第16話 召喚士&召喚士&出会い
「もー何してるの侑季君、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、ちぃと当たっただけやから」
「どうもすみませんでした。ほら侑季君いくよ」
「おう。どうもすみませんでした」
「次からは気いつけるんやで〜」
「不注意ですよ侑季君」
「悪い悪い、ちょっとぼーっとしてた」
ちょっと不注意だったな、怪我とかしてないようで良かった。
(偶然ってあるもんやな〜)
「あの、迅雷様。本日はどう行ったご用件で?」
「あ〜せやな…暇やったからってことで。でもちゃんとお土産あるで。ほれ、白虎の毛皮や」
迅雷はそういうと持っていたカバンから取り出して渡す。
透き通った綺麗な白色に柔らかそうな質感は毛皮として上質だと一目でわからせる代物だった。
「ええやろこれ?手に入れるのえらい苦労してな」
「迅雷様はもうギルドの管理側ですから危険なところに行く必要は」
「あーあー、そういう固いことは言わんといて。旅人が旅をしなくなったら終わりや」
「..どうか無理をなさらず、他の方々も心配しておられますので」
「わかったわかった。気にはしとくで。今日はこんなところで、さいなら」
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俺たち三人は一角熊の討伐を終えて、ひとまず銀の槍へと帰ることにした。
ギルも手に入れたし仕事は大成功と言えるレベルだったので帰り道は明るい空気だった。
怪我もなく、特に買い足すべきものもなかったのでまっすぐ帰る。
「まだ白の4くらいの時間だね、思ったより今日の仕事早く終わってよかったよ」
「一角熊を見つけるのも罠にはめるのもたまたま何の問題もなく行きましたからね」
「それもエリルの作戦がしっかりしてたからだよ」
落とし穴という単純な罠を上手くはめることができたのはエリルがしっかりと考えてくれたおかげだ。
感謝しないとな。
「なるほど、私が計算高い女と言いたいのですね」
「今俺褒めたよな?」
前言撤回、褒めるとろくなことがねえ。
「ねぇねぇ!2人は神様って信じてる?」
「…侑季君、ミーシャの頭が更におかしくなってしまいました」
「ちょっとした世間話だよ!…ていうか更にって何!?」
「こんな風に育てたのは私の責任です…私がすべて悪いんです」
「エリル、君は悪くない。ミーシャはいずれこうなる運命だったんだ」
「ふ、た、り、と、も! 怒るよ!」
俺は乗っかっただけだから許されるとか、ないよね。はい。すいません。
「神様ですか、いるんじゃないでしょうか?」
おう…すげえさらっと話題戻していったな。
「うん、私もね。いるかなーって思ってるんだ」
ミーシャもいいのかそれで。
「侑季君は?いると思う?」
「俺は…」
神様…ねぇ。
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『私は神様のアマテラスだよ!いええええい!』
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神様…かぁ。
「いる、と思うよ」
「な、なんでそんな微妙そうな顔?」
「ミーシャが急に変な質問をするからですよ」
うん、いるよ神様は。
なんか違うって感じするけど。
「あ、ついた。なんだか早かったね」
「道中余計な話でいっぱいでしたからね」
「もー、そういうこと言わないのエリル」
ガチャッ
「たっだいまー!」
「おうミーシャ、帰ってきたか」
「モラグ!私たち、バッチリ大成功してきたよ!」
「おう、そいつは良かったじゃねえか」
嬉しそうだなミーシャ。
まぁ初仕事が大成功なら嬉しいはずだよな。
「ただいま帰りました」
「た、ただいま」
なんとなく宿にただいまっていうのも変な気がした、けど2人が言ってるしまぁいいか。
「お帰りー、待っとったで侑季君」
「...え?」
あれ?この人は…
黒髪に混じって紫色の線が入った特徴的な髪、それに細い目。
「えっと、さっき俺がぶつかった人ですよね?」
間違いなくさっきの人だ。
「それであってるよ、さっきはすまんかったなほんま」
「あ、いえ。俺が不注意だったわけで」
「ほなまあ自己紹介から。僕は"迅雷 隼"(じんらい しゅん)っちゅうんや。よろしゅうな」
「えっと、俺は神楽侑季です。よろしくお願いします」
「あぁそれは知ってるで、モラグから聞いとるから」
聞いた?ていうことはこの人はモラグの知り合いってことか。
「なんというか..客人だ。お前さんたちを一目見たいって言うんで連れてきた」
「たちって、私たちも含まれてるのですか?」
エリルが少し警戒の色を見せた。
さすがにないとは思うが、ミーシャを狙ってる人かも知れない。
「そんなに怖い顔せんといて。僕は単純に興味があるだけさかい」
「私たちが何かした覚えはないのですが」
「モラグから白の称号を貰っといてそれはないやろ。ギルドマスターの間では有名人やで」
つまり、この人は。
「てことは…あなたもギルドマスターの方ですか?」
「せやで、モラグが金色、オウカさんが銀色、そして紫色がこの僕っちゅうわけや」
ギルドマスターがこの場に3人も…
なんかスケールがでかすぎてわけわかんなくなってきた。
「てことはすごい人ってことなんだよねモラグ?」
「ん、まあそうだな。そう言うことになる」
「ま、言うても僕とモラグが戦いなんかしたら万に1つも勝ち目ないで」
「何言ってんだかてめえは…」
「そないなことはええねん。初めは侑季君に興味を持って来たけど、こうしてみれば3人とも面白そうな子やんか」
目が細いからだろうか目線がいまいち読めない。
あと喋りが軽快だからかつかみどころがない人だな。
「今日は一角熊を仕留めたんやってな。少なくともランク10の新米が相手できる魔物ではあらへんな」
「ギルが早急に欲しかったので選びました。倒せると判断しましたので」
「なかなか肝が座ってる子やな。冷静で、うん。ええ目をしてる」
「ミーシャちゃんは、ムードメーカーやな。うんうん、パーティに明るさは大事や」
「え?あ、ありがとうございます?」
「で、やっぱり侑季君が戦闘については一番強そうやな。エリルちゃんもなかなかやけど」
「いや、俺戦ったらエリルに負けますよ?」
確証はないけど、たぶん勝てる気がしないんだよな。
「本職じゃないもんで負けることくらい当たり前やろ。それとも君は召喚士が本職ではないって言う気かいな」
あれ?俺言ってないよな。
「召喚士なことを一瞬で見抜くんですね」
「同族っていうのは自然と惹かれ合うもんなんやで」
同族…ってことは!?
「もちろん、僕も召喚士やで。この手ぬぐいを依り代にしてな」
召喚士、俺以外の人には初めて会った。
あ、でもミーシャも一応召喚獣はいるのか?
「召喚士っつうのはどうも人気がないからあまりおらへんな。そこの嬢ちゃん、なんで召喚士は人気がないと思う?」
「うぇ!?私ですか!」
いきなり話を振られたミーシャは目を丸くしている。
俺も知らないんだけどその理由…
「えーっと、自分が無防備になりやすいから...とか?」
「まあそれもあるな。召喚魔法を使っとる間は自分に魔法を使うことはできんわけではないがムズイ。じゃあそっちの嬢ちゃんはどう思う?」
「…召喚魔法を使いこなすには召喚した魔物と意思の疎通が不可欠です。多くの魔物は自分より強いものの言うことしか聞きません。したがってメリットが薄いかと」
エリルはそういえば召喚魔法は覚えなかったんだよな。多分それが理由ってことか。
短期間で魔法を使いたい時には召喚魔法は依り代がいるし言うことも聞かせなきゃだしな。
よっぽどの理由がなければ使わないのが自然だと思う。
「お二人ともいい答えや。召喚魔法はどうもデメリットが目立ちすぎる」
確かにメリットとデメリットで天秤にかけるとデメリットの方が多いように思われる。
ミーシャが言ったように召喚魔法を使ってる間は他の魔法は使いづらくなるし、戦うのは自分でないことが多いため魔物と息が通っていなければ強くはなれない。
「だからこそ召喚士として生きていっとる者に出会えた時は僕は嬉しくなるもんや」
なるほど、確かに俺もちょっとだけど嬉しく感じてる。
仲間っていうのかな?
「とりあえず話はそこまでにしときな。腹も減ってるだろう、飯にするぞ」
「やった!私もうお腹ペコペコだ〜」
話の途中から厨房に引っ込んでいたモラグが食事の用意をして出てくると待ってましたと言わんばかりにミーシャが食いついた。
「じゃあ続きは食べながらでもしましょうか」
「そやな、僕もお腹すいたし」
「とりあえずそうしましょう」