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シスコン転生  作者: 雨天
プロローグ
2/6

シスコンは神に会いました。

内容大幅修正




 瞼が重い。


 気が付くと視界が黒一色になっていた。幾ら眼球を動かせど、俺の網膜が光を捉えることはない。つい先ほどまで化け物に襲われていて焦っていたのもあったのだろう、瞼が重いと感じて居ながらも、瞳を閉じていることに気が付いたのはそれから暫くしてからだった。


 重たい瞼を抉じ開け、光を求める。しかし、視界は変わらず黒一色。辺りをキョロキョロ見渡すが色の変化はない。―――あぁ、そうか。


 俺はこの時に理解した。自分は死んだのだ。あの異形の化け物に丸呑み、或いは無残に食い殺されてしまったのだろう。

 理解すると同時に悲しみの念に駆られる。何故あの時家を出たのか、千沙との最後の会話は何だったのか、部屋のPCの履歴は消してあったか、それより俺のスマホは―――死んだ今となっては心配しようが後悔しようが無意味であるが。


 そうこう思考を巡らせている内に異変に気が付く。

 身体が可笑しい。


 身体というか、感覚だろうか。全身がふわふわと浮いているような気がする。水の中に浮いているような、しかしそんなに硬質ではなくヌメッとしたような、とろっとしたような。何とも表現のし辛い感覚が体の表面を覆っている。


 しかしながら、依然目の前は真っ暗だ。これが死後の世界なのか、はたまたあれは夢であり今現在も夢の真っ只中なのか。個人的には後者であってもらいたいものだが。


 違和感を確かめるために身体に視線を落とす。そこでまた可笑しなことが起こる。


 身体が無い。


 胴体も腕も足も。瞼を開く感覚や、今の気持ちの悪い感覚はあるので実際に俺がここにいるのは確かである。・・・・。


『気分は如何ですか?』

 うわっ、と突然の声に驚き声を上げる。しかし口が無いので声は出ない。

 頭に響くような声に少しだけ酔いそうになる。


『ふふっ、声は出ないわよ。頭で考えるだけで伝わるから大丈夫よ』


 まだまだ馴れないが、その鈴を鳴らしたような綺麗な、子供をあやすかのように優しい声色に少し聞き惚れる。姿は見えないが美人さんなんだろう、と思うと同時に声の主が言ったことに驚く。


『ありがとっ、何時か姿を見せる時が来たなら、貴方の思い描いている姿になってあげるわよ』


 すぐさま思考停止したが遅かったようだ。お互い顔が見えていないだろうが、何故か恥ずかしい。穴があれば入りたいのだが、少し待とう。この声の主は今なんて言った?あなたの思い描いている姿になる?


『あ、そうそう、私は貴方達の言う所謂神様みたいなものなの。貴方があの世界じゃ在り得ない死に方をしてしまったから、こうして魂を拾い上げてあげたのよ』


 ・・・・ここ短時間で常識を逸脱した出来事が起こりすぎて全く状況把握が出来ない。

 とりあえず簡単に説明すると、化け物に殺される、魂拾われる、神様と御対面。分からん。


 一先ず理解出来ないことは置いておくとして、何故神様は俺の魂を拾った?もし本当に神様だったとして、一人の人間がどんな理由であれ死んでしまったのにも関わらず、それに関与するのは良いことなのか?


『・・・・いけないことよ。だけど、さっきも言ったように貴方の死に方は極めて稀、どころか貴方の住む地球では起こり得ないことなのよ。余り詳しく説明はできないけど、理由を簡単に言うと友達の尻拭いかしらね。あの子と友達じゃなかったとしてもほっておけることじゃないんだけど』


 理解できないのは今に始まったことじゃないので今回もスルーさせてもらおう。此方から質問を投げかけといて申し訳ないが。


 して、次に気になるのがこれからについてだ。俺はこの後どうなるんだ?まさか会話して終了なんていう落ちはないだろ。


『そうそう、その話が一番重要なのよ!今から貴方には別の世界に転生してもらうわ。地球とは違い、科学では説明が付かないような現象が日常である世界、所謂魔法が発展した世界よ』


 今迄で一番理解が追い付かないのが来てしまったな。なんだよそれは、タリーポッターか?タリーポッターなのか?そもそも転生ってなんだ、生まれ変わるってことであってるのか?


 俺の頭がショート寸前になる。目を覚ましてから今迄何一つ理解できていない。唯一理解できたことは死んでしまったことだけであり、その他を処理する為にももう暫く時間を貰いたい。

 そんな俺を見兼ねたかのように、溜息一つと声が頭に響く。


『理解してようがしてまいが、貴方に拒否権はないからどっちでもいいのだけど。兎に角、そういうことだから頑張るのよ。とりあえずスキルとして限界突破と成長速度レベルMAXをあげるから、その他は向こうで鍛えなさい。生半可な気持ちじゃ即死よ。即死』


 捲し立てる様に色々言われるが全くわからん。逆にここまで理解が追い付かないと一周回って冷静になる。俺はこれから千沙無しで生きていかなければならない訳だな。よし、死のう。


『もう嫌・・・・。一周回ってたら意味無いし、あんた現在進行形で死んでるでしょ・・・・


 神様が額に手を当て項垂れている姿が目に浮かぶ。だが、そんな事は俺の知ったことでは無い。千沙は俺の嫁であり天使である。仮に生まれ変わったとしても千沙不足により一日と経たずに死んでしまうだろう。


『うわぁ・・・・、本当に気持ちが悪いんですけど』


 それだけ俺にとっては重要な人であるということだ。黙っとけ。


『ま、まぁ千沙ちゃんについては調べとくから安心してなさい。兎に角もう時間無いし、もう送るわよ』


 その言葉を聞いて走馬灯の様なものが駆け巡る。今後一切千沙と会うことは無いのだろう。世界が変わってしまうわけであるから、万が一の期待もない。 

 これから先、希望の光は無いが、今死ぬ筈だったのにもう一度人生を進められるのであれば余生を少しでも楽しみたいという気持ちはある。なので有難く転生してやろう。


 見えない神様に決意の眼差しを向ける。


『なら今から送るわよ。言語とかは心配しなくても頭に入れてあるから大丈夫よ。向こうでは幸せにね』


 その声を最後に意識が遠退いていく。

 神様は魔法の世界と言っていた。それは誰しもが一度は夢見る世界だろう。俺だって例外ではない。火は吹けるのか、水は吐き出せるのか、空を飛べるのか。考えると切りがないだろう。


様々な期待に胸を躍らせつつ、俺は意識を手放した。






『ふぅ、やっと送り出せたわね。結構やばそうな奴だったけど』


 黒一色の空間に声が響き渡る。そこには誰も居る筈が無く、神様の独り言であろう。

 一仕事終えた、と軽く息を吐きだす。


『とりあえず神崎周吾は完了だとして・・・・問題はこの娘よね』


 何かを見ているのであろうか、また仕事が増えたと先程とは打って変わり深い溜息を吐き、何かを漁っているような音がする。


 目当ての物を見つけたようで、有ったという声が響く。


 それ以降、この黒い空間に声がすることは無く、今までと同じように静寂に支配される。


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