お隣さんは
失踪?何のことかな?
喧騒に包まれる中、俺は校舎へと歩き出した。綺麗な女の子だったけれど、悪いが頭の中はお花畑ではないので色恋沙汰に発展する余地はないのを十二分に理解している。あーだこーだと有り得もしない話をするのは徒労だ。
そもそも、あんな子と付き合ったら面倒くさそうだし。
「クラスは1-Bと……下駄箱はこっちか」
生徒用玄関に着くと新入生のためだと思われる案内看板が立っていた。生徒会役員の腕章を付けた人も近くにいて元気に挨拶していた。
1-Bの下駄箱で自分の番号を探しているともう1人入ってきた。チラッと見ると───
さっきの子やんけ!!!!!?
先程の綺麗な女の子だった。え、ちょっと待て俺より先に校舎の方に歩いていったよな!?なんで俺のあとにきてんねん!おかしいやろ!?わいの口調も変になってるやん、どないするんよ!
「……」
とりあえず軽く会釈してその場を離れることにする。
完璧だ!急いで考えた割にはドンピシャだろ!校門あたりのことで印象は良くないだろうし、これで更にコミュ障っぽさが出てる!
彼女の方も頭を下げて靴を入れるのをチラ見して教室へと向かう。ちなみに5番後ろの所だった。
〔〕
さーて!唐突ですがここで問題です!!!!!
教室は40人入る感じで5×8の席配置でした。では、5番後ろということは?
お隣でしたよ!!!!!
なんていうラノベですかこれ!美少女と隣の席!男としては嬉しいけど、俺としてはこれっぽっちも嬉しくないです!!あんまり関わりたくないんだよなぁ……そこら辺でぺちゃくちゃ喋ってるやつの方がまだマシかもしれない……
でも、隣になる以上関わりあるんだし挨拶しとくか……
「えーと、これからよろしくね?皐月小豆って言うんだ」
「ええ、よろしくお願いしますね。私は雹堂霞です」
その瞬間俺の体はピシッと固まった。それこそ石のように。うそーん、大手家電メーカーの社長と同じ苗字じゃ〜ん。ほんとにお嬢様だったんだねー。朝から晩までおたくの商品で助かってます。
もちろんそんなことは言えないので適当に笑っておく。
彼女も微笑み返してくれた。
〔〕
後から思えば俺はこの子と会うべきではなかったのだろう。
良くも悪くも──いや悪いだろう。彼女は変わっていくのだから。俺が変えてしまうことになるのだから。
これからも失踪するぜ!(反省の色なし)