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シスコン転生  作者: 雨天
プロローグ
1/6

シスコンは死にました。

 いろんな小説やラノベを読んで触発されました(笑)

 気ままに更新していくのでよろしくお願いします。

 ご意見やご要望がありましたら教えてもらえると幸いです!

 漢字の間違えが多いかもしれないので、時間を見つけて修正していきます。

 現在の時刻は午後六時過ぎ。学校でやることを終えた俺は家路についていた。

 見慣れた景色も、聞いている音楽を変えるだけで少し違って見える。丁度曲が変わり先程まで聞いていたものよりもテンポが速くなった。吊られて歩くスピードも速くなってしまう。


 何気なく深めに吐いた息が白く染まり、本格的に冬が始まったなと思いながらいつの間にか着いていた家の玄関を開ける。


「只今」

「お帰りー!丁度ご飯出来たよ!」


 冷えた手先がじんわりと温かくなっていくのを感じながら声の方に視線をやる。

 リビングの方から玄関側に顔を出す千沙。一つ下の妹である。中学生ということもあり、まだ幼げな顔つきで可愛らしくもあるが、最近大人っぽい一面も見せるようになり、ふとした時にドキリとさせられることが多くなった。


 今行くよと返し、巻いていたマフラーを外しリビングに向かう。


 一連のやり取りで勘のいい人は気づくと思うが、うちに親は居ない。俺達二人が小学生の頃に不慮の事故で他界してしまった。最近までは母親側の祖父と祖母の家にお世話になっていたが、俺の高校進学を機に二人暮らしをすることになったのだ。


「今日はグラタンか、俺の好きなものを分かってるじゃないか」

「もーっ、一緒に暮らしてて分からないわけないでしょ!それに今日は誰かさんの誕生日ですからねー」


 自然と笑みが零れてしまう。気の利く妹だ。言われるまで自分ですら忘れていた。以前、今日の日付の日はバイトも休みにして欲しいと言われていたがこういうことだったのか。可愛いことをしてくれるものだ。


「ありがとう。お前には俺の御嫁にでもなってもらいたいな。そうしたらいつも美味しいご飯が食べられる」

「も、もぉ~、冗談はやめてよねー!お兄ちゃんの御嫁さんなんか、ぜぜぜぜ絶対嫌なんだからねっ!!」

「はははっ、どもり過ぎだ馬鹿。分かってるよ」


 結構本音だが、いつも同じような事を言っては同じ返しを貰っている。鉄板ネタのようなものだ。

 顔を赤くした千沙はぼそぼそと更に続けていたが、声が小さくて拾えなかった。


 出来立てのグラタンを取り分け皿に盛り、頂きますを合図に手を付ける。


「今日のグラタンは特別仕様なのです!チーズ二割ましよ!」

「見ただけで何となく分かるよ。取り分けた時にめっちゃ伸びたしな」

「もぉ~、もう少しテンション上げてよねぇ~」


 いつものように他愛のない会話をしつつ食を進め、食べ終わった食器などを片していると、一本の電話が入った。学校の先生からだ。


「もしもし、神崎ですけど」

『おー、お疲れ。夜遅くに悪いな、さっきのやつがまだ終わらなくてな。このままだと五日後の文化祭に間に合いそうもないんだ。すまんが今から来れるか?』


 ちらっと時計に目をやると七時二分を指していた。時間的には問題はない。ササッと終わらせてしまえば九時には帰って来られるだろう。


「構いませんよ。今から向かいますね」

『悪いな、気を付けて向かって来いよ』


 軽く返事を返し切る。洗い物をしている千沙にカウンター越しで出かけることを伝える。


「えー、まぁ仕方ないけどさぁ・・・・早く帰ってきてよ?」

「了解した。帰ってきたら一緒に風呂にでも入るか」


軽い冗談で言ったものの、千沙はカーっと赤くなり固まってしまった。少し刺激が強すぎたかと反省し謝ろうとすると


「へっ変態ぃぃいいいっ!!早く学校いってこいっ!!」

「わわっ!危ないだろっ、お皿投げるなって」

「お兄ちゃんが悪いんだからね!千沙は悪くないもんっ」


 洗っていたお皿を投げてきたので咄嗟にキャッチし、少し咎めるように睨む。それに反抗するように頬をぷーっと膨らませて子供のようなことを言い出した。まぁ悪いのは俺なのでごめんごめんと言い軽い支度を済ませる。


「じゃあ行ってくるから、大人しくしていろよ」

「言われなくてもわかってますぅ~。いってらっしゃーい」


 ガチャンと玄関が閉まり、暗い夜道を歩いていく。この時期の夜は日が沈むのが早い。家の周りには街灯があるものの、それ以外の光は少し行かなければ見つけられない。少し辺鄙なところに家を借りたことを引っ越してすぐに後悔したが、2LDKの平屋で新築なのに家賃四万二千円は破格だと思う。これが訳あり物件だともっと安いような気もするのでそういう心配はしていない。


 いつものように音楽を聴きながら、程よく温まったカイロをパーカーのポケットの中で揉み解す。流石に夜になると寒さで震えてくる。

 学校に着いたらコーヒーでも貰おうかな等と考えを巡らせていると、ふと違和感を覚えた。

 そろそろ他の住宅の明かりが見えてもいい頃なのだが、見えてこない。

街灯が一定の間隔を開けて規則正しく並んだ一本道。左右はどこまで続くのか解らない芝生、前はずっと先が真っ暗で何も見えないが、恐らく街灯が続いているのだろう。


 おかしい。俺の家の近く、学校の近くにはこんな場所はない。というか現在の日本にこんなに芝しか生えていない場所があるのだろうか、俺は見たことも聞いたこともない。

 なぜ今の今まで気が付かなかった、と頭を抱えたくなったが、無理やり深呼吸で落ち着かせ先生に電話する事にした。


「なっ!!け、圏外・・・・」


 スマホの画面右上に電波のマークは無い。代わりにあまり見ることのない圏外という表示。やはり何かがおかしい。

 変に興奮してきた頭を冷やすために再度周りを見渡す。

 左右前方は先程と同じ。しかし後ろを振り向いて声が出なくなった。


「カチカチカチカチ」

「あ、あ、あ・・・・・・ああああああああ!!!」


 目と目が合う。真っ赤に染まった複数の瞳、一本一本が何か硬い物質でできて居るのではないかと思わせるような太めの毛、そしてカチカチと音を鳴らす巨大な顎、複数の足。

 それの見た目は蜘蛛に酷似しているが、俺の知っている蜘蛛とは似ても似つかなかった。ここまで大きな個体を見たことがあるだろうか、軽自動車は軽く越えている。吐く息は真紫に染まり、真っ赤で大きな瞳たちをギョロつかせている。


「■■■■■■■■■■!!!!」

「うわああああ!!!」


 叫び声を上げて前方に走り出す。握っていたカイロは勢い余って後ろに飛んで行った。それが当たって怒ったのか、それとも俺の叫び声の煩さに怒ったのか定かではないが、聞くだけで耳が壊れそうな悍ましい叫びを挙げて追いかけてくる。


「はっはっはっ、く、くるなぁあああ!!!」

「■■■■ッ!!■■■■■■■■!!!」


 真後ろに迫ってきているであろう化け物にスマホを投げつける。しかし全く意味を成すことなく何処かへ消えていく。化け物が何か言葉らしきものを口にしているが理解できない。


 余りの恐怖に十六なのにも関わらず涙が溢れてくる。どれだけ走っても光景は変わらず、どれくらい進んだのかも分からない。しかし、化け物の叫び声がどんどん近づいてきている。

 こんなにも死を感じるのは生まれて初めてである、そもそも普通に生きていれば死の恐怖を味わうことなど滅多に無いはずである。何故なのか。普通に、極々普通に生きていたはずだ。千沙と二人でゆるりと、何の変哲もない日常を送っていたはずなのだ。何処で間違えた。


「ああああああああああ!!!俺が何したんだよ!!何でだよ!!どうなってんだよ!!」


 誰も返事をくれないのは分かっていた、だが叫ばずにはいられない。こんな理不尽なことがあってたまるか。こんな――――――





『つい先日、○○町△△の林の中で変死体が見つかった事件についてですが、犯人の手掛かりは未だ見つかっておらず――――』


 私は暗い部屋の中で毛布に蹲り、ぼぅとする。既に涙は枯れ泣くこともできない。唯一点けていたテレビで、また同じニュースが流れている。そこに映る見慣れた大好きな人の写真を目にし吐き気を催す。


 一週間前に最愛の兄が死んだ。死因は不明、周辺には木々しかなく、一応殺人の方向で捜査しているようだが未だに犯人の“は”の字も見つからないようである。


 学校に行くと言って出て行った兄。落ち合う予定であった先生も、いくら待っても来ないことに不信感を抱き、再度電話を掛けたが圏外を知らせるアナウンスが鳴ったそうだ。

 この近くに圏外になるような場所は無い。その時点でおかしいのに何故先生は何もしなかったのか。


イライラが募り手を握りしめる。


「あ・・・・」


余りに強く握りすぎたせいか手のひらから血が出ている。だが痛いとも思わない。兄の身に起きたことに比べればどうということもない。


 葬式で再開した兄の顔は酷いものだった。恐怖で塗り固めたような、余りの激痛に今にも叫びだしそうな、そんな表情であった。綺麗に残っているのは顔のみで、身体はミンチのようにされてしまっていたらしく、布が被せてあった。

 思い出すだけで眩暈がし、吐きそうになる。


「おにぃ・・・・ちゃん・・・・」


 呼んでも戻ってこないことは理解しているが、僅かに開いた口から自然と零れた。

 ふと横に目線を反らすと、つい一週間前まで兄と一緒に座っていた食卓が映った。


「ああ・・・・あ・・ああ・・・・」


 枯れ切った筈の瞳から涙が溢れてくる。いくら拭おうが涙が切れることはない、いくら泣こうが兄が戻ることはない。


 理解していながらも、私には泣くこと以外に出来ることはなかった。


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