある。
迅雷さんに言われたように、こいつは本来攻撃とかは向いてない。
むしろ全力で守りに特化したやつだ。
「なぁ、なんで人を守ることにずば抜けてすぐれたお前がそこまで攻撃魔法や攻める姿勢にこだわってるんだ?」
「とある奴の代役なんだ」
そう月影は笑いながら答えた。
詳しく話を聞いて見ると、月影は俺と出会うより少し前に、自分のミスで仲間を大怪我させてしまっていたらしい。
そいつは狼の姿をしていて、月影が最強の守りならそいつは最強の攻め。まさに最強の矛と盾だったらしい。
自分のミスで仲間に怪我をさせてしまった月影は、戻ってくるまで自分が変わりを務めると自分で決めていた。
「なんつーかお前、変なやつだな」
「いいんだよ変でも、それが俺なりのポリシーだ」
「…そうか」
月影の気持ちを汲み取ってやるってわけじゃないけど、それ以上は俺は聞かなかった。
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「月影が言っていたのはこいつのことか」
目の前の狼を見てみれば、近くにいるとかなりの威圧感を受ける。
月影のようなどこか安心するようなオーラはそこに見えない。
「この子はやっぱり、二匹でいるのがよく似合う。だからあなたにあげる」
「それと眷属になることの関係は?」
「この子を扱うには、貴方は私の力を借りないとダメ。そのためには眷属にならないと力
を与えることができない」
なるほど。
「…わかった、なる」
ちょっとだけ迷ったけど、決めた。
ルナの眷属にでもなんでもなってやる。